川内再稼働反対パブコメstudy2007案最終版

科学8月号を参考に加筆しました。 全国のみなさん何とぞよろしくお願い致します。部分的でも全然構いませんので、ご活用頂けますと幸いです。
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(1)から(3)が新基準のダメさ加減&大飯判決、(4)テロ&非常時の体制、(5)福島第一の事故検証、(6)地震、(7)津波、(8)火山、(9)コアキャッチャー&格納容器&燃料移設、(10)住民防護&憲法違反、という流れ

九州電力株式会社川内原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(1号及び2号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書(原子炉等規制法第43条の3の6第1項第2号(技術的能力に係るもの)、第3号及び第4号関連) 平成27年7月16日原子力規制委員会 に関する技術的意見書

意見
(1)「1ページ 1-1.本審査書の位置づけ」について
原子炉等規制法第43条の3の6第1項第2号では「その者(申請者)に発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があること」との要件を求めている。東日本大震災に伴う東京電力の福島第一原発事故対応でも、海水注入の遅れや汚染水貯蔵用ボルト式タンクからの漏洩など防災対策や事故後の対応において経理的基礎は技術的能力に重大な影響を及ぼすことが明らかになっている。その教訓を活かすため技術的能力と経理的基礎は一体として評価することが必須であり、経理的基礎の評価を含まない本審査書案は適合性審査として全く意味をなさない。本審査書案で評価した全項目において経理的基礎の裏付けを含め再度審査すること。

(2)「1ページ 1-2.判断基準及び審査方針」について
本審査書案では「技術的能力指針」2.要件の指針5から指針10で「方針が適切に示されていること」を「満たすべき基本的な要件」として規定している((旧)原子力安全委員会決定、平成16年5月27日)。また「重大事故等防止技術能力基準」の全ての要求事項についても「方針であること」または「方針が適切に示されていること」などと置き換えが付記されている(原子力規制委員会決定、平成25年6月19日)。しかしながら原子炉等規制法第43条の3の6第1項第2号及び第3号では「必要な技術的能力(第2号にあっては経理的基礎を含む)」が求められており、申請者が「方針」を有すること、あるいは「方針を適切に示す」ことだけでは発電用原子炉の運転及び事故対策において実効性は不十分である。技術的能力の実態としての必要性は東日本大震災に伴う東京電力の福島第一原発事故対応の例からも明白である。判断基準および審査指針等から、これら法的基準の実質的な引き下げにつながる(旧)原子力安全委員会及び原子力規制委員会による置き換え等を全て除いたうえで全項目について再度審査すること。

(3)上記(1)及び(2)における「経理的基礎」に関する審査の切り離しと「方針であること」あるいは「方針が適切に示されていること」などへの置き換え又は付記等は、原子炉等規制法第43条の3の6第1項第2号及び第3号で要求されている申請者の技術的能力(第2号にあっては経理的基礎を含む)に係る要件を著しく軽減するものであり、法の趣旨と効力を大きく損なうものである。更に2014年5月21日福井地裁における「関西電力大飯発電所3,4号機原子炉の運転差止請求訴訟」の判決文にてらせば、原子炉等規制法の枠を超え人格権を脅かす憲法違反の疑いさえある。特に「技術的能力指針」については平成16年5月27日の(旧)原子力安全委員会決定をそのまま流用したものであり、2011年東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を一切含んでいない。このような「技術的能力指針」および「重大事故等防止技術能力基準」に基づいた本審査書案は技術的な裏付けと根拠がないだけでなく、適法性にも大きな疑問があり抜本的な再評価が必須である。さらに、このような判断基準と審査方針を放置し本審査書案をまとめた原子力規制委員会田中俊一委員長は、規制委員長としての能力と責任において著しく不適格と言わざるを得ない。田中俊一委員長の解任を求める。

((4)以降の意見については本意見書(1)から(3)項までの議論に鑑み、申請者の「方針」や「計画」などをもって適合性を判断するのではなく、東日本大震災などの知見に基づいた安全側の想定に対する申請者の実体的な技術的能力の有無により適合性を判断すること)

(4)「8ページ 2-2.技術者の確保、及び413ページから417ページ 4-5.大規模な自然災害又は故意による大型航空機の衝突その他テロリズムへの対応(重大事故等防止技術的能力基準2.1関係)」について
本審査書の適合性評価は不十分である。津波等の大規模自然災害やテロなどによる県道43号線及び川内河口大橋の封鎖、さらには川内原子力発電所付近護岸への船舶による輸送が不可能になった場合にテロ等の障害を排除する具体的な手段、体制、及び運転復旧のため確保できる技術者の人員や設備について厳密に評価すること。その際、必要な人員、設備が確保できるまでの所要時間等についても明らかにすること。

(5)「9ページ 2-3.経験及び11ページ 2-5.技術者に対する教育・訓練」について
本審査書の適合性評価は不十分である。発電用原子炉のアクシデントマネジメントについては東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故の収束・廃炉までの経過・転機を精査することなく「経験を有する」という評価は不可能である。廃炉完了を待ち、どのような経験・技術が必要かなどの詳細が明らかになった後に適合性審査を再開すること。

(6)「13ページから30ページ 3-1.地震による損傷の防止(第4条関係)」について
本審査書の適合性評価は不十分である。地震動についてはメカニズムや震源について「想定はできても発生時期と規模を予知できない」というのが科学的な立場であるし、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故の最大の教訓である。また発電用原子炉に重大な損傷が発生した場合、極めて広範な地域に対し復元不可能な被害を与えることも当該事故で明白になったところである。このような観点から想定震源域やモデル解析による評価は副次的な意味にとどめ、これまでに観測された最大加速度及び振動パターンを想定すべきである。たとえば2011年の東日本大震災で観測された振動パターンと継続時間を2008年岩手・宮城内陸地震の最大加速度(地表において4000ガル)程度、並びに2007年新潟県中越沖地震の際柏崎刈羽原発地下における推定加速度(岩盤において1700ガル)に拡張するなどした過酷な地振動モデルを数パターン作成し適合性を再評価すること。

(7)「32ページから53ページ 3-3.津波による損傷の防止(第5条関係)」について
本審査書の適合性評価は不十分である。本意見書(6)と同様の観点から高さ40m程度の過酷な津波モデルを想定し、第二波、第三波などの時間間隔を変えた数パターンの被害想定を考慮したうえで適合性を評価すること。

(8)「61ページから69ページ 3-4.2.2.火山の影響に対する設計方針」について
本審査書の適合性評価は不十分である。カルデラ火山の噴火時期、規模の予知はできない。モニタリング等の実効性も確立されておらず本意見書(1)から(3)の議論を踏まえれば、火砕物密度流の直接的影響に対する申請者の技術的能力としてモニタリング等の方針や計画を提出することで適合性があると判断するのは原子力規制委員会の責務に照らし著しく無責任である。「火山ガイド」6.2に基づき、できるだけ早期に「立地は不適」との判断を下すこと。

(9)「113ページから412ページ 4.重大事故等対処施設及び重大事故対処に係る技術的能力」について
本審査書の適合性評価は不十分である。格納容器の二重構造やコアキャッチャーが無いことなど重大事故等に対し構造的に致命的な脆弱性がある。更に使用済み燃料を数日程度以内に移動させることができる機構・設備がない。また火山等の影響も考慮すれば少なくとも100kmから200km以上遠方に移設先を確保しておく必要もある。原子炉等規制法第43条の3の6第1項第2号、第3号及び第4号に記載される最低限の技術的要件と東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故の知見に照らし、本審査書ならびに規制基準・指針は著しく不十分である。審査基準等及び審査体制等を抜本的に見直したうえで適合性を評価すること。  

(10)「1ページ 1-1.本審査書の位置付け」について
本審査書は近隣住民と地域社会の保護と補償に一切触れておらず適合性審査としての意義をなさない。
2014年5月21日の福井地裁における「関西電力大飯発電所3,4号機原子炉の運転差止請求訴訟」の判決文にてらせば、原子炉等規制法第43条の3の6第1項第2号、第3号及び第4号で求められる技術的能力(第2号にあっては経理的基礎を含む)に係る要件には「過酷事故の際の住民の防護」も含まれると解される。「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)報告書 2013」によれば、東京電力福島第一原発事故後に原発から60km程度離れた福島市、二本松市、および郡山市に避難した住民でさえも、避難先において1歳児甲状腺等価線量40mGyから50mGyの被ばくをしていたとの試算もされている(報告書表C12など)。重大事故発生時の経過、風向きや地形等の条件による不確かさを鑑み、最低でも近隣100km圏内の住民の避難・防護体制の整備、及び住民と地域産業に対する補償を想定した技術的能力と経理的基礎の有無について評価を行うこと。

以上

ちなみに岩波にも送りました。(パブコメなんで技術的な意見以外だって問題ないはずです。)

岩波『科学』 @IwanamiKagaku

川内原発の審査書案に対するパブコメ募集:nsr.go.jp/public_comment… 皆様の「パブコメ」を『科学』編集部kagaku@iwanami.co.jpにお送りください。随時公開していきたいと思います。審査書案への科学的・技術的意見に留まらず、再稼働の論点としてどうぞ。

2014-07-18 17:38:34
seki_yo @seki_yo

満田さん「パブコメで 専門家の 意見を 求めるのであれば、直接 火山研究者に 聞けばいいじゃないですか」 ( #iwakamiyasumi5 live at ustre.am/usAQ)

2014-07-29 16:30:30

原子力規制を監視する市民の会さんパブコメ例

・19-20ページ 3-1 地震による損傷の防止 3.震源を特定せず策定する地震動 4.基準地震動の策定について

審査書案は不十分である。

策定された基準地震動620ガルは過小評価であり、約2倍の規模にすることを求める。
この根拠はさまざまな地震専門家の見解にもとづく。

  1. 九州電力は強地震動予測手法(レシピ)よりも地震モーメントを約2倍とした評価を行い、基準地震動を設定している。しかしレシピは、世界的な地震の平均像を求める手法であり、そこで用いられている経験式(入倉・三宅式)では日本の特性が考慮されていない。日本の地震の特性に基づく経験式(武村式)を用いた場合、レシピの 4 倍程度の地震規模になる。すなわち、川内原発の基準地震動は、少なくとも現状の約2倍の規模のものを想定しなければならない。
    2.震源を特定せず策定する地震動の最大加速度について、2004年北海道留萌支庁南部地震をベースに620ガルとしている。これは、中越沖地震で当時の基準値を大きく超えた柏崎刈羽原発の基準地震動2300ガル(1-4号機)、1209ガル(5-7 号機)に比べるとあまりに小さい。
    3.震源を特定せず策定する地震動」の最大加速度について、2004年北海道留萌支庁南部地震をベースに620ガルとしていることを審査で妥当としているが、長沢啓行氏(大阪府大名誉教授)によると、基準地震動の審査ガイドで参照を求めている原子力安全基盤機構の報告書ではM6.5で1340 ガルになることを示している(*)。従って、620ガルは過小評価であり、1340 ガルとすることを求める。
    (注*)長沢啓行:「1000 ガル超の『震源を特定せず策定する地震動』がなぜ採用されないのか」若狭ネット第150号、2014 年7月9日
    3.震源を特定せず策定する地震動」の最大加速度について、石橋克彦氏(神戸大学名誉教授)は、「既往最大の1700ガルにすべきである。私たちの地震現象の理解がまだ不十分であることを謙虚に受け止め、原発に求められる最大限の安全性を追求すべきである。」ことを主張している。
    (「科学」2014年8月号)

・44-50ページ 3-3.2 耐津波設計方針 3.津波防護の方針 (3)1漏水対策 b.浸水対策 4.施設または設備の設計方針及び条件
(2)浸水防止設備の設計について

審査書案は不十分である。

水密扉を規定している。津波来襲時の水密扉の閉止は遠隔自動で操作できるものでなければならない。津波来襲時には人が近づけないからである。

・55ページ 3-4.2 外部事象 人為事象の抽出について

審査書案は不十分である。

外部からのシステムへの侵入の事象が欠落している。原子力関連制御系システムへの侵入例としては、2003年、米国オハイオ州Davis Besse原発におけるウィルス感染による通信設備停止、2010年、 イランのブシェール原発へのイスラエルによるものと思われるサイバー攻撃などあり。情報系システムへの侵入と異なり、制御系への侵入は深刻であり、脆弱性の検討と防護への対処が必要。

・63-64ページ 3.火山活動のモニタリングについて

審査書案は不十分である。

火山活動をモニタリングすることで良しとしている。しかし、火山噴火に至る前に、使用済み核燃料を避難させなければならない。そのためには、敷地内に5年程度の保管期間が必要であり、その後1年以上の搬出期間が必要である。したがって、現状のモニタリング計画のみでは、安全な対処ができない。

79ページ 3-4.2.5 その他人為事象に対する 設計方針 3.飛来物(航空機落下等)

審査書案は不十分である。

原子炉建屋に直接航空機が墜落した場合について、確率が低いから対策不要としているが、可能性のあることは設計上考慮すべきである。ドイツでは、それが求められた。

「敷地内落下による火災発生」のみを検討し、重要設備(格納容器等)への航空機落下確率は10のマイナス7乗回/炉・年以下であり考慮外としている。意図的な落下の確率計算は出来ず、10のマイナス7乗回/炉・年の数値に根拠はない。

安全施設の安全機能が損なわれない設計に当たっては、テロ及び戦争による飛来物を考慮すべきである。 その理由は以下のとおりである。

規制委員会は飛来物に対する設計方針に関して、「飛来物(航空機落下等)に対しては、最新の航路、飛行実績等の情報を踏まえて航空機落下確率を評価し、防護設計の要否判断の基準である 10のマイナス7乗回/ 炉・年を超えていないことから、設計上考慮する必要はないとしていることは合理性があること」を確認したと記載している。この判断基準値は「実用発電用原子炉施設への航空機落下確率の評価につ いて(平成 14・07・29 原院第 4 号)」に基づくものである。しかし、この評価基準はもはや今後の社会情勢にそぐわない、不適切なものである。なぜならば、今後はテロによる航空機突入、戦争による 爆撃等を受けるリスクが平常時の偶発的な航空機落下よりもはるかに大きなものになると考えられるからである。これは安倍内閣が集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことによる。集団的自衛権 を行使する事態が生じた場合、日本が武力攻撃する対象国から反撃を受けることになる。その場合、原子力発電所が格好の攻撃対象施設になることは想像に難くない。従って、飛来物に対する防護については、テロ、戦争等による意図的な航空機突入、爆撃等に耐える設計を考慮する必要がある。このテロ、戦争等による飛来物の到来確率は、確率論的に評価できるものではない。従って、偶発的な航空機落下確率10のマイナス7乗回/炉・年を飛来物の防護設計の要否判断基準とする規制委員会の審査結果は妥当なものではない。

・81ページ 3-5 人の不法な侵入等の防止について

審査書案は不十分である。

建物の設計上「対策を講じるとしていることを確認した」といっているが、人の不法な侵入はハードウェアのみの対策では防止できない。どのような人的対策を講じるのかを確認すべきである。

意図的な攻撃や悪意をもった侵入者への対策が不足している。集団的自衛権を認めるなど周辺国との緊張を高める現政策下では、原発の存在は安全保障上、最も脆弱なポイントと言わざるを得ない。尚、侵入者に対する防御目的としての武装組織の常駐は民主主義体制と相容れない。

・84-85ページ (2)安全機能を有する機器等に おける火災の発生防止について

審査書案は不十分である。

難燃ケーブルに取り替えることができないから、「専用電線管に収納し、電線管外部からの酸素供給防止のため、両端を難燃性の耐熱シール材で処置する」としている。シール材の劣化や施工不良による漏れなどが発生する可能性が高いから、難燃性ケーブルに交換して、本質的に燃えないようにしなければならない。

・103ページ 3-14 安全保護回路について

審査書案は不十分である。

2.において「送信のみに制限する」とあるが、新規稼働あるいは変更といったことを考えれば、何らかの形での受信(あるいは入力)作業が必要となる。その場合に、5.に記載されているようなセキュリティ管理では外部からの悪意ある侵入を防止できない。情報システムの運用は多層の下請け構造が常態であるが、少なくとも全担当者を社員化する、システムの開発・保守も全て社員が行い、また、電子機器、記憶媒体を外部から持ち込むことを全面禁止するといった、非現実的な措置が必要になる。
3.において「固有のプログラム及び言語を使用し・・・」とあるが、長期にわたる維持管理(シス テムメンテナンス)をどのように考えているのか。川内原発だけに閉じたシステムや言語体系を維持管理していくことは、デジタル計算機を供給する側から言えば多大なリスクを抱えることであり、それはまた九州電力も同様である。また、新たなシステムや言語体系によって新たに開発されたシステムや言語体系は当然のことながら、多くのバグを抱えており(初期不良)、そのための危険性も増大す る。不正アクセスの防止についてだけ苦し紛れで言い逃れた、全体整合性のない絵空事を示していると考えざるを得ない。

・110ページ 保安電源の信頼性について

審査書案は不十分である。

外部電源は、異なる系統(南九州変電所と新鹿児島線)から3系統うけているので、独立性があるとしている。しかし、現状の外部電源系統の耐震クラスは一般産業施設相当の C クラスなので、基準地震動が生じると、すべての外部電源が失われるので独立性があるとはいえない。外部電源系統の耐震クラスを高めるべきである。

・115~248ページ 4-1 重大事故等の拡大防止等 重大事故シーケンスへの炉心損 傷防止対策及び格納容器破損防止対策に必要な要員について

審査書案は不十分である。

ひとつひとつの重大事故シーケンスごとに必要な要員数を出して、重大事故等対策要員52名以下であるから足りている、という結論になっている。しかし、複数の原子炉で重大事故シーケンスが同時に発生する重畳があり得る。福島原発事故においては4機の原子炉の事故に対して、地震発生時には6000人超、3月14日の夜には720人がいて、十分な対策ができなかった。その教訓からすると、原子炉2機の当発電所では、単純比例でも360名は必要ではないか。

・115~126ページ 4-1.1 事故の想定について

審査書案は不十分である。

事故シーケンスグループの類型化などの選定手順、日本原子力学会の確率論的リスク評価(PRA)手順に従って実施したというその中身を明示すべきである。
表4-1について: 申請者の重要事故シーケンス等の選定において、AED,TED,AEW、AEI などp.6の略語表にはない意味不明の略語が使用されている。審査書案は、それのみで内容が第三者に理解できるようにすべきである。
表4-1について: すべての事故シーケンスは、本来、炉心損傷防止対策と格納容器破損防止対策の両方を実施すべきではないのか?このように、どちらかに分類するのはおかしいのではないか?

・122ページ IV-1.I 事故の想定 2.審査結果 (1)運転中原子炉において炉心損傷に至るおそれがある事故 (P.122、5~9 行目)について

審査書案は不十分である。

原子炉容器の炉心損傷をあきらめて、格納容器冷却に取り掛かるという対策は、新規制基準第三十七条第1項「重大事故に至るおそれがある事故が発生した場合において、炉心の著しい損傷を防止するために必要な措置を講じたものでなければならない。」に違反している。
規則の解釈第37条1-2には、「格納容器の機能に期待できるもの」と「・・・困難なもの」とに分類し、前者の場合に記されている「炉心の著しい損傷を防止するための十分な対策が計画されており、かつ、その対策が想定する範囲内で有効であることを確認する。」の「想定する範囲内で」の意味は何か?もってまわったあやしい記述である。

171~179ページ 4-1.2.2 格納容器破損防止対策 4-1.2.2.1 雰囲気圧力・温度による静的負荷(格納容器過圧)について

審査書案は不十分である。

規制委員会は、重大事故等対処施設の有効性評価にあたっては、「解析コード等の不確かさを考慮しても評価項目を満たしていることに変わりは無いかを審査する」と明記している(p.113)。
申請者が使用した解析コードMAAPの不確かさについては、審査結果には、「解析コード、解析条件の不確かさを考慮しても、評価項目(a),(b),(c)及び(g)を概ね満足しているという判断は変わらないことを確認した。」とだけの記載であり、この事故シーケンスについて格納容器圧力の計算結果の不確かさ幅がこれだけあり、それをこういう手段、手法で確認した、といった確認の中身の説明がまったくなされておらず、第三者に対しての説明責任を果たしていない。
MAAP による解析結果の妥当性及び不確かさを規制委員会として科学的、技術的、客観的に評価するためには、異なる解析モデルで同様の機能を持つ別の解析コード、具体的に指摘すると、規制庁が 整備、保有している MELCOR を使ってクロスチェック解析を実施すべきである。このクロスチェック解析をすることなく、申請者の解析結果を妥当と判断することは、審査の科学的・技術的厳正さを失っている。福島原発事故以前に原子力安全・保安院及び原子力安全委員会は設置(変更)許可審査においてクロスチェック解析を取り入れていた。従って、当時と比較して、今回の事故解析結果の妥当性の審査手法は手抜きであり、改悪されていると指摘せざるをえない。
なお、MELCORについては、(独)原子力安全基盤機構(本年3月に原子力規制庁に統合)が新規制 基準を反映した安全設計の妥当性を評価するために過酷事故に関するクロスチェック解析手法として整備してきた事実*があり、国費を投入して得たその成果を今般の新規制基準適合性審査に生かすべきである。(*原子力安全基盤機構「安全研究年報(平成 24 年度)」)
(なお、この意見は、MAAPを使ったすべての重大事故シーケンスの解析に共通することである。)

・179~185ページ 4-1.2.2.2 雰囲気圧力・温度による静的負荷(格納容器過温)について

審査書案は不十分である。

審査結果には、本現象に関する解析コードMAAPにおける不確かさの影響評価として、「格納容器圧力・温度を解析した場合、HDR実験解析等の検証結果より、圧力については1割程度高めに、温度については十数度高めに評価する傾向がある(後略)」との記述があるが、この検証データの取得に用いられた HDR(廃炉にされたドイツのPWR)は川内原発とは寸法形状を含めて構造的に異なる点が多く、また実験条件も小LOCAであり、川内原発の事故シーケンス(全動力電源喪失+補助給水機能喪失による炉心溶融、原子炉容器破損)とは異なるので、検証結果の実機への適用性自体に不確かさがある。 川内原発の事故シーケンスに対して、規制庁の保有する解析コード MELCORによりクロスチェック解析を行い、MAAPによる解析結果の妥当性の評価を厳正に行うことを求める。

・185~190ページ 4-1.2.2.3 高温溶融物放出/格納容器雰囲気直接加熱について

審査書案は不十分である。

審査結果には、本現象に関する解析コードMAAPの不確かさを定量的に明確にしていないので、審査不十分である。従って、規制庁の保有する解析コードMELCORによりクロスチェック解析を行い、MAAPによる解析結果の妥当性の評価を厳正に行うことを求める。

・94-195ページ 4-1.2.2.4 原子炉圧力容器外の溶融燃料-冷却材相互作用について

審査書案は不十分である。

審査結果に「申請者が水蒸気爆発の発生の可能性は極めて低いとしていることは妥当と判断した。」 と記載されているが、何に基づいて妥当と判断したのか述べられていない。これは説明責任を果たしていない。妥当と判断するならば、その根拠を具体的に説明すべきである。
また審査結果には、本現象に関する解析コードMAAPの不確かさを定量的に明確にしていないので、審査不十分である。従って、規制庁の保有する解析コードMELCORによりクロスチェック解析を行い、MAAPによる解析結果の妥当性の評価を厳正に行うことを求める。

195~201ページ 4-1.2.2.5 水素燃焼について

審査書案は不十分である。

意見1: 炉内及び炉外での構造物・水反応による水素の発生量が考慮されていないことは、評価の妥当性を欠いている。これを考慮して評価をやり直すべきである。
その理由は以下のとおりである。 (財)原子力発電技術機構「重要構造物安全評価(原子炉格納容器信頼性実証事業)に関する総括報告書」(平成 15 年 3 月)の2.2-3頁には、「SA時に予想される水素の発生源として、ジルコニウム-水反応、炉内構造物・水反応、溶融炉心-コンクリート反応、水の放射線分解、亜鉛メッキ /アルミニウム・苛性ソーダ反応等が考えられる。」と記載されている。しかし申請者の評価にはこれらのうち、炉内構造物・水反応だけが入っていない。炉内構造物の材料の主成分は鉄であり、その存在量は多量である。また炉外の機器、構造物にも鉄は多量に含まれている。従って、炉内及び炉外における鉄・水反応による水素発生量を評価に入れるべきである。これにより、格納容器内の水素濃度が爆轟の判断基準の13%を超える可能性もある。
意見2: 水素濃度が局所的に爆轟領域に入っているので、爆轟が生じうると判断すべきである。 申請者の解析では水素濃度の空間分布に爆轟発生の判断基準13%を上回っている区画があり、爆轟の可能性を示している。局所的に爆轟が生じうるので、それによっても格納容器が破損しないことが明確に立証されないかぎり、規制基準に不適合とするのが安全側に立った科学的判断である。この点に関して、申請者は「一時的に水素濃度が高くなるが、その期間は短時間であり、水蒸気を含む雰囲 気下においては水素濃度は爆轟領域に達しない。」と説明し、規制委員会はこれを受け入れているが、 その審査経緯の説明が欠落している。
格納容器破損防止対策の評価項目(f)には、「水素濃度がドライ条件に換算して13%以下である こと」が明記されている。従って、申請者の解析結果は、明らかに評価項目(f)に反している。
さらに、水素濃度の空間分布解析の規制委員会による公開資料には、格納容器内のノード分割及び各ノードごとの水素濃度分布が「商業機密に属する」として白抜きにされている。これらの情報は空間分布解析の妥当性をチェックする上で不可欠な情報であり、公開資料で白抜きを認める規制委員会の処置は申請者の言いなりになっていると言わざるをえない。国民に対する透明性、説明性を最優先して、白抜きをやめた資料を公開すべきである。
意見3:静的触媒式水素再結合装置PARの設置に伴う危険性について近年の海外情報の検討・評価がなされていない。これでは重要な海外知見を反映せずに審査していることになり、評価の充足性に欠ける。
近年の海外情報として、米国NRCにインディアンポイント2号機のPARの撤去の請願が提出され、2012年11月に受理されている。(出処:(独)原子力安全基盤機構「インディアンポイント2号機の静的触媒式水素再結合装置(PAR)の撤去の請願について」(平成25年3月25日)
同資料によると、この請願のPARシステムはシビアアクシデント時に意図しない着火が生じ、水素爆轟を引き起こす可能性があるから、とされている。2003年にNRCは、水素再結合器に対する要件を削除した。また水素再結合システムはリスク上重要な設計基準を超える事故からの水素放出の緩和には効果がないと述べた。さらに、NRCのスポークスマンは、水素再結合器は設計基準事故には必要とされず、またシビアアクシデントに役立たないと述べたとされている。このように海外において危 険性が指摘され、削除も検討されている PAR の設置に関しては、規制委員会としてNRCに情報提供を求めて調査、検討の上、その安全性を厳正に判断すべきである。

201~205ページ 4-1.2.2.6 溶融炉心・コンクリー ト相互作用について

審査書案は不十分である。

原子炉容器破損時間に係る解析の不確かさが考慮されていない審査結果には妥当性がない。 その詳細説明は次のとおりである。
原子炉格納容器破損防止対策で使用するシビアアクシデント解析コードは、複数の複雑な現象が同 時進行することから、不確かさが大きいと考えられることは、規制委員会も認めているところである (5-1.2.5 有効性評価に用いた解析コード(233~234頁参照)。
このことは、原子力安全・保安院資料「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価のクロスチェック解析」(平成23年6月)においても明らかである。同資料には、東京電力がMAAPにより解析した結果を、原子力安全・保安院が(独) 原子力安全基盤機構(本年3月、原子力規制庁に統合)の支援を受けてMELCORによるクロスチェックを行った結果が報告されている。結果の一例として、1号機についての地震発生後の原子炉圧力容器破損時間は、MAAPでは約15時間、MELCORでは約5時間と約3倍の大きな差異が生じている。
川内原発に関して本節で取り上げられた事故シーケンスにおけるMAAPによる原子炉圧力容器破損時間は事故発生から約1.5時間であり、その時点では代替格納容器スプレイの手動操作による注水で原子炉下部キャビティ水位が約1.3m確保されているので、溶融炉心・コンクリート相互作用によるコンクリートの侵食は約3mmにとどまり、格納容器破損は生じないとの申請者の評価を規制委員は妥当と判断している。しかし、福島原発事故のクロスチェック解析事例にもとづくと、MAAPの原子炉容器破損は時間的にMELCORによる値と比べて著しく遅れる特性がある。仮に川内原発について、上述の福島原発事故の解析ケース例でのMELCOR値のように原子炉圧力容器破損時間が MAAP値の1/3(約0.5時間)の場合には、溶融燃料が格納容器内に落下し始める事故後30分の時点では代替格納容器スプレイはまだ作動していないので(作動は事故後49分から)、原子炉下部キャビティの水張りはされておらず、大規模な溶融炉心・コンクリート相互作用が生じ、格納容器破損に至るおそれがある。
このように解析コードの不確かさの程度を検討しておくことはきわめて重要であり、川内原発の事故ケースに関する不確かさの程度を検討する上で、MELCORによるクロスチェック解析を実施すべきである。これは、MAAPとMELCORのどちらの解析精度が高いかを比較評価するためではなくて、現有の技術水準で作成された異なる解析コードの間で安全評価上重要な物理量に関してどの程度の違いが生じるのか、それを現有の解析コードの不確かさとして安全評価上考慮に入れることが目的である。
なお、「審査過程における主な論点」において、規制委員会は申請者が検討した原子炉下部キャビ ティへの注水開始遅れの影響について、操作開始が10 分遅れても評価結果に与える影響が小さいことを確認したとあるが、これは運転員操作に係る感度解析であり、MAAPの不確かさとは何ら関係はない。
また、MELCORについては、(独)原子力安全基盤機構が新規制基準を反映した安全設計の妥当性を 評価するために過酷事故に関するクロスチェック解析手法として整備してきた事実があり、今般の適 合性審査にその成果を生かすべきである。(原子力安全基盤機構「安全研究年報(平成 24 年度)」pp.7 ~10)

・233-248ページ 4-1.2.5 有効性評価に用いた解析コードについて

審査書案は不十分である。

規制委員会は事業者の使用解析コードの有効性について「感度解析による不確かさ評価による結果の妥当性の確認が行われているか」という観点からの審査を行ったとしており、自ら、別コードを使用したクロスチェックを行なった形跡はない。これは、事業者による結果の客観性を証明するものではなく、単なる追認でしかない。事象進展シナリオそのものの信頼性が疑われる。

・267-273ページ 4-4.1 緊急停止失敗(ATWS)時に未臨界にするための設備及び手順等について

審査書案は不十分である。

確実に実施される筈の ATWS 緩和設備の作動と有効性は、実機、あるいは確証試験設備で確認されているのか?失敗確率は?ホウ酸注入が失敗した時は?(配管破断、ポンプ破損、非常用電源遮断、等々)

・375ページ 4-4.15 計装設備及びその手順書について

審査書案は不十分である。

表4―4(計測する重要なパラメータ)をみると、従来よりわずかの改善でしかないように見える。具体的にどのように福島原発事故で露呈された欠陥が克服されたのか不明である。審査結果にはこの点を明確にすべきである。

・267~412ページ 4-4 重大事故対処設備及び手順等 4-4.1~4-4.19について

審査書案は不十分である。

いずれの項目においても、「事業者が・・・する方針としていることを規制委員会は確認した」と記載している。つまり、審査では申請者の方針の確認にとどまっていて、現実の対策が妥当であるかどうかの確認をしていない。これでは審査不十分である。

・351ページ 4-12 発電所外への放射性物質の拡散を抑制するための設備及び手順等について(汚染水対策について)

審査書案は不十分である。

申請者が汚染水対策設備を設けていないことは、規制基準不適合である。汚染水対策を審査で取り上げていないのは、審査の欠陥である。
設置許可基準規則55条(工場等外への放射性物質の拡散を抑制するための設備)では、格納容器の破損に至った場合等において「工場等外への放射性物質の拡散を抑制するために必要な設備を設けなければならない」とされ、同第37条2項には、「発電用原子炉施設は、重大事故が発生した場合において、原子炉格納容器の破損及び工場外等への放射性物質の異常な水準の放出を防止するために必要な措置を講じたものでなければならない。」と定めている。
ところが、適合性審査においては、福島原発事故で今なお深刻な状態が続いている汚染水問題、すなわち、炉心溶融、原子炉圧力容器破損、それに引き続く格納容器の破損により放射能を大量に含んだ原子炉冷却水が汚染水という形で施設外へ流出し、放射性物質の異常な水準の放出をもたらす事態については、申請者は設備対策を講じていないし、審査でもそのことを取り上げていない。これは、 審査に欠陥があることを示すものであり、汚染水対策についての厳正な審査を行うことを求める。

t_m NoNukes😷 @t_m_tweet

.@ogu_60 @humansystem 「政令や省令等を決めようとする際に、あらかじめその案を公表し、広く国民の皆様から意見、情報を募集する手続が、パブリックコメント制度(Public Comment,意見公募手続)です。」って総務省のHPにも書いてあるのに…orz

2014-07-29 16:34:14