中東紛争をめぐる鍵要因としてのパレスチナ人の帰還権とイスラエルの帰還法

【関連まとめ】 ・「「ユダヤ国家」に抗うユダヤ人 ― ボヤーリン兄弟におけるディアスポラ主義と反シオニズム」(http://togetter.com/li/697836
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よんほ @yonlee

これは本当に難しい問題で、憲法のないイスラエル国家にとって実質上憲法と化している帰還法は、当のユダヤ系移民からも不満が噴出している感じです。いわゆる「ユダヤ人」の定義とも合間って、元々複雑なユダヤ人アイデンティティにさらに齟齬を催している様相です。 @royterek

2014-07-27 01:33:21
直立演人 @royterek

イスラエル人による帰還法反対の理由は多岐にわたるが、理由の一つとして、イスラエルが世界中のユダヤ人の「避難所」となるべきだという初期シオニズムの考え方がもはや時代錯誤以外の何ものでもないという考えがある。この主張は反駁し難いが、世界のユダヤ人の安全が再び脅かされると元も子もない。

2014-07-27 01:37:38
直立演人 @royterek

「スキナーは、ディアスポラの民がこぞって「帰還」する機会があっても、実際に帰還することがほとんどないという事実に触れ、…これを「大いなる弁証法的矛盾」とみなしているが、それはもちろん、領土上の民族国家をアプリオリな規範と考える場合にしか当てはまらない」(『ディアスポラの力』)

2014-07-27 01:44:06
直立演人 @royterek

中東紛争の解決策として「二国家解決」ということが馬鹿の一つ覚えのように言われるが、イスラエル側が数十万人もの西岸の原理主義的ユダヤ人を強制的に排除してグリーンラインまで撤退するとでも宣言しない限り、実現性に乏しいと思う。そもそも入植者らの大規模な排除の方が実現性に乏しいのだが…。

2014-07-27 01:54:11
直立演人 @royterek

いずれにしても、仮に二国家解決が実現したとしても、こんどは国家同士の存亡をかけた死闘につながるだけだろう。

2014-07-27 01:55:46
直立演人 @royterek

二国家にせよ一国家にせよ、双方の信頼醸成の観点から真っ先に着手して然るべきは、パレスチナ人の帰還権の容認とともに、イスラエルの帰還法の廃止であろう。世界中のパレスチナ人がイスラエルに押し寄せる可能性は低いし、旧ソ連系の移民の波以来、イスラエルに押し寄せるユダヤ人はもはや極僅かだ。

2014-07-27 02:05:54
直立演人 @royterek

ディアスポラの民がその歴史的郷土に「帰還」する機会があっても実際に帰還することがほとんどないというのは事実である。にもかかわらずユダヤ人の多くがパレスチナに移住したのは、選択肢が限られていたからだ。アメリカ等が門戸を閉ざしていなかったら、多くはパレスチナに渡らなかったはずである。

2014-07-27 02:23:55
直立演人 @royterek

1970年代に米ソ間の交渉の結果、それまで出国を求めて闘っていたソ連のユダヤ人の多くが出国を許可された。その際、幸運にも出国を許されたユダヤ人は、中継地のウィーンでイスラエル側が用意したチャーター便に乗り換えるはずだったが、大半はそれに乗らずに、アメリカ行きの飛行機に乗り換えた。

2014-07-27 02:27:01
直立演人 @royterek

それに対して、1989年以降、約20年間に150万人近い「ユダヤ人系」市民とその家族が出国したが、そのうち100万人近くがイスラエルに移住した。彼らは1970年代の出国者よりもイデオロギー的背景が希薄だったが、イスラエルを行き先に選んだのは、その方が移民し易かったからに過ぎない。

2014-07-27 02:34:32
直立演人 @royterek

しかも、その約100万人のイスラエル移住者のうちの3~4割ほどが、正統派ユダヤ教が「ユダヤ人」とはみなさない人たちで占められていた。すなわち、ナチのニュルンベルク法を逆手にとったと言われる帰還法に基づき、祖父母のうち一人以上がユダヤ人だが、母親がユダヤ人でないような人たちである。

2014-07-27 02:40:31
直立演人 @royterek

当然、その中には、ユダヤ人ではなくキリスト教徒などの配偶者も少なからず含まれている。イスラエルの統計に記載された宗教欄では、ユダヤ教正統派によるユダヤ人の要件を満たしていないが、さりとてキリスト教徒とも自己同定してない数十万の人たちは、たしか「その他」などとされていたように思う。

2014-07-27 02:46:20
直立演人 @royterek

このように正統派ユダヤ教とともにイスラエル政府によっても公式にユダヤ教徒ともキリスト教徒ともみなされない「第三の」カテゴリーに振り分けられた人たちは、本人が希望しても、イスラエルでは公式に結婚もできないし、ユダヤ人墓地にも埋葬されない。ユダヤ人の冠婚葬祭は正統派ラビの管轄だから。

2014-07-27 02:50:13
直立演人 @royterek

そこでどうするかというと、そうしたカップルの多くは、世俗的な「市民婚」を行政が認めているプラハやキプロス島などへ渡航し、そこで結婚したという証明書を発行してもらい、イスラエルに帰国した後内務省に届け出をする。そこで初めて「既婚者」として登録されることになる。渡航費はもちろん自腹。

2014-07-27 02:54:07
直立演人 @royterek

本人は100%自分をユダヤ人と考えているが正統派ラビには100%異教徒とみなされている人は、当然、ユダヤ人墓地に自分が埋葬されることを希望するはずだが、それは受け入れられない。10年ほど前に聞いた話では、妥協策として、ユダヤ人墓地と接する特別な区画に埋葬されることになったという。

2014-07-27 02:58:04
直立演人 @royterek

帰還法の不条理として、まるで冗談のような現実に起こり得る話を聞いた。たとえば、ラビノーヴィチさんという父親がユダヤ人で母親がロシア人の人がいて、ロシアでは典型的なユダヤ人の姓故に差別も受け、完全にユダヤ人として育った。にもかかわらず、移住先のイスラエルでは異教徒として差別される。

2014-07-27 03:07:21
直立演人 @royterek

逆に、たとえば、イワノフさんというロシア人の父親とユダヤ人の母親をもち、大人になるまで完全なロシア人として育った人が、ある時、母親がユダヤ人であることを知らされ、帰還法に従ってイスラエルに移住できることを知る。そこで興味本位に移住してみたら、完全なユダヤ教徒として迎え入れられる。

2014-07-27 03:10:54
直立演人 @royterek

イスラエルには、こうしたユダヤ人意識を強くもちながらも異教徒として社会的に疎外されている人が特に旧ソ連出身者に少なくない。そこで、イスラエルの政治家や政府系ラビは、改宗プログラムを充実させるなど試行錯誤を重ねたが、正統派への改宗のハードルが高いのでさしたる成果を上げられていない。

2014-07-27 03:19:37
直立演人 @royterek

数年前には、イスラエルのユダヤ人社会から疎外された旧ソ連出身者とおぼしき人たちの中から、ネオナチ紛いの思想に染まって、「ユダヤ人に死を!」といった反ユダヤ的な落書きを書くような者まで現れたことが大きな社会問題になった。その後はあまり聞かないが、その辺り今はどうなってるのだろうか。

2014-07-27 03:24:53
よんほ @yonlee

イスラエルにいたユダヤ系ロシア移民の若者で結成されたPatrol 36というネオナチ団体ですね。信じられない話ですが、グループは全員ユダヤ系でそのうちの一人は両親ともユダヤ人で宗教的にも完全なユダヤ人だったとか。 “@royterek:

2014-07-27 03:35:55
よんほ @yonlee

Patrol 36のメンバーは現地のシナゴーグを襲撃して、スワスティカの落書きをしたり、アジアやアフリカ系の移民を襲ったりしたそうです。その後全員逮捕されて、投獄されています。リーダー格の男は七年の刑で服役中です。 @royterek

2014-07-27 03:51:52
よんほ @yonlee

しかも、イスラエルはホロコースト後の欧米と違い、ユダヤ差別扇動に対する法律も想定されていないことがわかり、クネセット(イスラエル国会)の保守政治家から帰還法を廃止しろという意見が飛び出す結果に。その団体の中にはホロコースト生存者の孫のメンバーもいたそうです。 @royterek

2014-07-27 03:58:06