艦これ二次創作:イマジナリー熊野
- neruko3114
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Q. #イマジナリー熊野 って何ですか? A. 「鈴谷→熊野→提督→鈴谷」がキーワードの物語です。まともな形になるまでもう少し時間がかかります。
2014-10-04 15:16:201
#イマジナリー熊野 夢を,夢を見た。 空には太陽が一つ。もう涼しくなってもいい時期だというのに空に浮かぶそれは,熱心に私を焼いている。 海に立つ私に日光を遮る術はなく,じりじりと焼かれるばかりであった。
2014-09-15 21:48:31#イマジナリー熊野 彼女たち,艦娘がいつもそうしているように私もまた,海の上に立っている。 一面に広がる青い海,どこまでもそうであるかのように錯覚さえ起こしそうな海。
2014-09-15 21:49:13#イマジナリー熊野 波音と共に私の脇を通りすぎてゆく艦娘。 木曾,霧島,千歳,祥鳳,鈴谷,そして熊野。 その編成はあの日と同じだった。 九月一日,忘れるはずもない。
2014-09-15 21:52:12#イマジナリー熊野 青い海の上を彼女たちは駆けてゆく。 その足につけられた舵が沈んだ青い水面,その表面をかき分けて。 目指す先はリランカ島。 あの日の再現を,私は見た。
2014-09-15 21:55:06#イマジナリー熊野 はじめに空母が矢を放つ。そして敵駆逐艦は消えた。 次に霧島の砲撃があった。そして軽巡洋艦は吹き飛んだ。 それから敵戦艦の砲撃があった。砲弾の向かう先は手負いの重巡洋艦,彼女は自分に向けられた砲塔の意味に気付けただろうか。
2014-09-15 22:00:04#イマジナリー熊野 旗艦の鈴谷は彼女の名を呼んだ。いや叫んだ。 「熊野」と。 無慈悲な一撃が彼女の身体を,その肢体を跡形もなく吹き飛ばす。 ほんの一瞬の出来事に私は言葉を失った。
2014-09-15 22:03:37#イマジナリー熊野 九月一日,私は初めて艦娘を失った。 熊野と名付けられた一人の少女,最上型重巡洋艦の四番艦,自称神戸生まれのおしゃれな重巡,気になるものはコンビニのサンドイッチ。
2014-09-15 22:08:16#イマジナリー熊野 「ごきげんよう,提督。今日もいい天気」 あの日,いなくなったはずの彼女が囁く。 誰にも見えない,私だけが知っている,私だけが聞いている,私だけが話しかけられる,姿形のない彼女。 私は彼女を,イマジナリー熊野と名付けた。
2014-09-15 22:17:022
「提督から熊野の匂いがする」鈴谷が私に後ろから抱きついている。ジャージ越しに柔らかいものがあたっているのが気になる。だが彼女の好きにさせよう。熊野を失って彼女が一番悲しんでいるだろうから。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 17:39:37「熊野……熊野……」私の背に顔をうずめながら鈴谷が彼女の名前を読んでいる。熊野はここにいると言いたいのに言えない。「こんなにも近くにいるのに見えない,触れられないなんて,現実は残酷ですわ」私だけに見える熊野が鈴谷を見てそうつぶやいた。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 18:08:05私の下に熊野が現れたのは,彼女が沈んだ翌日だった。「提督,起きて。朝ですわ」朝,私を起こす声が聞こえて目を開くと,そこには熊野の姿があった。「おはよう,提督。今日もいい天気」「……おはよう,熊野」寝起きのだるさの中で私は応じた。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 19:12:38唐突に現れた彼女は,熊野でありながら熊野ではない。具体的には,姿形,そして言動こそは熊野でありながらも,実体がない。私からすれば,はっきりとした形を持っているというのに,私から触れることは出来ない。彼女からも触れることは出来ない。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 19:38:48私の所に"熊野"が現れたその日,すれ違い様に鈴谷は「熊野の匂い」とつぶやいた。私は聞いていなかったが,その夜に鈴谷が現れ,同じことを言った。「すまない」思わず言葉が漏れたが,彼女は何も言わず,熊野の匂いを求めた。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 20:28:03鈴谷は今,私ではなく,私から感じるという匂いを通して熊野を見ている。彼女が求めているのは私ではない,その先にある熊野だ。そう思うと,罪悪感で胸が苦しくなる。どうして,どうしてこんなことになったのだろう。答えの出ないループが再開されたので,私は諦めた。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 21:03:39後ろから鈴谷の嗚咽が聞こえる。本当に,どうしてこうなってしまったのだろうか。答えは分かっているのに,受け入れられない私がここにいて,どうすればいいのか分からない。「すまない」再び漏れた言葉に,誰も答えない。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 21:17:58熊野はただ,どうすればいいか分からない私と,私の背中に顔をうずめて泣いている鈴谷を見ているだけだ。頭の天辺から足の先まで,あの時と寸分変わらない。私だけが見える彼女は,備え付けの椅子に座って私たちを見ている。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 21:20:21熊野がまともに喋らない理由はただ一つ,「鈴谷は認識できない」から。私しか認識できない彼女は,鈴谷を慰めることも,その顔に触れて涙を拭くことも出来ない。お互いに触れることの出来ない悲しいすれ違いを,彼女は知っている。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 21:23:13三者三様の有様だ。鈴谷は私の背で泣き,私は終わらない問答を頭のなかで繰り返しながら,熊野を見る。熊野はと言うと,何も出来ないのでただ私と鈴谷を眺めるだけだ。酷い有様だと私は思う。「提督」鈴谷が私を呼ぶので,私は応じた。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 21:26:15「もう少し,こうさせて」言葉を詰まらせながらも,彼女はそう言った。「もう少しと言わず,今夜はそうしてていい」「……ありがと」もう少し言おうとして,私はやめた。何て言えばいいのか分からなかった。それに,何か言っても,現実は変わらない。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 21:29:03鈴谷は私の背に顔をうずめたままになっていた。ジャージ越しに,彼女のやわらかいものが当たっている感触を感じながら,私は「どうしてこうなったのだろう」と知らずのうちに声に出していた。「慰めは必要?」熊野が聞いてきたので,私は首を横に振って否定の意を示した。 #イマジナリー熊野
2014-09-27 21:31:20