アーバン・レジェンド・アブナイ #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザッケンナコラー!」危険なヤクザスラングと銃声が廊下で鳴り響く中、パラディンと俺とハッカーは三人掛かりでハックを行った。挿入されたウイルスが既に何枚もファイアウォールを破っていた。廊下のスラッシャーが負傷する頃、俺たちは「カンゼンタイ計画」と呼ばれる圧縮データを抜いた。 24

2014-09-04 00:37:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

直後から敵の攻撃が一層激しくなった。スラッシャーたちはUNIXルーム内に後退し、クローンヤクザたちの銃撃は室内のUNIXにすら跳弾し始めた。ケオスだ。グレネードを投げ込まれればイチモ・ダジーンの恐れがある。「待機せよ!」パラディンがサイバネ装甲を頼みに、廊下に単身突撃した。 25

2014-09-04 00:43:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

自殺行為だと思った。だがパラディンは銃弾を弾き、マズルフラッシュの中で敵を狂ったように斬り殺し続けた。彼は優勢だった。恐るべきカラテだった。「ヤッタ」隣のハッカーが無感情に言った。「ヤッタ」繰り返した。別のスラッシャーも驚きの息を吐いた。そんな中、俺は違和感を感じていた。 26

2014-09-04 00:49:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

あまりにも都合良く運び過ぎているのでは?俺は訝しんだが、次の瞬間には、俺がツイてるからだろうと結論づけた。俺は調子に乗っていたんだ。「撤退!」パラディンはたった一人でクローンヤクザを撃退し、俺たちに指示を出した。俺たちは撤退戦を開始し、地下駐車場へ向かった。敵は少なかった。 27

2014-09-04 00:57:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

地下駐車場へ戻る直前。スモトリとスラッシャーを前衛に押し出した最後の戦闘で、俺は不意に振り返り、それを見た。後衛にはパラディンとシゲオがいて、追撃ヤクザを排除している筈だった。「アイエエエエ!」だが、パラディンはシゲオから不意打ちを喰らい、首筋から火花を散らし絶命していた。 28

2014-09-04 01:05:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

混乱の中でそれを見ていたのは、俺だけだった。俺は戦慄した。車中では、このシゲオが最も信頼でき、最も有能だと思っていたのに、何故。『他に言うな。一人減って取り分が増えたろ。それに、隠してたが』疑問に答えるようにIRCウィスパーがシゲオから届いた。『あのオイランは俺の妹だった』 29

2014-09-04 01:13:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『AYE』どこまで本当か解らないが、俺はIRCで同意した。シゲオは電磁サイバネナイフを仕舞い、再びカスタム・チャカガンに持ち替えて後方へ応戦する。パラディンは先程までの大立ち回りが嘘のように、呆気なく、死体を晒していた。俺はパラディンの持っていたデータケースを拾い上げた。 30 

2014-09-04 01:17:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パラディン、スモトリ、オイランの3人を犠牲者としてあとに残し、俺たちはクルマに辿り着いた。機密データは俺の持つデータケースの中だ。「急げ!」シゲオがリーダー役を務めた。スモトリは大きいので、全員で大型車に乗り込み、残り一台は爆薬を仕掛けて放置した。爆発を背に俺たちは逃げた。 31

2014-09-04 01:22:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

爆発が混乱を引き起こしたのか、追跡の気配は無かった。俺たちは不気味な沈黙を保ったままハイウェイに乗り、クライアントとの報酬受け渡しポイントに急いだ。俺はといえば、ドネートIRCに早々とアクセスし、ミッション報酬額を既に数字だけ入力していた。これで彼女は救われると思った。 32

2014-09-04 01:34:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「パラディンは、どうやられましたか?」スモトリが聞いた。「目玉を撃ち抜かれた。胸がすく思いだろ?」シゲオがハンドルを切った。「ハイ、ファック野郎でした」スモトリが笑った。俺たちは勝利を確信した。だが、全てが間違いだった。『着信ドスエ』データケースの中の通信機が鳴り始めた。 33

2014-09-04 01:39:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「うるせえな。誰か出ろ」シゲオが言う。「電子ロックされてるぜ」とスラッシャー。『着信ドスエ、着信ドスエ』電子マイコ音声が鳴る。「ハッキングで壊せ」シゲオが俺を見た。「いいのか?機密データフロッピーを仕舞った後は、本来、リーダー以外開封厳禁で」「今は俺がリーダーだ」とシゲオ。 34

2014-09-04 01:45:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

俺はLAN直結し、パラディンが施錠したロックを破壊した。車内に焦げ臭い匂いがたちこめた。中には機密データフロッピー数枚、それからクライアントとの非常時用通信機。「ドーモ」シゲオが通信機を取った。「サダイエ=サン?ああ、パラディンの事?あいつは死んだよ。いいリーダーだったが」 35

2014-09-04 01:51:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイ、ハイ……データは無事に盗みましたよ、ドーモ、ハイ、ハイ、ハイ、ドーモ……ハイ……ハイヨロコンデー」シゲオは通信を終えた。「クライアントは、何だって?」誰かが聞いた。「何も」シゲオは肩をすくめた。「報酬を払うから、さっさと予定のポイントに来いとさ。幸い、もう近いがね」 36

2014-09-04 01:54:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なあ、今更だが、俺はちょっと気になった事がある」スラッシャーが壊れたデータケースと通信機を睨みながら言った。「この念の入りよう、クライアントはハナから、パラディン以外の誰も信用してないんじゃねえのか?」「そうかもな」「でも奴は死んじまった」そのような不穏な会話が始まった。 37

2014-09-04 02:06:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「パラディンが死ぬのを他に見た奴は居るか」という話にもなり、俺は凍りついた。だが俺は嘘をつき通した。車内に疑念が満ちた。犯罪者ってのは一度疑い出すと自分以外の誰も信用できなくなる。そこからどう話が転がったか、もう忘れたが、最後には俺がフロッピー内のデータを改める事になった。 38

2014-09-04 02:13:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「完全に契約違反だ。アブナイだ。解っているのか」俺は何度も他の連中にそう確認した。「バレねえよ」シゲオが言った。「俺たち全員が嘘をつき通す限りはな。そうだろ?」「ハイ」ハッカーが同意した。「ハイ」繰り返した。「あの風紀委員は死んだし、誰も言わねえよ」スラッシャーも同意した。 39

2014-09-04 02:17:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

車内でフロッピーを読み取れるのは、俺の埋込型サイバーサングラスだけ。しかも処理速度をブーストするために、生体LAN端子と繋がっている。ウイルス入りなら実際死ぬだろう。だが車内は有無を言わさぬアトモスフィアだ。時間も無い。俺は意を決し、一枚、また一枚、分割データをコピーした。 40

2014-09-04 02:22:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「急げ、合流ポイントが近い」シゲオが急かす。俺は歯を食いしばり、鼻血を垂らしながら論理タイプしていた。「カンゼンタイ計画」と呼ばれる大型ファイルが復元され、俺はそれを実行した。だが、出現したのは最新バイオサイバネ兵器ではなく、タマ・リバーで戯れる愛らしいラッコの映像だった。 41

2014-09-04 02:25:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だこりゃ」俺は動画全体のプレビューを確認した。どこまで進んでも、それはニュースでよく見る、ラッコの記録映像だった。隠し暗号も無い。血の気が引いていった。「何だ、何を見た!」スラッシャーが俺の襟首を掴んで揺らした。俺は叫んだ。「俺たちはハメられた!これはラッコの映像だ!」 42

2014-09-04 02:30:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おい、何がラッコだ、ふざけるんじゃねえぞ……」シゲオが言った。「Uターンしろ!」スラッシャーだけが俺の言葉の意味を理解し、叫んだ。もう合流ポイントである廃工場はすぐそこだった。「Uターンだ!」スラッシャーが銃を突きつけた。「ブッダ……ファック!」シゲオが急カーブを切った。 43

2014-09-04 02:37:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「とにかく合流地点から離れろ!」スラッシャーが銃を仕舞う。同士討ちを避けるためだ。「説明しろよ!」シゲオが叫ぶ。「誰か一人でも社員を殺したか!?」俺はサイバーサングラスを押さえてまくし立てた。皮肉なほどサエていた。「納期間近のプロジェクトが破綻確実なら、どう言い訳する!?」 44

2014-09-04 02:42:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まさか全部茶番?」スモトリが言った。「なら俺たちはこの後どうなるかって話だぜ!」スラッシャーが叫んだ。シゲオが急ブレーキをかけた。「何で止める?シゲオ=サン、てめえ、まさか」「今仲間の数を減らすのは得策じゃねえぞ」シゲオが前方を指差した。ヤクザリムジンが退路を断っていた。 45

2014-09-04 02:53:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ちくしょう、あの娘はどうなるんだよ」俺はぽかんと口を開け、何とも身勝手な事を口走っていた。合流ポイントである廃工場からも別なクルマが発進し、俺たちに向けてライトを投げかけた。俺たちは一致団結し、先に打って出た。負傷しているとはいえ、ハック&スラッシュを行えるだけの戦力だ。 46

2014-09-04 02:59:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

案の定、相手はハナから俺たちを殺す気でかかってきた。スモトリと2人のスラッシャーは、実際心強かった。彼らは先手を打ち、銃弾とサイバネカラテでクローンヤクザを次々と返り討ちにした。重金属酸性雨が降り注ぐ中、俺も滅茶苦茶に叫び、拾ったチャカガンで闇の中に銃弾を撃ち込み続けた。 47

2014-09-04 03:04:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「勝てるぞ!」誰かが叫んだ。「ヨロシサンのクソ野郎め!完全なルール違反だ!H&Sネットワークに今回の件をタレ込んで……」そこで突然、この世のものとは思えないカラテシャウトが響き渡った。「イヤーッ!」「アバーッ!」一発で、スモトリの巨体が弾き飛ばされ、クルマに叩き付けられた。 48

2014-09-04 03:10:00