プロ翻訳家、『赤毛のアン』の歴代の翻訳を腐す

はっきりいいます。村岡花子先生をはじめ、どなたも落第。
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れんちるーと @lenchroot

すがすがしいほどの自画自賛ですぞ!:プロ翻訳家が語る『赤毛のアン』の邦訳比較 - Togetterまとめ togetter.com/li/705230 @togetter_jpさんから

2014-08-12 15:31:08
It happens sometimes @ElementaryGard

まずスタジオジブリ制作の『赤毛のアン』を見ていただきましょう。 youtu.be/DBQgH2o8YKI

2014-08-12 16:05:04
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孤児院から送られる「男の子」を引き取りに駅に向かうマシュウ。律儀に背広を着こんでるのがなんかおかしい。

2014-08-12 16:06:56
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8:30から再生してください。駅のホームでマシュウとアンが初遭遇。

2014-08-12 16:10:25
It happens sometimes @ElementaryGard

10:49 マシュウがようやくアンのほうを向く。男の子が到着しているはずなのにホームには女の子しかいない。その子はさっきからずっとマシュウに目を向けているのですが。

2014-08-12 16:12:53
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原作小説にあるとおりに話が進んでいきます。原文はどうなってるかな。

2014-08-12 16:13:24
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>She had been watching him ever since he had passed her and she had her eyes on him now.

2014-08-12 16:14:03
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「彼女のほうはマシュウが自分のそばを通りかかったときから彼をずっと気にしているのだった。そして今はしっかりと彼の方に目を向けていた。」 おお、高畑監督、アニメでもこのままに演出してます。過去完了進行形と過去完了と過去形が並ぶ。ちゃんと時制を意識して訳さないと落第。

2014-08-12 16:22:35
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watchingを「気にしている」と訳すのはセンス。凡庸な翻訳屋なら「観察している」「見つめている」にするでしょうね。「観察」だとどこか上から目線ですし「見つめている」だと後半のhad her eys on him(彼の方に目を向けていた)がくどく響きかねない。

2014-08-12 16:26:21
It happens sometimes @ElementaryGard

youtu.be/DBQgH2o8YKI アニメでは原作にはない巧みな演出がされています。8:33に注目。木製のホームに上がるとき、マシュウが靴底を階段の縁にこすりつける。泥を落としているのです。その音でアンは「誰か来た!」と振り返る。

2014-08-12 17:01:27
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It happens sometimes @ElementaryGard

あ、ここです。マシュウが靴底をこすりつけるところ。 pic.twitter.com/heQrhbQABU

2014-08-12 17:06:42
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その音で気がつくわけです。「迎えが来たんだ!」 pic.twitter.com/tuxrln5Fwr

2014-08-12 17:08:45
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原作にはないんです靴底の音で気が付くという演出は。徹底してマシュウ視点で進む。プラットホームを見ても見知らぬ女の子以外は誰もいないので駅舎に入って駅長に聞いてみる、と話が進む。アンの視点は一切なし。それがアニメではアンの視点がちゃんと入っている。

2014-08-12 17:12:01
It happens sometimes @ElementaryGard

で、先ほどの原文を改めて読んでみましょう。 >She had been watching him ever since he had passed her and she had her eyes on him now. 「もうさっきからアンは気が付いているのに」の意です。

2014-08-12 17:14:03
It happens sometimes @ElementaryGard

andで前半、後半にわかれています。前半は過去完了形、後半は過去形。この時制の使い分けには理由がある。後者ではマシュウの視界にもアンが入っているけれど、前者ではまだ入っていないのです。アンの側の視界には入っていてもマシュウの側の視界にはアンがない。ノイズと同じ扱い。時制で表現。

2014-08-12 17:17:10
It happens sometimes @ElementaryGard

8:40 アンはマシュウを認識しているのに、マシュウはアンに気が付いていない。まさに原文にある構図です。ただ原作と違って、二者の認識のずれ構図を早めに提示しているのです。 pic.twitter.com/yX1syEy8Dt

2014-08-12 17:20:17
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このあと駅舎に入って駅長とやり取りがあって「ホームのはじにさっきからいる女の子じゃない?声をかけてみては」と促される。マシュウは女性恐怖症で女の子でも苦手。孤児院から来るのは男の子のはず・・・とにかく問題の子におそるおそる目を向ける。 pic.twitter.com/TN9zPMtR1L

2014-08-12 17:28:41
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アンが立ち上がる。 >She had been watching him ever since he had passed her and she had her eyes on him now. この文が映像化されている。 pic.twitter.com/zrXwRr1RWv

2014-08-12 17:30:19
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It happens sometimes @ElementaryGard

高畑監督は原文を確認されたのかわかりませんが、原作をよく読み込んだうえで組み立てているのがわかります。さらに原作にはない、待ちぼうけのアンの側の視点も入れることで、トロい二人の様子を第三者目線でユーモアたっぷりに楽しめるよう演出。

2014-08-12 17:32:59
It happens sometimes @ElementaryGard

さあここからが、先ほどまとめた「プロ翻訳家が語る『赤毛のアン』の邦訳比較」togetter.com/li/705230に続くわけです。

2014-08-12 17:35:48
It happens sometimes @ElementaryGard

①an ordinary observer ②an extraordinary observer ③our discerning extraordinary obeserver アンの風貌を形容するにあたって、視点の主語がホップ、ステップ、ジャンプで大仰になっていきます。

2014-08-12 17:37:26
It happens sometimes @ElementaryGard

>an ordinary observer would have seen this 「もしマシュウに人並みの観察眼があったならば、この女の子について[以下原文では長々とアンの風貌の形容が続く]と認識したであろう」 なぜ原文にはない「もしマシュウに」と訳さないといけないのか?

2014-08-12 17:45:30
It happens sometimes @ElementaryGard

仮定法が使われているからです。would have seenですよ。これは書きかえると if he had been an ordinary observer, he would have seen this です。

2014-08-12 17:47:22
It happens sometimes @ElementaryGard

次に②an extraordinary observerが主語になった文を分析してみます。 >an extraordinary observer might have seen that 「もしマシュウが人並み外れた観察眼を有していたのならば[略]と認識したであろう」。

2014-08-12 17:51:37
It happens sometimes @ElementaryGard

ここでも仮定法が使われています。might have seen しかもmayではなくさらに奥ゆかしいmightが使われています。「マシュウにここまで期待するのはそもそも無理かもしれないのだが、それでももし彼にこのくらい抜きんでた観察眼があったならば」の意。

2014-08-12 17:53:47