アーバン・レジェンド・アブナイ #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それは困りますねえ、先にルール違反でパラディンを殺したのは、あなた方なのに」その人影は言った。「敵のサイバネ野郎か!」シゲオが銃を連射した。「イヤーッ!」だがそいつは目にも止まらぬ連続側転で銃弾を回避し、クルマの上に着地した。ヤクザリムジンのライトがそいつを照らしていた。 49

2014-09-04 03:15:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、シケイダーです」そいつはニンジャ……紛れもなく、緑ニンジャ装束に身を包んだ……ニンジャだった!しかも頭部はセミめいたバイオ異形!「アイエエエエエエエエエ!」俺は叫び、失禁した!「せめてもの償いに、あなた方は私の戦闘データ収集に役立ちなさい」そして、殺戮が始まった。 50

2014-09-04 03:21:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャは銃弾をジャンプでかわすと、スラッシャーに飛び掛かった。「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」…重サイバネ強化されているスラッシャーが、カラテパンチとキックだけで、一方的に押されているようだった。俺は叫び声を上げてグルグル走り回った。 51

2014-09-04 14:20:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

まるで手が出なかった。赤子と大人の戦いを見ているようだった。ベイビー・サブミッションだ。「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」血飛沫と悲鳴。ニンジャは俺たちを嘲笑うかのように、カラテで殴りつけ、蹴りつけた。「手加減していますよ、戦闘データのためにね!」 52

2014-09-04 14:25:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

もう記憶が曖昧だ。ハッカーの脚にはスリケンが刺さり、血を流していた。俺の腕にも刺さっていた。シゲオが最後の切り札である電磁サイバネナイフを投擲した。だがニンジャは連続バック転で回避した。「あなた方は死んで当然の下等存在です。イヤーッ!」次の瞬間、凄まじい超音波が発せられた。 53

2014-09-04 14:34:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

悪夢だ。騒音と超音波で頭の内側をシェイクされているようだった。俺は咄嗟にサイバネ耳管を制御し、閾値を切った。他の者は無理だった。「アーッ!アーーーッ!アイエエエエエエ!」シゲオが耳を押さえ苦しんだ。「アッ!頭!頭が!アイエエエエエエエエ!」屈強なスモトリも前後不覚に陥った。 54

2014-09-04 14:40:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あなたには効かなかったようだ」俺の眼前に、ニンジャ覆面と頭巾、そしてセミめいた顔が近づいた。それは俺の襟首を掴み、質問していた。「アイエエエエエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!?」「サイバネですか?効かないのは心外です」「アイエエエエエエエエ!」「次は至近距離で試します」 55

2014-09-04 14:47:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエエ!ナンデ!」「何故?あなた方を殺すのが私の存在理由です」ニンジャは笑った。「そして私は、殺しが大好きなんです」セミめいた目からは何も読み取れない。俺は周囲を見た。皆、死んでいた。恐怖と苦痛で意識が途切れかけた。何かに祈ろうと思ったが、祈る神も特に無かった。 56

2014-09-04 14:56:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

俺は失禁した。ニンジャに殺されるんだと思った。すると、物心ついてからそれまで、ずっと遠くにいって乖離していた現実感が、不意に俺と重なった。ソーマト・リコールもあった。俺は不意に怒り狂い、何か叫んで暴れた。そこから先は……駄目だ……思い出せない。 57

2014-09-04 15:07:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「思い出せないだと?」ヤマヒロが言った。掌はじっとり汗ばんでいた。「CDが音飛びするみたいに、記憶が飛ぶんだ」イシカワは憔悴していた。「次に気がついた時、俺はぽかんと突っ立っていた。死の静寂だった。俺は離れていても心音を把握できる。全員死んでいた。ニンジャもヤクザもだ」 58

2014-09-04 15:13:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャまで?」ヤマヒロはごくりと唾を呑んだ。「焼け焦げたセミめいた死体の一部が、仰向けに転がっていた」「誰が殺った。スラッシャーが一矢報いたってのか?それとも……誰かが、助けに来たのか?」「誰かが……ウッ!」イシカワは記憶を掘り起こそうとし、フラッシュバック光景を見た。 59

2014-09-04 15:18:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウウーッ!」……まるで水の中にいるように、全てがスローモーション光景で蘇った。あの時……暴れるイシカワをシケイダーは殴りつけ……その直後に……イシカワから目をそらし別の方向を見た。そして叫んだ。(((まさか……貴様は……!)))そして彼をコンクリート地面に……放り捨てた。 60

2014-09-04 15:24:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……駄目だ、思い出せない!今まで思い出そうともしなかった。全て、俺の妄想だと思っていたんだ。あのニンジャの死体も、何もかも、実際全部が!」イシカワは顔を青ざめさせ、震えた。「解った、兄弟、落ち着け、落ち着け」ヤマヒロが肩を押さえた。人目を引くのはアブナイだ。「深呼吸しろ」 61

2014-09-04 15:28:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……俺は夢かと思っていた。だが、腕に刺さったスリケンの痛みが、俺を現実に繋ぎ止めた。シケイダーが投擲したスリケンだ。だが今となっては、スリケンの事も現実だったかどうか怪しい。どこかで抜いて捨てたか、それともマッポが抜いたか……いずれにせよ、どこかでスリケンは無くなっていた。 62

2014-09-04 15:32:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

記憶は混乱してる。俺はFBI検死官みたいに、全員の死因を律儀に調べたわけじゃない。そんな事をしてる余裕がどこにある。辺りは真っ暗で、周囲の心音はゼロ。俺だけ生き残った。それだけで十分だ。奴らのクルマの一台が、まだ生きていた。俺はそれを飛ばした。とにかくそこから離れたかった。 63

2014-09-04 15:37:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

どれだけ走ったか解らない。俺は運転に失敗し、どこかの電柱に激突してクルマは動かなくなった。走って逃げようとした時、助手席にアタッシェケースを見つけた。俺はそれを開けた。中にはかなりの額の万札とマネー素子が入っていた。恐らく、俺たちを騙すための見せガネか何かだったんだろう。 64

2014-09-04 15:41:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

俺はニンジャの追跡に怯えていた。きっとニンジャが追いかけてきて、俺をカラテで追いつめ殺す。どこへ逃げても現れる。ベッドの下、灯籠の影、あるいはタンスの中から飛び出してきて、俺を殺すだろうと。だから死ぬ準備をした。マネー素子をロンダリングした後、あの娘に最後のドネートをした。 65

2014-09-04 15:45:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

不思議な気分だった。優越感でも充足感でもない。これまでのUNIX的な達成感とも違う。ただ、この世界で為されるべき事が、ひとつだけ、為されたような……結局はそれも自己満足か。何にせよ、俺は狂っているのかもしれないと思った。ニンジャだなんて。俺はふらふらと彷徨い、自首していた。 66

2014-09-04 15:51:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「それで話は終わりか、イシカワ=サン?」「ああ、それで終わりだ。もうそれからはニンジャも見ていない。暗黒メガコーポの刺客が、塀の中まで俺を殺しにくるんじゃないかと怯えた事もあったが、今じゃもう……どこからどこまで妄想か解らない。でもあの日のスリケンの痛みが、時折、蘇る」 67

2014-09-04 15:56:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「安心しろ、お前は狂っちゃいねえよ」その言葉を聞くと、イシカワは力無く微笑んだ。「ヤマヒロ=サン、あんたは何を見たんだい」「俺か?俺は天……そうだな、いいか、これから話すのは、にわかには信じがた」『自由時間、あと5分、ドスエ。シマッテー』監視塔から無表情な電子音声が流れた。 68

2014-09-04 16:03:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……プリズン生活は長いぜ。また次の機会にな」ヤマヒロが大時計を見た。「ああ、話せて良かった。俺もようやく苦しみから解放…」その時、イシカワは何か不吉な視線を感じ、グラウンドから屋内に戻る囚人たちの群を見た。その中に一人、立ち止まり、彼を睨む男が居た。傷だらけの顔。青い目。 69

2014-09-04 16:11:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエエエエ!」イシカワは腰を抜かしブザマに後ずさった。いくらかの囚人が彼を見た。「おい、どうした」ヤマヒロが血相を変え屈み込んだ。「シ、シゲオが、見ていた」「死んだスラッシャーか?どこに」イシカワが指し示したが、もうその男は他の囚人たちの影で見えなくなっていた。 70

2014-09-04 16:18:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どいつだ」「……い、居なくなった」イシカワは胸を押さえて深呼吸した。「悪い、見間違いだったかも」「そりゃそうだ。シゲオは死んでたんだろ?」「ああ、死んだ。もしかして幻覚か、それとも、オバケ…」「兄弟、立てよ」ヤマヒロは手を差し伸べ、助け起こした。「オバケなんざ存在しねえ」 71

2014-09-04 16:24:07