タイムスクープハンター code:864192 「抜錨せよ!カレーおつかい奮闘記」 2

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伊月遊 @ituki_yu

飛鷹「じゃあいい?位置について、よーい・・・」 どん!というかけ声と共に駆け出す二人。 先手を取ったのは・・・。 隼鷹「はっや!」 島風である。 圧倒的なスピードで走り続ける島風、菊月との距離が徐々に離れていく。

2013-11-27 23:38:19
伊月遊 @ituki_yu

障害物の飛び台、これも難なくジャンプする。 結果、勝負は島風の圧勝で終わった。 菊月「まっ、負けた・・・圧倒的に・・・」 がっくりとうなだれる菊月、それに近寄る島風。 島風「ふっふっふー。残念でしたー」 菊月「・・・すっ」 島風「え?なに、何だって?」

2013-11-27 23:40:58
伊月遊 @ituki_yu

菊月「すっ、すっ・・・凄いっ!!」 島風「!?」 がばりと立ち上がり、島風の肩を掴みながらガクガク揺らす菊月。戸惑う島風。 菊月「凄い!凄いぞお前!なんだあれ、冗談みたいなスピードだ!」 島風「ちょっ、ちょっと!なにいきなり!」

2013-11-27 23:42:53
伊月遊 @ituki_yu

菊月「なあ、何故そんなスピードで走れるんだ!頼む、私に教えてくれ!」 島風「そ、それは特注のタービンが・・・あ、あと走り方とかも・・・」 菊月「走り方!それか!それなんだな!教えろ!いや、教えてくれないか師匠!」 島風「ええー!?しっ、師匠ー!?」

2013-11-27 23:45:42
伊月遊 @ituki_yu

いきなりの物言いに思わず叫ぶ島風。その島風に、菊月はしがみつくように肩を抱く。 菊月「たのむー!師匠!お願いだ!」 島風「ああもう、なんなのこの娘!ちょっ、ちょっと!アンタ達、見てないで助けてよー!」

2013-11-27 23:48:37
伊月遊 @ituki_yu

那珂「あー・・・菊月ちゃん、完全にスイッチ入っちゃってる。こうなると落ち着くの待つしか無いよー。ご愁傷様ー」 島風「そっ、そんなあ!」 菊月「たのむー!」 島風「離しなさいよー!やだー!」 しがみつく菊月とそれを引きはがそうとする島風。

2013-11-27 23:51:42
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹「・・・すげえんだなあ、あいつ」 ぽつりと呟く隼鷹。 飛鷹「ええ」 飛鷹は微笑みながら頷いた。

2013-11-27 23:53:51

 
 
 
 

伊月遊 @ituki_yu

  突然のチーム編成から一週間が経とうとしていた。 初めは心を開かない島風であったが、何度も訓練を共に行っていく内に、徐々にチームの面々と仲間として打ち解け始めていった。 選抜試験まであと残り一週間を切り、彼女らの士気も上がってきた。 そんな時、この事件が起きたのである。

2013-11-27 23:58:04
伊月遊 @ituki_yu

この日は雨であった。 雨粒が窓を叩き、空を濡らしている。 それを窓際で見上げるように、島風は頬杖を付いていた。 島風「あーあ、雨かー。こんなんじゃ走れないよ、つまんなーい」 那珂「まあ良いじゃない。たまには休みも必要よ」 菊月「そうだぞ師匠、戦士にとっては休養も大切な任務だ」

2013-11-28 00:01:38
伊月遊 @ituki_yu

島風「だからその師匠ーっての止めてくんないかな・・・」 腕を組みながらうんうん頷く菊月を見ながら、島風は小さくため息をつく。 鎮守府の一室、那珂と菊月の相部屋に島風は居た。 自室で暇そうにしている島風を、菊月が無理やり引っ張ってきたのだ。

2013-11-28 00:04:21
伊月遊 @ituki_yu

初めは抵抗した島風であったが強情な菊月にとうとう根負けし、部屋までやってきた。 那珂は少しだけ驚いたが、すぐに「いやー、懐かれてるねぇ」と表情を崩し、彼女を部屋に招き入れる。 それから一時間。特に何もするでもなく、彼女たちはだらだらと過ごしていた。

2013-11-28 00:06:55
伊月遊 @ituki_yu

沢嶋「あのー、皆さん仕事とか、無いんですか?」 那珂「ああ、あなた居たんだ。無いわよー、今日は非番。っていっても補欠組には大して仕事も無いんだけどねー」 菊月「同じく」

2013-11-28 00:09:08
伊月遊 @ituki_yu

彼女たち補欠組の仕事は主に雑用である。 といっても炊事洗濯などは専用の職員が居るため、彼女たちがやることは少ない。せいぜいが鎮守府の警備や資材運搬などだろうか。 そのため、何時でも戦闘員として補充ができるよう、彼女たちの仕事は基本的に訓練することである。

2013-11-28 00:12:01
伊月遊 @ituki_yu

しかし雨の日は基本的に合同訓練等は存在しない。そのため雨の日の補欠組は、各々自由な事をして過ごすのである。 と、扉を開く音。見ると隼鷹と飛鷹が顔を覗かせている。 隼鷹「うーっす」 飛鷹「こんにちわ。あら、みんな居るわね」 菊月「おや、どうしたんだ」

2013-11-28 00:16:03
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹「いやぁー、暇でさぁ。なんか面白いこと無いかなーって。あ、これおみやげ」 適当に座りながら床にかごを置く隼鷹、中には沢山のクッキーが。 那珂「わあっ!これ隼鷹が作ったの?」 隼鷹「んにゃ、調理場で大潮から貰ったんだよー。作りすぎたって。みんなやることねえんだなあ、あはは」

2013-11-28 00:20:03
伊月遊 @ituki_yu

菊月「うむ、美味いな」 島風「ほんとほんと、これ凄い美味しい!ほら、あんたも食べてみなさいよ」 沢嶋「え、私もですか?では失礼して・・・あ、美味しいですね」 暫しクッキーを囲んで談笑する彼女たち。 隼鷹「それにしても良いのかねえ、こんなだらだらしててさ。今週末には選抜だろ?」

2013-11-28 00:23:50
伊月遊 @ituki_yu

飛鷹「まあ、たまには良いんじゃない?ここ最近頑張ったもの、雨の日くらい休みましょうよ」 言いながら飛鷹は紅茶を口に付ける。 金剛「そうデース。このくらいの休憩はむしろteam workを高める良い機会デース」 飛鷹「ぷふぅーーー!」 隼鷹「うわっ、汚っ!?」

2013-11-28 00:27:53
伊月遊 @ituki_yu

思わずお茶を吹き出す飛鷹。それを見て金剛は不思議そうに頭を傾ける。 金剛「おや飛鷹サン、どうしたんデース?」 飛鷹「ゲホッ、ゴホッ!どっ・・・どうしたじゃ無いですよ!だからいきなり現れないで下さいって、金剛さん!」

2013-11-28 00:31:22
伊月遊 @ituki_yu

せき込みながら涙を浮かべて叫ぶ飛鷹に、金剛は仁王立ちで不敵に笑う。 金剛「フフーフ。私はどこにでも居るしどこにでも居ないのデース。あ、紅茶頂きマース」 飛鷹「ほんとにこの人は・・・」 那珂「ところでどうしたんですか?任務とか大丈夫ですか」

2013-11-28 00:34:37
伊月遊 @ituki_yu

金剛「今日は非番デース。それよりあなた達、随分仲良くなりましたネー。もう立派なteamだワ」 と、島風を見てにやりと笑う金剛。 島風はムッと金剛を睨む。 島風「むぅ!なっ、なによ!私はまだこんなノロマばっかりの奴ら、チームだなんて・・・」

2013-11-28 00:38:02
伊月遊 @ituki_yu

金剛「フフーフ。だいじょぶだいじょぶ問題なしデース。お姉さんは分かってマスよー」 島風「むぅぅ!なによそれ、ムッカつく!」 騒ぐ島風を片手でいなしながら、金剛は部屋に居る他の艦娘達に顔を向ける。

2013-11-28 00:41:14
伊月遊 @ituki_yu

金剛「あなた達もありがとうネー。いやぁ、ほらこの子、性格アレでしょ?みんなと仲良くやれるか不安だったのヨー、あっはっは」 隼鷹「金剛さん、本人前にしてそういう事はちょっと・・・」 島風「アレってなによー!アレってー!」 金剛「まあまあ。褒め言葉デース」 島風「一切褒めてないー!」

2013-11-28 00:44:46
伊月遊 @ituki_yu

金剛「フフーフ。でも良かったデース。島風サン、たくさん友達出来て良かったネ!」 金剛の何気ない言葉。それを聞いた瞬間、島風の動きがピタリと止まる。 いきなりの事に部屋に居た艦娘達は不思議そうに島風の顔を覗き込む。しかし、飛鷹と金剛だけは他の艦娘とは異なる表情を浮べていた。

2013-11-28 00:49:16
伊月遊 @ituki_yu

金剛はハッと口を押さえ、飛鷹は困ったように頭に手をやっている。 一秒ほどの間。 顔を上げる島風。 泣いていた。 目元に涙を浮かべ、顔を真っ赤にして、肩を震わせて。

2013-11-28 00:53:49