不知火に落ち度はない その14

yamoto @yamoto

「だからね。そんなお断り系妹がラブに目覚めちゃったわけ！ 提督ラブに！」 「初恋は大抵かなわん話でいいんじゃないか？」 「ちぇすとー！」 ぽすんっと、胴にチョップが入れられた。 「そういうBADENDは妹にさせません！」 「お前妹好き過ぎだろ」 #不知火に落ち度はない

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「シスコン番長名乗ってもいいよ？」 「筋金入りすぎ。そりゃいいが付き合ってBADENDだったらどうなわけ？」 ちょっとツッコミ入れてみよう。 「そんときは腹を切るわ！」 「過激に飛んだな」 「提督のだけど！」 「俺のか！？」 川内もアブねえ。 #不知火に落ち度はない

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「余計お断りだっつの」 「断っても腹を切る！」 「はいはい。後か先かの違いだろそれ」 お前のリーチは把握済です。 不意打ちが怖すぎるけどな。 「むー。付き合ってもないのに良く言うなあ」 「付き合う前からわかることもあるだろ？」 #不知火に落ち度はない

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「私のカンだとかなりのセーフだと思う！」 「お前のカンは夜戦ONLYだ」 「つまり今私大勝利だね！」 夜戦バカ復活。 しまったNGワードだった。 「うんうん、私冴えてる。行けるって！」 「俺の意思と妹の意思を尊重しろ」 #不知火に落ち度はない

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「神通の意思だけ尊重するよ？ だって提督は私の妹じゃないし」 「恐ろしくバカな理屈が来たな」 ここまでくると感動的バカである。 「そういう本気の入れ上げは、本気で幸せになれる相手とやれっつの」 「あはは、バカがいる」 「なにおう？」 #不知火に落ち度はない

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「そう見込んだから惚れてんじゃない」 と、素のトーンで川内が言った。 「……含蓄あるような、ないような言葉言うなあ、お前」 「長女だし。一番偉いのです」 どーだとばかりに胸を張る。 そんな長女は、胸囲で明らかに妹たちに惨敗だけどな。 #不知火に落ち度はない

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「見込まれた理由が思いつかんわ、そこは」 「何か思うところがあったんじゃない？」 言われて考えるが── 「訓練に付き合ってゲロ吐かせただけだぞ俺」 「ゲロ愛か……我が妹ながら深いねぇ……」 そんな愛はありません。 #不知火に落ち度はない

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「冗談はさておき、感じ入る所があったんでしょ。神通の価値観的に」 「どこもねえと思うんだがな」 凄い不思議。 俺なら寧ろ恨むと思うが。 「とーもーかーく、そんなのどうでもいいから付き合おうよ！」 「俺は今からNoとしか言わん事にする」 #不知火に落ち度はない

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「神通と付き合おう！」 「絶対にNo」 「神通を娶ろう！」 「絶対にNo！」 「神通と別れよう！」 「絶対にNo！！」 「良し勝った！！ やったよ神通！ お姉ちゃん頑張った！」 いや、付き合ってねえから変わらんぞ今の。 バカってすごい。 #不知火に落ち度はない

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「じゃあ、オッケー貰ったって言ってくるね！！」 「はいちょっと待て今の全然オッケーしてない」 キャッチ。油断したな川内。 「えー、負けたからって今更そんなこと言う？」 「別れろでNoつっただけで、そも付き合ってねえだろ」 「負け惜しみ？」 「違う」 #不知火に落ち度はない

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「もー。じゃあどうしたら付き合うわけ？」 「そも選択肢に付き合うがないって話を、さっきからしてるんだが」 「そこをなんとか曲げよう」 「曲げないっつの」 こいつの意思力つえーな。全然折れないし。 「じゃあ、妥協しよう」 「どんなのだ、それ」 #不知火に落ち度はない

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「付き合うことを前提に結婚しよう！」 「どこも妥協してないだろお前」 どんな政略結婚だそれ。 「なんで提督は一々細かいかなあ。うちの妹にどんな不満があるわけ？」 「とんでもねえバカな姑が、もれなくついてくる事」 「なるほど、神通に不満はないか」 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「嫌う理由がわからないなあ。何の不満もないんでしょ？」 「おう。さらに言うならタイプとして充分好みだ」 ちょいとコミュ障気味だけどな。 だが、武器を抜いたときや指揮官をしてるときは、凛々しい。 あの横顔に惚れたって整備員は少なくないだろ。 #不知火に落ち度はない

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「じゃあなんでさー。嫌いじゃないし、不満もないんでしょ？」 「付き合わん方がいいこともあるからだ」 このバカの納得を買うのは難しい。 しかし神通の場合は違う。 あいつは愉快な勘違いをしてたわけだしな、前回。 だが──あの時の言葉に嘘はなかったろうし。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

同時に、あの泣き顔も思い出してしまう。 身の程知らずで、とか言いかけてたっけか。 「ちなみにあのままだと、神通は一生思い出を抱えて生きたでしょう」 「心を読む悪魔かお前」 「思い出してたのぐらい顔見ればわかるよ？」 そう言えば一部始終を見てたっけか。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「あー…そんな思い出もいいんじゃねえの？」 残り少ない手紙用紙に向き合い、すっと筆を滑らせる。 こんなうるさいバカ姉がいるなら、そのうち別のを見つけるだろ。 それでいいと、頭の中で決めつけ筆を進め。 「スカイハーイ！」 また手紙が空を飛んでいく。 #不知火に落ち度はない

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「お前はあくまで邪魔をしたいんだな？」 「妹の幸せを勝ち取りたいだけよ？」 にらみ合う。 「どうすりゃ納得するんだお前は」 「ただ唱えよイエスと」 お前はどっかの神父か。 「あー、もーわかった」 「よし、オッケーね！」 んなわけあるか。 #不知火に落ち度はない

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「お前の押しに負けたんで、妥協案で行くぞ」 「ほう、私の勝ちでいいのね」 額がぶつかる。 得意げな顔と鼻息が当たる。 こんな状況でも何とも思わない鉄の神経があるんだな。 ちょっと気に入ったぞ。バカだけど。 「勝ちでいい。もう俺は疲れた」 「よし！」 #不知火に落ち度はない

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いえーい、と勝ちポーズを決める川内。 それをほっといて、俺は筆ペンを手にした。 あーもう。押し負けた気がしてならん。 さっさっさ、と筆を動かし。 思いの丈を紙の上に全力でぶつける。 俺が悪いわけじゃない。 このバカが感染したのである。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「ほれ、持ってけ」 「どれどれ……？」 川内チェック入ります。 「うん！ これならまあ許す！」 「そっか。じゃあ届けるのよろしく」 疲れ果てて、俺は椅子に沈み込む。 「まかせて、絶対届けるから！！」 天井にジャンプ、スーパー忍者川内が去っていく。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「……。冷静になっちゃいかんよな、たぶんこれ」 ふーと、ため息をつくと酒を口にする。 川内が納得する答えであり。 神通もまあ、理解してくれると思うものを書くとか無茶すぎる。 なんでここまで疲れにゃならんのだ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

俺の書いたものは──果たし状である。 内容について簡単に言えば、現状は保留。 破りたければ一本取れ。 そんな内容をざっくり果たし状風に書いて見たわけで。 案の定あの夜戦バカは、すっかり上っ面にに引っかかって突っ走ったわけだ。 汚い大人の手である。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

そして俺はそのまま布団に突っ伏した。 愛しの布団はゆっくり俺を包み込んでいやしてくれる。 ああ、俺もう布団と結婚しよう。 そんなことを思いながら意識を手放した。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

それで今日はお終い。 川内がスカイハイした日。 川内がヨガファイヤーした日。 川内のシスコンぶりが異常だった日。 スーパー忍者川内もうやだってなった日であった。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「神通ー！ 神通ー！」 「なんですか、姉さん。夜に騒がないでって……前も言ったのに」 「今日は神通が夜に騒ぐ日だよ！」 「……そんなことしません」 「いやいや、ほらじゃじゃーん。手紙の返事貰ってきたよ！」 「……え？」 #不知火に落ち度はない #おまけ