タイムスクープハンター code:864192 「抜錨せよ!カレーおつかい奮闘記」 2

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伊月遊 @ituki_yu

島風「ッッッ!と・・・友達なんて、要らないわよ!バカーーー!」 隼鷹「あっ、おい!」 そのまま島風は部屋のドアを乱暴に開けると、止める間も無く外へと飛び出していった。 止めようと伸ばした手が空を切り、そのまま頭を掻く隼鷹。 隼鷹「ったく。何なんだよ、一体・・・」

2013-11-28 00:56:59
伊月遊 @ituki_yu

沢嶋「えー、こちら沢嶋。モスキートカメラの使用許可をお願いします」 古橋(了解です) 私は彼女の様子をモスキートカメラの映像で追うことにした。見つかるまで少しの時間が掛かるだろう。

2013-11-28 01:00:37
伊月遊 @ituki_yu

飛鷹「ちょっと、金剛さん!」 不思議そうにする隼鷹と対照的に、金剛に向かって怒鳴る飛鷹。金剛は両手を合わせて謝る。 金剛「sorry、ちょっと口が滑ったワ・・・」 飛鷹「どうします?島風、行っちゃいましたよ?」 金剛「ムゥ・・・」

2013-11-28 01:03:28
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹「まあ、とりあえずそれは置いといてだな」 と後ろから飛鷹の肩をポンと叩いたのは隼鷹だ。 飛鷹が振り返ると、そこには依然不思議そうにしている艦娘達の姿があった。 隼鷹「そろそろ話してくれても良いんじゃないか?あいつの事をよ」 飛鷹「な、なんのこと?」

2013-11-28 01:05:57
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹「とぼけんなよ。どんだけアタシがお前と長い付き合いだと思うんだ?お前がここ一週間、ずっと妙な態度だったのは分かってるよ」 飛鷹「うっ・・・」 菊月「え、なに、なんのことだ?」 飛鷹はちらりと金剛を見る。 小さくため息をつく金剛。

2013-11-28 01:08:57
伊月遊 @ituki_yu

金剛「・・・もっと後で話そうと思ってたんだけど、仕方ないネー」 隼鷹「話ってのは、あいつの事か?」 言いながら隼鷹は開いたままの扉をちらりと見る。 金剛は「ええ」と頷いた。 金剛「実はね、あの子、島風サンなんだけど・・・」

2013-11-28 01:13:10
伊月遊 @ituki_yu

ピリリリリリ! 突然の電子音。一斉に集まる視線。 視線の先には私が居た。正確には、私の手首に巻いた腕時計型の通信機に、である。 沢嶋「すっ、すいません。私です」 隼鷹「・・・分かってるって」 沢嶋「すいません、ちょっと失礼します。えー、こちら沢嶋、どうしましたか?」

2013-11-28 01:15:36
伊月遊 @ituki_yu

古橋(お取り込み中すいません。沢嶋さん、島風ちゃんの居場所が分かりました) 沢嶋「了解です。すぐに向かいます。・・・えー、という事なのですいません、私はちょっと島風さんの方に行かせて頂きます」 隼鷹「・・・お、おう。行けば?」 沢嶋「あ、じゃあちょっと失礼します」

2013-11-28 01:18:11
伊月遊 @ituki_yu

私は緊急性を考え、島風の後を追うことにした。私は急いで部屋から出る。 隼鷹「・・・なんだったんだあいつ。ていうか誰だあいつ」 那珂「さあ・・・?そんな事より、島風ちゃんの話ってなんですか?金剛さん」 金剛「ええ、実はね・・・」

2013-11-28 01:21:33

 
 
 
 

伊月遊 @ituki_yu

   モスキートカメラの映像を元に、私は島風の追跡を行っていた。 ・・・居た。島風だ。 資材置き場だろうか?薄暗い部屋の隅にぬいぐるみを抱えてうずくまり、何かを呟いている。 何を呟いているのだろうか?ちょっと近付いてみよう。

2013-11-28 01:25:25
伊月遊 @ituki_yu

島風「・・・友達なんて、友達なんて・・・要らないわよ、バカ・・・。友達なんて作っても、またあんな事になるだけよ・・・」 何か深い事情があるようだ。思い切って私は事情を訪ねることにした。 沢嶋「あのー、ちょっとよろしいですか」 島風「お゛ぅっ!?な、なんで居るの!?」

2013-11-28 01:29:05
伊月遊 @ituki_yu

沢嶋「ああいえ、別に怪しい者では」 島風「十分怪しいわよ!ていうか何!その青い全身タイツみたいなの何!」 沢嶋「ああ、これはその」 島風「ていうかそうよ!あんたよくよく考えたら誰なのよ!」 沢嶋「いえ、その」 (タイムスクープハンター規定第17条による、特殊な交渉術を使用中)

2013-11-28 01:32:45
伊月遊 @ituki_yu

  躊躇うように押し黙り、それから暫く経ってから、彼女はぽつりぽつりと話し始める。 島風「・・・昔ね、友達が一人居たの」 ーーー友達? 島風「そう。でね・・・その子、一緒に終戦まで戦おうね、って、約束だ、って。あの子、このぬいぐるみをね、くれたの。約束の証だって」

2013-11-28 01:36:29
伊月遊 @ituki_yu

島風「手先がね、器用で、ぬいぐるみとか良く作ってたから」 ーーーその友達は今どこに? 島風「・・・あの子ね、私を庇って、ね。・・・死んじゃった。私、ね。なんでそんなことって、聞いたら、友達だから、って、笑ってて、最期まで、それで・・・」

2013-11-28 01:41:45
伊月遊 @ituki_yu

島風は目元に涙を浮かべる。 ぬいぐるみを掴む手が強張り、震える。 ーーー辛いことを聞いてしまってすいません。 島風「ううん、良いの。でもあなたって不思議ね、今まで誰にもこんな話、したことなかったのに・・・」 涙目で少し笑って、それきり彼女は黙ってしまった。

2013-11-28 01:43:54
伊月遊 @ituki_yu

バターン! 金剛「そこまでデース!」 島風「っ!?」 いきなりの事であった。 唐突に大きな音を立て、部屋の扉が開け放たれたのだ。 そのままぞろぞろと部屋に入ってくる複数の人影。金剛を始めとした、島風と同じチームの面々である。

2013-11-28 01:46:40
伊月遊 @ituki_yu

島風「どっ、どうしてここが・・・?」 戸惑う表情の島風。その彼女に金剛はにやりと笑った。 金剛「フフーフー、それはですネー」 那珂「普通に探し回っただけだよ」 菊月「そうそう」 金剛「oh!言っちゃ駄目デース!・・・さて」 大きく咳をして、それから金剛は島風の方を向く。

2013-11-28 01:50:15
伊月遊 @ituki_yu

金剛「島風サン。話したわよ、あなたの事。あなたのお友達の事も、その後の事も、ね」 島風「え!?・・・余計なマネをっ・・・!」 金剛の言葉に、島風は歯ぎしりして悔しそうに拳を握りしめる。 その島風の前にずいと出る一人の艦娘。隼鷹だ。

2013-11-28 01:54:01
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹「なあ、島風さ。もう良いんだぜ」 島風「なっ、何がよ・・・」 隼鷹「例の事件があった後、お前はお前でかなりの深手だったそうだな、5ヶ月ドッグ入りだって聞いたぜ。 そして修理後、お前はすぐに別の鎮守府へ異動願いを出し、ここに来た」 島風「・・・それがなんだってのよ」

2013-11-28 01:56:58
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹「何で異動したんだ?」 島風「どうだって良いでしょ!」 激昂する島風。しかし隼鷹の言葉は止まらない。 隼鷹「お前はもう居たくなかったんだろ?友達の思い出が沢山ある場所に。忘れたかったんだろ?何もかも。そして、もう二度と同じ事が起きないように、全ての人との関係を無くす為に」

2013-11-28 01:59:58
伊月遊 @ituki_yu

島風「うるさい!」 隼鷹「でも、ここに来てそれを忘れちまった。出来ちまったんだな、友達がさ」 島風「止めて!止めてよ!あんたに、アンタなんかに、何が分かるってのよ、バカァ!黙って、黙ってよぅ・・・!」 隼鷹「・・・」

2013-11-28 02:02:31
伊月遊 @ituki_yu

ぬいぐるみを震える手で抱き締めながら、涙を流しながら、隼鷹を睨みつけて叫ぶ島風。 その瞳を隼鷹は真っ直ぐに見つめる。 そして、おもむろにしゃがみこむと、 島風「ッ!」 隼鷹は無言のまま、島風の肩を抱いた。

2013-11-28 02:04:46
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹「島風さ。もう良いんだぜ、無理しなくて。一人じゃなくて。友達、作ってもさ」 島風「・・・なによ、アンタに、アンタなんかに、何が分かるってのよぅ・・・。また、あんな事・・・」 隼鷹「起きないよ、もう二度と。約束する。あたし達はあんたを置いて撃沈したりゃあしないよ。なあみんな?」

2013-11-28 02:08:40
伊月遊 @ituki_yu

隼鷹が振り返ると、そこに居た艦娘たちは笑顔で頷く。 菊月「師匠を置いて死ぬなんてありえぬ!」 那珂「那珂ちゃんはおばあちゃんになるまで死なないよー。一人前のアイドルになるんだもん」

2013-11-28 02:11:21