茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1317回【金接ぎを名残りにつかうこと】連続ツイート
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白洲信哉(@ssbasara)編集長のもと、『目の眼』 menomeonline.com で骨董の勉強をさせていただいてよかったのは、いくつかの素敵なメタファーを学んだことである。「金接ぎ」もそのひとつで、知ればしるほど、不完全なものの中にこそ生命を見る哲学がある。
2014-09-07 08:47:26多様性は、日本の美意識の根幹にある。ヨーロッパでは宴につかわれる食器は統一されたモチーフが基本だが、日本では、さまざまな意匠のものが混在する。そして、その中で、一度は割れてしまった陶器を金で継いだ、いわばツギハギの食器が、大切な意味を持つ。
2014-09-07 08:48:50「よび接ぎ」というものまである。バラバラの破片として見つかった、もともとは異なる焼き物を、金でうまく継いで、一つの器としたもの。しかも、そのような器が、欠けるところのない完全な器に比べて評価が低いかというと、そうではなくて、むしろ一つの景色として珍重される。
2014-09-07 08:49:59「金接ぎ」は、人生のメタファーでもあるだろう。人間というものは、生きているうちに、割れることもあるし、どこかが欠けることもある。それでダメになるわけじゃなくて、うまく接げば、かえって、以前よりも味が増すこともある。失敗とか、転ぶことは恐れなくてもいい。接げばいいのだ。
2014-09-07 08:50:56現在発売中の『目の眼』10月号 archive.menomeonline.com/Backnmber01/me… の取材で、すてきな考え方に出会った。お茶席では、秋になると、「名残り」で、金接ぎをした器をつかうという考え方があるというのである。
2014-09-07 08:52:36秋が深まり、紅葉がきれいになり(つまりは、葉っぱの生命が尽きつつあり)、さまざまな生命が、次の春になって蘇生するまでの、いったんの終わりを迎えるその時期に、欠けたり割れたりしたものを接いだ器を使うというお茶席の考え方は、とても素敵だなあと思う。
2014-09-07 08:53:57「金接ぎ」に限らず、日本の文化的伝統の中で脈々と受け継がれてきたことの中には、私たちが生きる上で助けになってくれる哲学が、ずいぶんあるように思う。大自然が「名残り」を迎えようとする季節の入り口に、そんなことを思い出していた。
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