七夕ついのべ

七夕のついのべをまとめましたー。
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数夜ァ @hikage5141

七夕ですね~(ृ   ु ´・ω・`)ु

2014-07-07 23:55:52
数夜ァ @hikage5141

1 唐突だが、思い立ったら吉日という言葉がある。彼女はいらない紙を探して、やがて見つけた色付きの紙をハサミで切り始めた。縦に細長い長方形を机の端に置き、余った部分を細長い紐のようになるよう丸め始めた。少し太いが、できた紐の長さをハサミで調整し、端に置いた紙と一緒に真ん中へ並べた。

2014-07-08 00:06:01
数夜ァ @hikage5141

2 紙を左手に持ち、右手でハサミを持つ。彼女は少し考えて、一旦ハサミを机に置いた。紙を縦に折り、折った方の少し上の部分にハサミで切り込みを入れる。ハサミを置いて紙を開けば、上の部分に小さな穴ができていた。彼女は細長い紐をそこへ通し、輪っかになるよう折り目を付けて、上の方で結んだ。

2014-07-08 00:08:03
数夜ァ @hikage5141

3 結んだところを手で持って、彼女はしばらくできたそれを眺めていた。短冊に似たそれは、なんだかひどく無愛想で、彼女には冷たく感じた。一度机の上に置き、縦に折った時の跡で曲がっている紙を伸ばす。やがて納得できたのか席を立った彼女は、その手に色鉛筆を持って戻ってきた。再び椅子に座る。

2014-07-08 00:15:26
数夜ァ @hikage5141

4 彼女は黒の色鉛筆を持ち、短冊の下の部分に尖った芯の先を当てた。そのままの状態で少し考え、不意に彼女はオレンジを黒く塗り潰した。何かを吐き出すかのように小さな範囲を塗り潰し、色鉛筆を離してふう…と、一息吐く。ぐちゃぐちゃに塗り潰されたその周りを円を描くように囲み、隅なく塗った。

2014-07-08 00:23:18
数夜ァ @hikage5141

5 そうしてできたのは、下の部分に黒い丸が描かれたオレンジの短冊だった。途中で芯が折れた黒の色鉛筆をケースに戻し、彼女は今度は黄色の色鉛筆を手に持つ。黒い丸の内側を小さく塗りつぶし、まるで夜空の星を丸く切り取ったような絵を描いた。ただ、その星は、少しだけ黒く濁った色をしていたが。

2014-07-08 00:27:48
数夜ァ @hikage5141

6 予想と違うものができたからか、彼女は不思議そうに首を傾げる。また、少し考えて、黄色の色鉛筆から赤の色鉛筆に持ち替えた。黄色の小さな点を上から薄く塗り、また黄色く塗り潰した。その上から白く塗り、薄く橙色を塗り、また黄色く塗り潰す。ようやく納得のいく色ができたのか、彼女は頷いた。

2014-07-08 00:33:28
数夜ァ @hikage5141

7 色鉛筆をケースに仕舞い、彼女は短冊を机の上に置いたまま後片付けを始めた。余ったオレンジの紙は何かに使えるかもしれないから使わない紙を仕舞ってあるところに戻しておき、ハサミと色鉛筆は文房具用の引き出しに仕舞う。そうして机の上に短冊以外の余分な物がないことを確認して、椅子に座る。

2014-07-08 00:40:31
数夜ァ @hikage5141

8 机の上に置かれたペン立てからシャーペンを取り、カチカチと親指でノックボタンを押す。芯が出てきたのを確認して、ペン立ての横に置いてあった消しゴムを短冊の横に置いた。そこまでやって、彼女はシャーペンを握りながら、短冊を前にしばらく動くことができなかった。――何も、思いつかなくて。

2014-07-08 00:48:28
数夜ァ @hikage5141

9 思考を巡らせて、自分の願い事を考えて、けれど、彼女の手は動かない。そのペン先から、文字が綴られることはなかった。そうして彼女は、自身の左手を額から髪の根元に滑り込ませる。「…っ」眉間に軽く寄せられた眉が、一瞬深く寄せられたかと思うと、彼女はゆるゆると頭を振って、一つ、ため息。

2014-07-08 01:06:27
数夜ァ @hikage5141

10 彼女は一度シャーペンを机の上に置いて、重心を背凭れに寄せる。天井を見上げ、両手を握りこぶしにして目を覆った。何も考えていないような、考えているような、ゆったりとした時間だった。テーブルランプが部屋を照らす以外の光源はなく、窓の外は空を雲が覆ってしまっている。ひどい、七夕だ。

2014-07-08 01:14:33
数夜ァ @hikage5141

11 こんな天気で、織姫と彦星は幸せなのだろうか。そもそも、会えたのだろうか。会えたなら、幸せなのだろう。例え雨でも、曇りでも、晴れでも、会えたなら。きっと、天気は関係ないのだろう…。その時、不意に彼女の胸を過った感情を、何と言えばいいのだろう。ああ、そう、言葉にするのなら――。

2014-07-08 01:19:13
数夜ァ @hikage5141

12 彼女は身を起こして、少しだけ曇って見える視界の中、シャーペンを握って短冊に向かった。一文字。たった一文字、書こうとする手を邪魔する見えない躊躇という障害物を無視して、一気に書き綴った。『誰か、私を抱きしめてくれる人が現れますように』それが、この寂しさを埋めてくれると信じて。

2014-07-08 01:25:57
数夜ァ @hikage5141

13 精一杯綺麗な字でそれを書いて、彼女はできあがった短冊を手に立ち上がった。窓の前まで行って、空を見上げる。雲が隠してしまった夏の大三角形を、どうにか見れないかと考えて、彼女は笑った。月の明るささえ知れないこの空から、どうやって見つけると言うのだろう。自分で自分を嘲って、笑う。

2014-07-08 01:32:06
数夜ァ @hikage5141

14 まあ、別に、そんなことはどうでもいい。そう、心の中で呟いて、彼女は窓に短冊を立て掛けた。輪っかの出番はなかったが、どうせこの部屋にここ以外の“らしい”場所はないのだから、と、彼女は一歩後ろに下がった。「……うん」彼女は軽く頷いて、窓に立て掛けられた短冊をしばらく眺めていた。

2014-07-08 01:39:08
数夜ァ @hikage5141

15 気が付けば、時刻は0時を回っていた。時計の針が12を過ぎ、長い針は1に触れそうだった。寝なければ、と、思う。彼女は最後にもう一度窓から空を見上げて、短冊を見やる。何気なく、両の手のひらを合わせた。やがて踵を返し、ベッドに横になって布団を被る。瞼を閉じて、彼女は眠りに落ちた。

2014-07-08 02:00:36
数夜ァ @hikage5141

と、いうことで、日付は超えたけど七夕の短編は完結でつ。っていうか、七夕の夜って7月7日20時(くらい)から23時59分ってこと?明朝までは入るの?疑問だわー…。まあ、とりあえず細かいことは気にしちゃ損損、ということで、七夕の短編小説は完結です。これは、多分、ついのべになるのかな?

2014-07-08 02:04:48