不知火に落ち度はない その14

@yamoto 氏の #不知火に落ち度はない をまとめました。 以下本家より抜粋 【不知火に落ち度はない】 続きを読む
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スーパー忍者川内、駄提督と神通教官の仲を取り持つの回

yamoto @yamoto

珍しく出撃もなく、遠征の番もない。 俺は久々に自室で眠るという贅沢を味わえる機会を得ていた。 時刻は21時。あのやかましい夜戦バカの夜鳴きも聞こえないのできっと今晩は暇になるだろう。 と──いうのにだ。 俺は机に向かい、文字と格闘するハメになってる。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:05:23
yamoto @yamoto

その頭を悩ませる対象は、かつて10回ほど破いた記憶のあるもの。 神通から預かった、おそらくは恋文と呼ばれる類の物である。 おかげでこちとら頭がかゆい。 なんなんだこの、冒頭の挨拶から三行に至るまでの季節を語った文字。 これだけならまだしも続きがある。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:08:52
yamoto @yamoto

そこから本題に入るまでの長さが奥ゆかしさと言うならば、黄泉比良坂にでも籠もってんのか。 思考の小道からあちこち夏目漱石が飛び出しそうな隠喩のオンパレード。 漱石20人前と名付けてみたい。 そこを通り過ぎたあたりで俺は一度給水ポイント。 死にそうだ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:15:47
yamoto @yamoto

メインディッシュである本題にはふんだんに甘酸っぱい香り漂う桜色漂う文字の数々。 顔を「かんばせ」って読ませるような文脈には、思わず殴っていい壁を探した。 なんなんだこれ。 俺若草物語に出てくる文学青年か何かか。 既に5度目になるが今だ慣れない。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:18:00
yamoto @yamoto

そしてそのまま酒と一緒に大量の美辞麗句を飲み下せば最後には、控えめにお返事お待ち申し上げますとの一言。 いっそ直接口頭で伝えたくなるが、普段の神通を見ているとそうもいかない。 本気でこんな手紙を書けるほどのコミュ障力を秘めているのである。 つらい。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:23:01
yamoto @yamoto

どうやって言葉をひねり出したモンかと、国語辞典に格闘すること早2時間半。 すまん、むり。 これ一言で済ませられるのをどうして俺は20行以上続けて書いてるのだろうか。 「なにやってるの提督?」 「お前の妹への返事だよ」 川内の幻聴も聞こえるわな。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:29:05
yamoto @yamoto

「えっ。ほんとほんと? ねえねえ見せて見せて!!」 「うっを幻覚じゃなくてホントに居やがった!!?」 今日の驚き忍者のコーナー来ちゃったこれ。 お前どっから入ったんだと聞く前に、天井の板が外れてるのが見えた。 川内の突破力スゲエ。バカだけど。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:31:51
yamoto @yamoto

「ふんふん何々? へー、提督こういう文章も書けるんだー」 「こら、返せお前」 読みながらひょいひょい上体を反らして回避する超人川内。 その動かない腹に一発ぶちこんでやろうかお前。 そうしたらそうしたで今度は足を使って狭い中を避けまくるに違いない。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:35:15
yamoto @yamoto

「ん? んんんん?」 「何電波を受信中だ川内。あと返せ」 なにやらお悩みのご様子。 身体をくの字に曲げて俺の手から逃れつつである。 「うん、よし」 と、思ったら突然窓を開けて、俺書きかけの手紙を丸め。 「スカイハーイ!!」 投げ捨てやがった。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:41:47
yamoto @yamoto

ちょっ、おま何すんの。 「これじゃあダメダメ! さあ夜は長いからやりなおそっ!」 「どういう理屈だお前は?」 「美辞麗句じゃなくて本当の言葉で語ればいいの!」 俺の本音は今すぐ出てけだが。 あとベッドの上に立つな。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:46:16
yamoto @yamoto

「わあったわあった。書いたら妹に持ってけよ?」 「いいよ任せて!」 返答までにコンマ2秒。こいつは脊髄で語るバカだ。 適当にさくさくと言いたいことだけ書いて差し出す。 川内は受け取り、ふむふむとアンテナをふりふりしつつ読み。 1,2,3。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:50:36
yamoto @yamoto

「ヨガファイヤー!!」 ぼーう。 手にした手紙を速攻で焼きやがった。 お前部屋で火ぃつけんなとか、ベッドの上だぞとかはさておき今どうやった。 謎の忍者技術でも使ったのかと思いきや、手には俺のライターと酒があった。 即ちょろまかすとは天才か。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:52:43
yamoto @yamoto

「だから違うって! こういうんじゃなくて!」 「どういうのならお前首縦に振るわけ?」 おじさん疲れて来ちゃったよ。もう寝たいよ。 なんでお前ベッドの上であぐらかいて居座りモードなんだよ。 「そりゃもちろんアイラブユー!」 「さっさと帰れファックユー」 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 21:56:51
yamoto @yamoto

「うーん……いっそファックユーでも可? 結果的な方向だけど」 「お前妹の貞操あっさり売ったな今」 なにやら俺がNoと言うのにご不満ありありなご様子。 だからって妹を売り飛ばす的提案してるぞ。 「だめかな?」 ダメにきまってます。この夜戦バカ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 22:03:19
yamoto @yamoto

「むー、提督は何が不満なわけ? 姉推薦の自慢の妹なんだけど」 「他の奴に自慢してこい。みんな大絶賛だ」 ぶっちゃけ俺も自慢はしたい。 あれだけの剣客見たことねえし。 だが、それとこれとは別問題だっつの。 「おっぱい大きいよ?」 うん知ってる。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 22:06:31
yamoto @yamoto

「おっぱいでかけりゃ付き合う理由になるのか、お前は」 「あー、私はならないなあ」 「じゃあ却下だな」 この理論で押してみよう。 川内ほどのバカなら従うかも知れない。 「あはは、提督はバカだなあ! 私女だよ?」 うっわバカにバカって言われた。つらい。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 22:08:09
yamoto @yamoto

「そんなわけで神通でどうだ!」 「お帰り下さい」 「わりと安産型でぽこぽこ子供産めるよ!」 「やめてやれよ!?」 神通。お前の姉が大変だ。 個人情報を消火ホース並に漏らしてくるぞ。 「うーん、エロ提督なのに反応しないとは」 「殴るぞテメェ」 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 22:13:23
yamoto @yamoto

「よしわかった。さあこい!」 目を閉じてぐぐぐ、と耐える準備を始める川内。 大変だ。こいつが何したいかさっぱりわからない。 「熱い一撃を見事受け止めるから神通のことよろしく!」 「その理屈物凄いおかしい」 どうしたらいいんだ。この理不尽な忍者。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 22:16:25
yamoto @yamoto

「え、もしかして姉妹全員の身体が目当て!?」 顔を赤くする川内に、無言でボールペンを投げつけてみた。 ぱっと指でキャッチして、はいどうぞって返してくる。 マスター忍者か、お前。 「何が不満なのさー」 「妹に不満はない。お前の存在には不安だらけだ」 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 22:21:30
yamoto @yamoto

「だったら貰ってってよー。お買い得だよ? 優良物件だよ? 安くしとくよ?」 「間に合ってるから他当たれ」 工廠課や整備班ではさりげに人気らしいしな。 神通装備は、新入りが触ると吊されるルールがあるらしい。 そんなん貰ったら今度は俺が吊されるだろし。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 22:26:44
yamoto @yamoto

「他にってよくそんなこと言うねー。ハート鷲づかんじゃったのに」 「そんな妄言ぬかすお前の頭を鷲づかみにしたい」 「してもいいけど、貰ってよね?」 うっわ、ひでえ脅しが来た。 お前身体張りすぎだろ。 「第一惚れる理由がわからん」 「実は私も」 おい。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 22:46:03
yamoto @yamoto

「いやだってさ? 妹が部屋に男物のシャツ連れ込んで添い寝ですよ?」 「その表現だと妹がシャツマニアみたいに聞こえるぞお前」 酷すぎる絵面である。 「ちなみに、モテないわけじゃないからね。ウチの妹」 「あー……そうだな」 ある種男の夢の合体編だし。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 22:53:36
yamoto @yamoto

「自慢じゃないけど、お断り数半端ないよ?」 「そりゃ希少品だな」 「そんな希少品が今ならラブレター一枚でGET可能!」 「お前は通販感覚で妹を売るなと」 なにがしたいの川内。 妹自慢なら付き合ってやるけど夜通しは勘弁な。 煙草を咥え、さあ気分転換だ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 23:06:23
yamoto @yamoto

「ヨガファイヤー!」 ぼーう。 俺の煙草が半分消し炭になる。 ぽろっと落ちる灰。ちょっと熱い。 「何してくれるのお前」 「真面目に聞こうよー。押してるんだってばー」 「話半分で真面目に聞いてる」 燃え尽きかけた煙草を吸う。 ふー、ため息自動更新だ。 #不知火に落ち度はない

2014-07-31 23:09:55