曝涼・曝書の歴史

歴史的な文化財保存システムのうち、曝涼・曝書についての連続ツイート。
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ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

山形)黒川能の衣装など展示 虫干し兼ねて - 朝日新聞デジタル t.asahi.com/fdix

2014-07-25 23:17:29
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

虫干しとは、文化財や書物を年に一度程度、日や風に当て湿気を飛ばし、虫やカビを払うことよ。その時に目視で対象物の状態を確認して、虫やカビの被害にあってないか確認点検をするの。 曝涼(ばくりょう)・曝書(ばくしょ)・虫払い、なんて言ったりもするわ。 曝す(さらす)、という漢字です。

2014-07-25 23:25:39
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

虫干しは、正倉院の時代から20世紀前半まで、寺社や宝物管理の場所だけでなく、一般の家庭でも広く行われていました。

2014-07-25 23:28:28
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

日本の文化財保存システムの核は「扱い・収納・曝涼・修理」のサイクルにあると言い切れるでしょう。 事実、現在に継承されている文化財の中には、紙や布など、非常にもろく痛みやすい素材のものも多いわ。木や漆器などもひび割れたりせず残されているものもあるね。これ世界的に見てもスゴイことよ。

2014-07-25 23:32:30
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

さらに、収納方法にも長く状態維持しながら保存をしていくコツがあるわ。「文化財を何重もの箱におさめていくこと」よ。まず桐箱に入れて、蔵などに収める。これだけでも、外気の温度や湿度の変化から文化財を守ることができるます。実際、桐箱の中の温室度変化は、外気よりだいぶ緩やかになってるわ。

2014-07-25 23:40:06
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

ところで、曝涼・曝書で行う作業や目的はほとんど同じだけど、対象物によって言い方を変えているようね。 曝涼は、仏像・経典のほか家具や調度品を扱う時、曝書は書籍を扱う時に言うようです。

2014-07-25 23:45:24
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

例えば経典が巻物や折れ本だった場合、それも書物のうちになるのかなーと思うので、個人的にはあまり単語にこだわるつもりはないんだけども…。

2014-07-25 23:47:54
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

巻物(巻子・かんす)は読み物(書籍)として扱われるのが妥当だと思うよ。製本技術が発明される前までは全て巻物だっただろうし。経師(きょうじ・製本職人)が扱うのもだったし。

2014-07-25 23:48:53
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

古代の中国でも曝涼は行われていたようよ。最も古い記録は『後漢書』逸民列伝といわれているわ。宋代には年中行事として7月7日に行われるようになります。 日本でも正倉院の時代から曝涼が行われています。『正倉院文書』や『延喜式』に記録が残っているよ。

2014-07-25 23:53:41
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

鎌倉以降になると、貴族の日記などに記述が残っているようです。例えば藤原兼実の『玉葉』や、藤原定家の『明月記』、近衛政家の『後法興院記』など。

2014-07-26 00:01:03
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

江戸に近づくにつれ、7月7日に曝涼を行う習慣が崩れていきます。宮内庁書陵部図書寮文庫『壬生家文書』(12c ~17c)の記録によると、旧暦6月または8月に集中してれ行われていたようです。

2014-07-26 00:15:26
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

旧暦6月は、現代の6月下旬から8月上旬に当たります。梅雨明けぐらいかな? 旧暦8月は、現代の8月下旬から10月上旬に当たります。寒くなる前? ざっくり言っちゃうと、気候のいい時期に行っていた、という感じかな。

2014-07-26 00:19:28
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

明治正~昭和初期まで、曝涼は継承されます。曝涼が忘れられてしまった決定的な原因として言い切れるものはないけれど、ば昭和40~50年代から図書館の書籍管理のためにバーコードが導入されたり、文化財が博物館に集められてまとめて管理されるようになった事が挙げられるのではないでしょうか。

2014-07-26 01:40:20
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

また、平成になると図書館・博物館の設備も充実し、環境管理がシステム任せ(空調システムやバーコード管理システムなど)になります。すると、曝涼の文化はおろか、目視での状態確認の機会も激減します。 文化財IPMが注目されたをきっかけに、このような曝涼文化の再認識が行われました。

2014-07-26 01:46:30
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

でも、寺社仏閣の中には、高度経済成長期を経ても、曝涼の習慣を忘れなかったところもあるよ。それは、虫干しの時にご本尊の「御開帳」などを行う習慣があったため、虫干し+公開のシステムが、そのまま維持された例と言えるでしょうね。

2014-07-26 01:49:26
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

また、一度途絶えた虫干しの習慣を復興した例もあります。神護寺のように、S29に一切経蔵虫払定文書が発見されたのが契機となって、それ以来毎年5月の虫干しを行うようになったそうです。

2014-07-26 01:52:08
ミュゼたんのサブ垢 @museology_tan2

そういうことで、ゲリラ連ツイ「曝涼・曝書の歴史」でした。参考文献は、本田光子・森田稔『博物館資料保存論』。これ私のバイブル本です。ネットで読める資料なら、本田光子「曝涼・曝書と文化財IPM」『文化財の虫菌害』No.62 bunchuken.or.jp/wp-bunchuken/w… 。

2014-07-26 02:01:16