【第二部-弐拾五】穢れと祓いと五月雨と夕張 #見つめる時雨

第二部、完 夕張,五月雨,由良
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夕張視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「軽巡夕張、ただいま参りました」 提督に呼び出しを受け、提督室の扉を開ける。するとそこには扶桑さんも提督と一緒にいた。そういえば今日の秘書艦は扶桑さん…だったっけ?村雨ちゃんだったような気もするけど。その村雨ちゃんはいないし、それに私に話って何だろう。五月雨ちゃんの件かな…。

2014-09-03 22:35:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「急にごめんなさいね。そこに座って」 提督に促され、部屋の中央にあるソファーに座る。そして提督も私の向かい側に座った。何やらファイルを手にもっている。やっぱり五月雨ちゃんの件らしい。 「それで、貴女に折り入って相談があるのだけれど…」

2014-09-03 22:40:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…五月雨ちゃんの件ですよね?」 「…そうよ。まず、五月雨ちゃんの身に何が起こっているのか、一から説明させてもらうわね」 …私は面食らった。私は"停止"の現象について詳しくわかったのだろう、それくらいを想像していた。しかし、それはもっと艦娘そのものに関わるものだった。

2014-09-03 22:45:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

深海棲艦と接触する度に、艦娘は"穢れ"を取り込んでいる。それは少しづつ身体に蓄積していき、そのままにしておくと重篤な状態になるという。五月雨ちゃんも度重なる出撃で多くの穢れを吸収し、更に過去の記憶による負荷がそれに拍車をかけた。そう提督は話す。

2014-09-03 22:50:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

そして"停止"はその最終段階に起きると考えられていて、五月雨ちゃんは一度その段階までいったが、また戻ってこれたということらしい。しかし予断は許さない状況で、早く穢れを"祓う"必要があるとのことだった。 「…でも待ってください。なら、どうして私達は何ともないんですか?」

2014-09-03 22:55:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…貴女も艦隊の艦娘達も、みんな深海棲艦から穢れは受けているの。でも、艦娘にはそれをある程度自力で祓う力があるのよ」 「つまり、五月雨ちゃんは自力で祓えない量の穢れが蓄積してしまっているということですか?」 「…いいえ、少し違うわ」

2014-09-03 23:00:39
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「確かに蓄積はしてしまっているのだけれど、自力で祓えないわけではないのよ。でも、それが不十分なだけ」 「え…?どういうことですか?」 「…多分、貴女も自分で祓ってるのだと思うのだけど、五月雨はそれをしたことがないのでしょうね」 んー…?私、そんなことしてるっけ…?

2014-09-03 23:05:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…まず、貴女達艦娘が深海棲艦を鎮められる理由から。何で艦娘の艤装による攻撃が深海棲艦に致命傷を負わせることができるのか。それは艦娘には祓いの力があり、それが艤装による攻撃を通じて深海棲艦に作用してるからと考えられている。ここはいいわね」 「はい」

2014-09-03 23:10:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「でも実はこの祓いの力は常時発生しているわけではなくて、艦娘の交感神経が優位になったときに発生しているの。メカニズムはまだよくわかってないんだけどね」 「要するに、高揚してると発生するってことですか?」 「…そうよ」

2014-09-03 23:15:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ふぅん…全然意識してなかったけど、確かに戦ってる最中はいやでも交感神経は優位になるわね、そりゃ。それが深海棲艦を倒すことに繋がってたなんて考えもしなかったけど。あれ?でも、艤装を通じて祓えるのはいいとして、自分が被った"穢れ"っていうのはどうしてるのかしら?

2014-09-03 23:20:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「疑問を感じてる顔してるわね、夕張。艦娘が自分を"祓う"にはどうすればいいか。これから説明します」 提督がふぅ、と一息つく。私も少し頭を整理しないと。そんな時、扶桑さんがお茶を持ってきてくれた。そういえば、ちょうど喉が乾いてきたところだった。扶桑さんの気遣いが嬉しい。

2014-09-03 23:25:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「夕張は、人体については大体わかる?」 「はい?ええ、多少は」 艤装を調整する上で、装着する艦娘の知識もないといけないなと思って、艦娘についての文献は資料不足だったので取り敢えず人体の参考書を読み漁った時期があった。専門家とまではいかないけど、多少の知識はあるつもり。

2014-09-03 23:30:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「それなら話は早いわ。艦娘は交感神経が優位になったとき、"祓い"の力を生み出す。それは艤装に作用するだけではなくて、体の一部の外分泌腺から出る分泌液にも含まれていたのよ」 「え、外分泌腺…ですか?」 外分泌腺…。汗腺とか?汗にでも含まれてるのかしら。

2014-09-03 23:35:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「え、ええ…。それは腺で作られて、分泌されたらそのまま粘膜から吸収してるみたいなの。あと、唾液にも少量含まれてるみたい」 「だ…唾液ですか?」 「そう。ただし、交感神経優位時の粘り気のあるやつね」 「は、はぁ…」

2014-09-03 23:40:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

何だか話が妙な方向へ行っているような…。粘膜に近い位置にある外分泌腺…?汗腺じゃなさそうだけど。 「それで、外分泌腺ってどこなんですか?」 「…それは」 提督が何かを言いよどむ。急にどうしたんだろう。…腺。私は知識の引き出しを開けながらお茶に口をつけた。ん…美味しい。

2014-09-03 23:45:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…バルトリン腺です」 へー、バルトリン腺…。それってどこだっけ…。あれ…?はあっ!? 「だ、大丈夫…?」 むせた私の背中を扶桑さんが撫でてくれる。私は胸を叩きながら、必死に呼吸を整えた。

2014-09-03 23:50:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…察してくれたかしら。どうして貴女達が何ともなくて、五月雨が危うい理由…」 提督が視線を横に逸らせながら言う。私も目を合わせるのは若干憚られた…。あー…、何…この…。というか、五月雨ちゃん、したことないんだ…。そうなんだ…。あはは…。何かもう、空笑いしか出てこない。

2014-09-03 23:55:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…ねぇ、夕張。貴女にメンタルケアをお願いしたとき、その…五月雨にそういう事してない?」 「はっ!?そっ、そんなことしてません!抱き締めてあげたり、おでこにキスくらいしか…」 「んー…。夕張、聞いて。多分ね、それで助かったのよ」 「…へ!?」

2014-09-04 00:00:38
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…そのことについてこれ以上言うのはやめておくわ。でもね、ひとつ貴女にお願いがあるの」 それで五月雨ちゃんが助かった…?抱き締めて、おでこにキスしたことで?え…それってつまり、五月雨ちゃん…私に…。 「夕張、しっかりして」 「…ふぇ!?あ、だ…大丈夫です…」

2014-09-04 00:05:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…いいかしら?」 「は、はい…私にお願いって何でしょう…」 「…五月雨に教えてあげて。手段は貴女に任せるから」 …え?――

2014-09-04 00:10:21

※R-15

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

療養室の扉を開ける。五月雨ちゃんはベッドを少し起こした状態で目を閉じていた。私は枕元に座椅子を置き、そこに腰を下ろす。…心臓の音が私の全身で反響している。顔が熱くなっているのが自分でもわかる。意を決してここに来たはずなのに、どうしよう、手の震えが止まらない。

2014-09-06 22:55:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…夕張さん?」 …五月雨ちゃんが目を開けた。彼女は傍に来たのが私だとわかると、柔らかな笑顔を見せてくれた。…ああ、これから五月雨ちゃんにしようとしていることを考えると、この笑顔が心に刺さる。五月雨ちゃんの為とはいえ、私はこんな風に笑うコに、何てことを…。

2014-09-06 23:01:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

五月雨ちゃんは、何か言いたげな顔をしてるであろう私を見て、少し不思議そうな顔をしていた。私は、そんな五月雨ちゃんの前髪を指で撫でた。少しくすぐったそう。…このまま黙っていたら、五月雨ちゃんを不安にさせてしまう。私は…。 「その…五月雨ちゃん、聞いて欲しいことがあるの」

2014-09-06 23:05:20