ラバウル少佐日誌:暗黒の海溝編其ノ肆

艦これ二次創作小説です。 潜水艦娘の過去捏造注意です。
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檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

暖かい日差しの下、四人の少女が海中を泳いでいた。 だがその速さは、おおよそ常人離れしたものだ。 そう。 彼女達は腕脚や背に着けられた機械の力で、人よりは速く、然し一般的な艦艇よりは遅い程度の速度を保ちながら進んでいる。(1) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 11:08:20
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

艦娘と呼ばれる現代日本の防衛や戦闘を任された者達の中でも、潜水艦娘に属する彼女達は特殊な部類に入る。 それはあきつ丸やまるゆの様に史実の都合上陸軍からの出向扱いとなっている訳でも、 金剛比叡の様に何故か英国系の血筋でない者は動かせないという訳でもない。(2) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 11:14:43
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

彼女達は先ず、潜行、浮上の連続による圧の変化に対応する為、皮膚、内臓、筋肉、そして骨格等全身の全てに、妖精の加護を施されている。 加護。それは即ち投薬であり、施術も意味する。(3) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 11:21:47
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

更に、潜水艦娘はその加護を確実なものとする為に、全ての肉体を均一化する必要がある。 つまり、身長、体重、顔の形や3サイズに至るまで、全て整形される。 そこに一人の人間がいたという痕跡は失われ、全てが伊号潜水艦娘の素体となる……。(4) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 11:33:28
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「提督の狙い通り、羅針盤は主力でなく揚陸部隊を指しましたよ」 伊8は何時も通り、おどけた調子だ。 『では何時もの様に頼む。大淀も私も、諸君の戦果を期待しているぞ?』 少佐の催促に、伊8は後ろに率いる3人へ目をやりつつ「ja」と答えた。(5) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 11:39:59
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

『おや?少し訛りが改善されたな。Z1にでも教わったか?』 くすくすと、その問いを伊8は笑った。 「レーベは意地悪だから、8っちゃんにドイツ語喋らせてくれませんよ」 『ああ……そういえば。アイツ変なとこ気ぃ遣いだからな』(6) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 11:45:32
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「気ぃ遣い?」『ああー……いや、何でもない』 少佐のしどろもどろな声の調子を、伊8は更に笑う。 「提督は8っちゃんの心配する位なら、関西訛りをどうにかして下さ……あら?」 逃げるように、通信は切れた。(7) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 11:54:26
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「司令官、何て?」 「勝手に関西弁で寒い事言って滑ったら切った」 「アイツらしいでち!」 「色んな意味で可哀想なのね」 四人はくすりとも笑わず、淡々と雑談を交わす。 (8) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 12:02:38
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「帰ったらまた8っちゃんが話し相手になってあげますよ」 「そんな事言って、案外あのデブお気に入りなの?」「いやそれはない」「テートクかわいそうでち!」「いやホンマに無理勘弁マジ」 わいわいと喋る3人であったが、伊8の言葉に伊168と伊58は突然口を閉じた。(9)#ラバウル少佐日誌

2014-07-31 12:17:39
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「あ……あ、あああうあうあえええうああああ」 伊8は……深い海溝を覗き込んだ様な表情で口をぱくぱくとさせるだけで、何かを喋っているようだが、言葉になっていない。 (10) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 12:26:54
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「伊8は神戸の川崎造船所生まれだから関西弁喋っても何もおかしくない!」 伊19が早口でまくし立てた直後、息を取り戻した伊8は大きく咳き込んだ。 「問題はないの。ね?」「うん」 伊19と伊8は、裂けそうな程見開いた互いの目を覗き合うと、前方へ視線を移す。(11) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 12:32:44
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「敵は前方」「うん」 「揚陸部隊」「うん」 「あなたは伊8」「うん」 「川崎重工神戸造船所で建造され生還率12.5%のドイツ遠征から帰還した潜水艦伊8の艦娘」「……うん」 二人の様子に伊168は怯えていた。 伊58はぼんやりと、唯目を向けているだけだ。(12) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 12:41:50
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「もう大丈夫なの」 振り返った伊19は、二人に笑顔を見せた。 「分かった」 対して、伊168はそれだけ言った。 「じゃあ行こう。早く敵をぶっ殺し尽くして、基地に帰ろう」「やー!」「ja......」 顔色の悪い伊8を先頭に、四人は再び航路を進む。(続く) #ラバウル少佐日誌

2014-07-31 12:50:44