【邪悪の樹】第一戦闘フェイス――第五の樹

『智の剣』陣営『貪欲』(@ToEvil_yuina) 『理の盃』陣営『不安定』(@Aiyatsbusy
1
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

扉を越えた先。突然に広がった景色に、『貪欲』は目を見開いた。赤、黄色、オレンジ、緑……其処にあったのは、想像したような無骨な戦場などではない。あらゆる花々が咲き乱れ、昇る陽に照らされる、花畑であった。 「此処、は……」 言葉に困る。ゆっくりと瞬きを一度。

2014-08-17 18:54:24
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

ハッと短く吐き出した呼気。此処は何処だ。緩やかに、思考を回し始める。此処は何処だ。覚えもなければ、知るはずもない。初めて見る其処に、『貪欲』はただ一つ。 綺麗な場所だと、そう、思った。

2014-08-17 18:54:37
人間《ディアドラ》 @actSkbz

扉を開けて、葉を踏み締める。──辺りをゆっくりと見回して、小さな吐息。 「……きれい、」 まばたきを、繰り返す。此処は優しい場所だろうか、そうではないだろうか。ゆらゆらと揺れる思考そのままに一歩、また一歩と踏み出す。 ──歩みは遅々としたものだが、確かに進み歩いて。

2014-08-17 19:39:44
人間《ディアドラ》 @actSkbz

初めて見る花ばかりだ。──本当に? 初めて見る光景だ。──本当に? ゆら、ゆらりと思考は揺れる。 「──ゆら、ゆら……」 “いせい”とやらが間違いなくいるのであろう。しかしそれを気に留めた様子もなく、裸足でまた一歩踏み出せば、花畑の中に座り込んで。──ぼう、と、昇る陽を見上げ。

2014-08-17 19:39:46
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「いるのかしら、いないのかしら……戦うのかしら、戦わないのかしら……思い出せるのかしら、思い出せないのかしら──、」 揺れる色とりどりの花に触れて、こてりと首を傾げる。 「ねえ、お花さん。あなたは、“いせい”ってわかるかしら……」 腰より長い真白の髪が吹く風に揺れた。

2014-08-17 19:39:49
人間《ディアドラ》 @actSkbz

決して大きな声とは言えないが、それでも静寂の満ちるこの場においては、そこそこ通ることだろう。 「“いせい”って、なにかしら。“きおく”って、なにかしら……」 つきり、と痛むこめかみを押さえて。揺らめく思考に身を任せながら、花弁を指先で撫でた。

2014-08-17 19:39:52
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

ぼうっと周囲を見渡すだけで動けずにいた『貪欲』の耳に、ふと声が届いた。“いせい”ってなに、“きおく”ってなに——そう何かに問いかける声に、瞼を下ろす。 「——知らねぇよ」 俺は、知らねぇ。興味もねぇ。

2014-08-17 20:17:29
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

何かを振り払うように上げられた瞼。その下から現れた金の瞳は剣のように鋭く、昇る陽を睨みつける。足は声の聞こえた方へと動きだし、花々を踏み荒らすことも厭わない。 そして。 「お前が……俺の、相手か」 花畑の中。座り込む白い背中に、声をかけた。 赤い髪が、風に揺れる。

2014-08-17 20:18:49
人間《ディアドラ》 @actSkbz

──声に、上半身を捻るようにして振り返る。 重たそうなまつ毛がぱしり、ぱしりとまばたきにつられて、揺れて。 「……きれいな、赤、」 自然と零れ落ちた言葉。林檎と同じかしら、違うかしらとひとりごちて、唇がゆっくりと言葉を放つ。 「こんにちは、“いせい”さん」

2014-08-17 20:29:54
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「あなたは、“きおく”がほしい人? お外に出たい人?」 表情はやはり曖昧に、しかし柔らかく。ゆらゆら揺れる思考のまま、言葉を放つ。 「きおくも、お外も、いせいも、わたしはわからないけれど、」 ──わかりたくないのか、どうか。 「ここが、きれいな場所なのは、わたしにも、わかるわ」

2014-08-17 20:29:57
人間《ディアドラ》 @actSkbz

曖昧に揺れる表情が、一瞬、確かに微笑を形作って。 「わたしは、どうしたらいいのかしら。たたかえ、といわれても、わたしは、わかるけれど、わからないの」 視線は手元で揺れる花に戻る。朝露に濡れた花々に、触れて。──ゆら、ゆらりと。白の髪が、また、風に揺れて。

2014-08-17 20:29:59
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

——きれいな、赤? 『貪欲』はその言葉を鼻で笑った。赤の他人が、こんな髪を、綺麗だなどと、よく、言えたものだ。 赤い髪が揺れる。隠された顔の左側。その下の火傷痕が、微かに覗く。眉間に皺が寄り、金の瞳が歪む。右腕が、煌々として炎に包まれる。

2014-08-17 21:00:27
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

ゆらゆらと揺れる白い髪のように揺れる言葉が引っかかる。一瞬の、確かな微笑が引っかかる。それは一体何故なのか。手紙に書かれていた“女”という存在は、そういうものなのか——回りかけた思考を切って。 「随分と、呑気な奴だな、お前」 吐き出されたのは、硬く苛立ちに満ちた声。

2014-08-17 21:00:30
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

「俺は外に出たい。それだけだ。他のことは、記憶だろうが異性だろうが知ったこっちゃねぇ。勿論、お前がどう考えているかなんて知らねぇ——知りたくもねぇ」 白い女の指先が、朝露に濡れる花々に触れている。白い髪が揺れている。『貪欲』はそれを、鼻で笑った。

2014-08-17 21:00:36
人間《ディアドラ》 @actSkbz

つきり、こめかみが痛む。それを払うように頭を振ってから、また視線を“いせい”に戻す。──右腕が、紅い、赤い炎に包まれたのを見て、目を丸くする。 「ああ、」 淡い、零れるような吐息。 「──きれいね」 繰り返す。宿る炎を見て、燃えるような髪色を見て、──金色を見詰めて。

2014-08-17 21:10:02
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「……?」 こてり、と無意識に首を傾げる。何故だろう、前もこんな事を言ったような気がした。わからないような、わかるような──己の性質故だろうか。つきり、またこめかみが痛む。 「呑気、かしら。どうかしら……わからないわ、わたしはずっとこうだから、」 何かを掬うように両手を空に翳し。

2014-08-17 21:10:05
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「──だから、なにか、たいせつなことを、おとしてしまったのかしら」 掬った水を零すように、離す。思考は、ゆらゆらと揺れて、曖昧に揺蕩って。 「ねえ、お外には何があるかしら」 突拍子もなく、雰囲気も考えず、問い掛ける。 「此処みたいな、きれいな場所が、」 ──他にもあるのかしら。

2014-08-17 21:10:07
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

宿る炎。赤い髪。金の瞳。それを見つめる蒼い瞳。きれいね、なんて。その言葉にどうしようもなく叫び出して、喚き散らして、胸を掻き毟り、当たり散らしたくなった。その訳の分からない情動を飲み下し、首を傾げる様を睨みつける。 「呑気だ、お前は。分からねぇのか?俺は、お前を殺しに来たんだぞ」

2014-08-17 21:33:10
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

空に翳される両手。その両手を、燃やしてしまったって良い。燃やしてしまったって良いのに、『貪欲』はそうしなかった。 離される両手。其処から零れ落ちる何かの幻を見たような気がした。 「知らねぇ」 問い掛けを、切り捨てる。 「そんなん、知ったこっちゃねぇ」 ——得られさえ、すれば。

2014-08-17 21:33:15
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「……わかるわ、でも、わからないの」 ふるりと首を振って、真っ直ぐに、──そうすることしか知らないように──金色を見詰める。 「わたしは、あなたとたたかわなきゃいけないのかが、わからないわ」 理屈は分かる。理由が無い。揺らめく思考の中では記憶も、外も、不安定の理由に成り得ない。

2014-08-17 21:57:28
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「“いせい”の人は、──なにが、ほしいの?」 こてり、と首を傾げる。これは、興味だろうか、何だろうか。問うた理由など、すぐに思考の波間に揺蕩い消えてしまう。こめかみは痛む。 「わたしは、あなたを知って、みたいわ」 蒼が細まり、弧を描く。 「わからないから、わかりたいわ」

2014-08-17 21:57:30
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「わたしは、なにもわからないから、ゆらゆらと、ゆらめいて。波間に、溶けてしまうから、」 ──ふと、朝焼けに視線を向ける。 「……わたし、は、」 何かを、見たかったのだろうか。 「わからないわ……」 朝焼けを見ゆる蒼から一滴、落ちた雫は朝露に紛れて消えた。

2014-08-17 21:57:33
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「──ずっと、」 「なににも、気付かず、気付けず、わからないまま、ねむっていて、」 ──ねむって、いて? 良かったのか、悪かったのか。思考はまた靄となり消えて、揺らめき。その先を言葉にする事なく、空へ向けた視線は似た色の金に向けられ。 「あなたには、理由があるのね、」 微笑った。

2014-08-17 21:57:35
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

曖昧に繰り返される言葉。問いかけ。何故戦わなきゃいけないのか、など、『貪欲』には簡単すぎて馬鹿馬鹿しい。『欲しい』からだ。外が、外の世界の全てが。『貪欲』にはそれだけで十分なのだ。分からない、そう何度も重ねられる言葉に、『貪欲』もまた同じように言葉を重ねようとして。 白い女の、

2014-08-17 22:57:56
『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

朝焼けに向けられた蒼い瞳。転がり落ちた雫に。 「…あー、うん、分かった」 右腕の炎を消す。腕を組み、溜息を吐く。頭を支配する苛立ちを振り払うように頭を振って、蒼を見返し。 「聞きたいことがあるなら、もっとハッキリ言ってくれねぇかな。どれにどう答えりゃ良いのか、いまいち分かんねぇ」

2014-08-17 22:57:59
1 ・・ 4 次へ