∞教習所シリーズ連載∞

2014年9月に連載した教習所シリーズ連載をまとめました。 テーマ曲♪きっと大丈夫/嵐
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∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞26∞ …………… 『おはよー』 「あ…」 翌日も、 眠そうな顔で私の背中に話しかけてきた。 「おはよ。」 『自分朝強いん?俺もう眠くて眠くて』 目を擦りながら欠伸をする。 『次、何?』 「学科7」 『あ、一緒や』 「うん」 そのまま隣り合わせで教室へと進んだ。

2014-09-17 22:40:27
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞27∞ 「で…なんで隣に座ってんの」 『えぇ!なんで?!』 変に勘違いされるのも嫌なんだけど… 『ここまで来て別に座る奴おらんやろ?!』 「…」 まぁ、それもそうか。 「隣で寝ないでよね?」 『寝とったら起こして。』 渋々承諾すると、 自信なさそうにへらっと笑った。

2014-09-17 22:46:07
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞28∞ 「…だから、……として…」 ハゲ教官の お経みたいな授業が続く。 …ツンツン 隣から突つかれて目線を送る。 紙切れに書かれた言葉。 "この教官、何言うてるかわからんな" これを見せて笑う大倉君。 つい、同じ紙に書き込んだ。 "わかるけど、邪魔しないで"

2014-09-17 22:50:59
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞29∞ それを見て、また書き込む。 "真面目かっ!" 書き込んだ紙をまた突き出される。 …もう! "延泊とか絶対嫌!" そう書いて、目線を教卓へ戻した。 やっぱり こんな奴好きなわけない。 また、紙が視界に入った。 "大丈夫やって 少しは手抜かなしんどいで?"

2014-09-17 22:56:54
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞30∞ 思わず隣を見ると "な?" と口パクをする。 また、心が揺さぶられたような そんな気持ちになった。 何なのホント…! 逃げるように目線を逸らして授業に戻る。 どうせ誰にでもこういう人なんでしょ。 きっと、全部からかってる。 選択を誤る前に、離れなきゃ。

2014-09-17 23:00:10
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞31∞ それからは、とにかく早めに自習して。 すぐにテストの部屋に行って。 なるべく大倉君を避けていった。 ………… 『ほな、今日も乗ってこか』 最近、よく教えてくれる教官。 「はい」 『どうや、前回とか』 関西弁がきつめの、村上教官。 「少し、慣れてきました」

2014-09-18 22:08:09
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞32∞ 『んならよかった、最初ん頃ガッチガチやったんやろ?』 そう言って八重歯を見せて笑う。 「そうなんです、ハンドル握りしめちゃって」 『ホンマか!』 ツッコミがちょっと厳しいけど 教え方は優しい。 『慣れてきたとこで悪いけど、今日は新しい事すんで』 「え…嫌や…」

2014-09-18 22:11:58
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞33∞ 『嫌ちゃうわ!帰らん気か?』 「だってー」 冗談ぽく駄々をこねると 軽く頭をどつかれる。 『だってちゃうわ!ホレ、やるで』 「はぁい」 この距離感が心地いい。 『今日はS字とクランクっていうのやってくんやけど、いっぺん見せるで』 そう言ってハンドルを切った。

2014-09-18 22:14:18
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞34∞ 『まずクランクな』 すらすらと説明しながら、ハンドルを切っていく。 教官だから当たり前だけど…かっこいい。 『ほんで、もし行き過ぎた時は切り返し。』 そう言うとこっちを向いた。 その時 『あ、すまん』 教官の手が、肩に触れた。 「…いえ」 『ほな下がるで』

2014-09-18 22:17:20
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞35∞ 何事もなかったように車はバックして そのまま、また滑らかに進む。 なんか、ちょっとドキドキした… 『わかった?発着点着いたらもう行くで?』 「暴走したら止めてください…」 正直、 説明全部吹っ飛んだ。 絶対無理だ…、怖い。 『ほなここで一旦停止、行くで』

2014-09-18 22:20:12
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞36∞ 苦手な半クラッチ。 慎重にハンドルを切っていく… 「…あれ」 車が止まった。 『クラッチ踏み過ぎや、もっと足放さな』 「はい…」 放してみると思いの外動く車。 「ぅわ…っ」 『ちょ!ブレーキ!』 「はいっ」 更に加速して、 隣のアスファルトまで乗り上げた。

2014-09-18 22:24:31
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞37∞ 『っ…それアクセルや……』 「すみません…」 急ブレーキでエンストした車で、 ため息をつく。 『隣まで乗り上げたんはお前が初めてやわ』 「…すみません」 自分でも怖くて エンジンを掛け直す手が震える。 『怖かったな。一回落ち着こか』 私の手を、教官が握った。

2014-09-18 22:29:22
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞38∞ 小刻みに震えていた手が 少しずつ治まっていく。 『ん、ほなエンジンかけ直そか』 「は、はい…」 一つ深呼吸して クラッチを踏み込んだ。 『今のは焦ってクラッチ放し過ぎてしもたから、アクセル効き過ぎて進みよってん。』 「はい」 『ゆっくりでええからとりあえず進め』

2014-09-18 22:33:39
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞39∞ 「はい…」 さっき失敗した半クラッチになかなか進めない。 『まだ怖い?』 「…少し」 『大丈夫や。また失敗したら早めにブレーキ踏んだるから』 そう言って 私の頭をぽん、と撫でる。 『よっしゃ、ほな発進して1番右折!』 「はい!」 魔法みたいに、緊張が解けた。

2014-09-18 22:41:11
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞40∞ 『おし、ほな13番のクランク行こか』 「はい…」 『大丈夫や、俺を信じろ!』 ゆっくりと進んでいく。 『怖なったらクラッチ踏め!ほんでハンドル!』 少しずつゴールが見えてくる。 『そう!ハンドル真っ直ぐにして…』 最後にブレーキを踏んだ。 『いけたやん!』

2014-09-18 22:45:03
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∞41∞ 『いけたやん!』 そう言ってこっちを向いた村上教官と目が合う。 『…頑張ったな、ほな時間やし発着点戻ろ』 「はい…//」 これは…まさかの展開。 教官のくれる一言一言が 気持ちいいぐらいに私の心に入り込む。 『お疲れ様でした』 叶わぬ恋に、片足が嵌った。

2014-09-18 22:49:16
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞41∞ 教習手帳にある、教官の文字を見る。 角張った綺麗な字。 …真面目なんだろうなぁ。 次はいつ一緒に乗るんだろう。 ずーっと村上教官ならいいのに。 そんなことを思いながら、昼食を食べ始める。 「さっさと食べちゃお…」 蓋を開けて 箸を進めていく。 「…あ。」

2014-09-19 22:10:22
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞42∞ 目線に入ったのは、 「また大根やん…」 ついつい、地元の言葉も出てしまう。 他のおかずに箸を進めて、 結局嫌いなものを最後に残してしまった。 「…残そう」 申し訳ないけど。 『だから、誘えって言うてるやん』 pic.twitter.com/G4UP0re3FU

2014-09-19 22:16:41
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∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞43∞ 振り返ると 「大倉君…」 弁当を抱えた大倉君がいた。 『勿体無いやろ、ちょーだい』 そう言いながら私の隣に座った。 「なんで隣来んのさ」 『わざわざ知らん人のとこ座るやつおる?』 また、正論。 『なぁ、今日この後は?』 「次技能で終わりだけど…」

2014-09-19 22:24:30
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞44∞ 『夕方さ、海行かへん?』 「寮違うのに?」 『気づいてなかった?俺、近くのホテルやで』 バス、たまに一緒やったし。 と言って笑う。 『ほな、5時に静波海岸な!じゃ』 そう言ってそそくさと教室を出ていった。 「ちょ、私ええなんて言ってない…!」 …もう。

2014-09-19 22:31:56
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∞45∞ 「……ってことがあって!」 技能の時。 『ちょっと強引なんやな、そいつ』 村上教官に愚痴を漏らしながら運転する。 『んで、そいつん事好きになってもたんや?』 「…?!」 一旦停止が遅れて急ブレーキを踏んだ。 「ま、まさか!そんな訳ないですよ!!」

2014-09-19 22:39:47
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞46∞ 『ははっ、冗談やて。左折な』 「…やめてくださいよ、もう」 私が好きなのは、教官です。 そんな言葉を飲み込んでハンドルを切る。 『まぁでも、とりあえず行ったったら?』 「えー…」 『嫌いになるんは簡単やし、知る努力はしたらなあかんよ』 それは…、一理あるかも。

2014-09-19 22:46:29
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞47∞ 結局帰って わざわざメイクを直して 暇があったから髪までやって… 海岸に向かう私がいた。 『あ。』 海岸線が見えた頃 既に着いていた大倉君がいた。 『よかった、来ぉへんかと思った』 なんて言いながら嬉しそうに笑う。 「よく言うわ、言い捨てて行ったくせに」

2014-09-19 22:49:48
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞48∞ 『まぁ…な、行こ』 「うん…」 2人で砂浜に足を踏み入れた。 『なぁ』 「ん?」 『俺さ、めっちゃ話しかけてたけど、なんも知らんなぁって思ってん』 「…今更?」 せやな、と言って立ち止まる大倉君。 『やから…色々聞いてええ?教えて?』 夕焼けを背に微笑んだ。

2014-09-19 22:54:12
∞の妄想を垂れ流すやつ。 @mapan8_8moso

∞49∞ 笑いかける大倉君。 ふとよぎる、教官の言葉。 "嫌いになるんは簡単やし、知る努力はしたらなあかんよ" 確かに、そうだ。 「うん…その代わり」 『…何?』 私も、大倉君の事を知らない。 「教えて、大倉君のこと。」 少しの勇気と一緒に 海風が吹き抜けた。

2014-09-19 23:03:01
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