rsbs日誌#20

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　ハヂマリ。

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#rsbs日誌　ある、麗らかな日の事。私は戦艦や巡洋艦の使う水上機の整備報告書と運用状況報告書を片手に執務室に赴いていたわ。最近は、砲弾観測射撃も採用されて忙しいの。でも楽しいわ。山城や日向、まだまだ不慣れな伊勢たち姉妹と戦えるのが、ね…

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#rsbs日誌　こんこんこん。とノックを幾つか。「扶桑です」『入って参れ』扉越しに、提督の老獪な声が聞こえたした。「失礼します。今月分の水上機の整備報告書と運用報告書をお持ち致しました」「ああ、お疲れ様じゃよ。其処に置いておくれ」提督は、椅子の背中を此方に向けて窓を見て居ました。

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#rsbs日誌　「…？」可笑しいわ。今日の提督、提督で無いみたい…私は報告書を机の上に置いて、呟いたの。「提督…私より、窓の外が御好きかしら」「うんや、そんな事無いのじゃよ」くるり、と椅子を回して此方を向いた提督は…提督では在りませんでした。私は驚くよりも先に、体が動いたの。

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#rsbs日誌　「何奴！提督を何処に連れて行ったの！？」黒塗りの艶やかな長ドスを抜刀し、私は目の前の『何か』へと刃を向けたわ。…だって、其れは、提督の目をしていなかったのだもの。「…っ…ふふふ。あはははは！一発でバレちゃったわ！嗚呼、残念…騙される子を見たかったのに」

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#rsbs日誌　「質問に答えなさい。さもなくばその素っ首、此処で切り落として差し上げます」「あらやだ、扶桑ったら怖い事を言うのね」目の前のソレは、私の突き付ける切っ先を邪魔そうに少し逸らし、楽しげに微笑んで見せたの。「私はあの子よ。そしてあの子は私なのよ。解らなくて？扶桑」

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#rsbs日誌　謎掛けの様な言葉に私は眉を潜めたわ。何を言っているのかしら、コレは…「理解しがたい見たいね。無理も無いかしら。分かりやすく言ってあげましょうか？此の体は、紛う事無くあの子、提督の体で…私はあの子の宿している、艦娘の『船魂』よ」「…二重人格…なの…？」私は驚いたわ…

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#rsbs日誌　だって…艦娘は、艦の記憶と人だった頃の人格上手い事混じり合わさって一つになる物だわ。こんな…こんな風に成るなんて、聞いた事…少なくとも、私は無いわね…「驚かせちゃって御免なさいね？それと、悪意は無いの。良かったら話を聞いてくれないかしら？」仕方無く、刀を納めたわ

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#rsbs日誌　「何から話しましょうかね…そうね。私達のこの人格の事でも話しましょうか？」椅子に腰かけた私は静かにじっと提督の体を奪っているソレを見つめたわ。長ドスも、何時でも抜ける様に膝の上に置いて…「私達はね、交わる筈だったわ。普通の艦娘の様に。だけど出来なかった」

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#rsbs日誌　「あの子、提督の知識が、精神が、余りに大きくて、自己主張が激しくてね。無理だったの。云わば水と油だったのね…でも、嫌いじゃ無かったわ。あの子の世界を見るのって…馬鹿馬鹿しくて可笑しいんだもの」「誉めているのかしら、貶しているのかしら。どちらなの？」

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#rsbs日誌　「勿論誉めて居るわ。それに『私達』は運命共同体だもの。手を取り合いはすれど歪み合う必要は無いわ。あの子は生を欲した。私は刺激が欲しかった。只のそれだけ…」懐かしむ様に微笑むソレは提督の顔なのに、そう見えなくて…私は止めてと言いたくなったわ…酷い違和感なのだもの…

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#rsbs日誌　「所で、扶桑？」「…何かしら」私は努めて、出来るだけ落ち着いた返事をした…「艦娘の人格って、どの様にして定着させて居るか判るかしら？」…何を急に言い出すのかしら。ソレは…「考えた事は無い？今や提督は二百万を超す巨大軍勢で部下たる艦娘は少なくとも二千万近くは居る」

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#rsbs日誌　「無論、艦娘たちには個性があるわ。辛辣な雪風も居ればシャブ漬けの金剛も居る…其れは偶然であったり経験であったり過去であったり出来事であったり生まれであったり…だけども、そう。例えば扶桑、貴方と同じ型の艦娘は誰しも『扶桑』でしょう？レイテを渇望する、弩級戦艦」

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#rsbs日誌　「どんなに個性が在っても、艦娘にはまるで判子を押した様に乱れない『一線』が必ず在る…其れを不思議に思った事は無い？誰が『ソレ』を定めたのか…？」「……其れは、私達艦娘を形作る上で必要なアイデンティティだから…では無くて？」何でこんな問答をして居るのかしら…

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#rsbs日誌　「そう。アイデンティティ…確かに間違いでは無いわ。何故なら其れが無ければ私も、そして貴女達も艦娘として保って居られ無くなってしまうから。其れは枷であり、柵であり、同時に魂を繋ぎ止めるアンカーでもある…でも、その魂は、どうやって見付けた物かしら？」

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#rsbs日誌　「只々過去の出来事だけをなぞっただけでは艦娘の魂は、船魂は生成出来なかった。雪風が何故幸運艦と呼ばれるか…はたまた死神と呼ばれるか…其処に介在するのは『数多の人の意思や感情』と呼ばれる『モノ』なのよ…人在らざるして船魂は在らず…人魂在らざるして船魂は在らず…」

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#rsbs日誌　「人魂…乗組員、の…」「其れだけでは無いわ…家族や、建造に携わったもの。そして守る筈だった何か…云わば、私達は数多の思い出の欠片をかき集めて作られた混沌の権化」「…言われて見れば確かに多少の納得はあるわね…でも、貴女の話す其れの根拠は何処に存在するのかしら」

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#rsbs日誌　「ふふ。聡明な子は好きよ、扶桑？答えはそう。自我次元論と言う物の応用。艦娘は何故頭を吹き飛ばしても平気で居られると思う？それは脳味噌が演算装置の一部でしか無いから。私達艦娘は、体を一つの次元と力場に仕立て、其処に遠い次元の何処かからか『記憶』を読み込んでるの」

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#rsbs日誌　「一度与えられた記憶は永続する…体の細胞一つ一つが、そして自身その物が巨大な記憶保存装置に成っているから。無論、艦娘の作り方なんて其れこそ様々だわ。艤装から記憶を与えられるモノ。疑似人格を無理矢理埋め込む物。聞けば他にも色々あるわね」

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#rsbs日誌　「頭が痛いわ」私は眉間を少し押さえたわ。如何にも突飛に過ぎるもの…「そして此の世界では、遠い次元の彼方から記憶を引きずり出して、神を降ろしているのよ。ねぇ…『扶桑』？」「！？」ズキンとした痛みが、頭に…っ…！古い、記憶…がっ…

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#rsbs日誌　「神様は神様を観測して崇め奉ってくれる存在、つまりは人間が居てこそ存在し得る。私達が態々遠い次元の果てから記憶を引きずり出すのはそう言う為…だけどその人間が、記憶が居なく成ってしまったら？答えは簡単。爆ぜて消えて風に成るのよ…」「ぅ…っ…つ、ぅ…」

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#rsbs日誌　「記憶を思い出すでしょう？『扶桑』。貴女は此の國の別称で在りそして戦艦だった。記憶の濁流は凶悪ね？」な、に…次から、次に…色んな物が…視えて…っ…「だけど…もしその記憶が薄れてしまったりしたら？今度は大変！存在が保てなくなるわ」「あっ…あぁﾞっ…！！」

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#rsbs日誌　こ…呼吸、がっ…から、だ…苦し、っ…ぁ、あっ…！「貴女の『記憶』、少しばかり抜き出させて貰ったわ。思い出す力が失せて、体が崩れ朽ちてしまいそうでしょう…？」「…っ…ぅ…く…！」記憶…進水…改装…レイテ…消え……いや…！みん、な…！「ああああぁっ！！」

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#rsbs日誌　私は…旋風を引きながら抜刀したわ…鋭い一閃が、ソレの首を刎ねたわ…「あらあら…ちょっと悪戯が過ぎたかしら。ご免なさいね？扶桑。でも凄いわね。艦娘として過ごしてきた『記憶』で持ち直すだなんて」「五月蝿いわ！早く消えなさい！」