「千の想いを」~最終章04「航路」~
- mamiya_AFS
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【『千の想いを』最終章 04 『航路』 開始】 【第十五支援艦隊が囲まれている頃】 【介入規制:第一遊撃艦隊(扶桑艦隊)メンバーのみ】
2014-06-28 20:38:01赤城の操る航空機による的確な艦爆により、駆逐ハ級が半身を砕かれ原型を失う。それでも速度を緩める事なく波をかき分けるも、伊勢の砲撃に撃ち抜かれ沈んでいく。 重巡リ級が扶桑の放つ一撃に装甲を吹き飛ばされ、吼える。相次ぐ爆音と火柱は、両側に回り込んだ最上と舞風の気配を完全に隠していた。
2014-06-28 20:47:49音階が耳に心地よい、リズミカルな声が火の粉と鉄の破片が飛び散る戦場に響く。 最上の威嚇射撃に注意を逸らされた一瞬を縫って小柄な駆逐艦が波を蹴り、宙を数回転してから右足を標的の首の後ろに叩き込む。 にぃ、と楽しげに笑ってから、右太ももに装備された魚雷の信管を一斉に作動させる。
2014-06-28 20:53:24スクリューにより推進する魚雷は、海中を突き抜ける事ができても空中ではただの爆弾に過ぎない。ならばゼロ距離で発射すればいいという、彼女ならではの荒業である。 装甲が剥がされ、急所の目の前で炸裂する火薬に流石のフラグシップも耐える事はできない。
2014-06-28 20:58:33体重の軽い少女は爆風に踊らされて範囲から逃れ、くるくると金の渦を描きながら華麗に着水する。赤と橙に照らされて光る水飛沫も、まるで彼女を取り巻く演出のようですらあった。 敵陣中心に降り立った駆逐艦娘を標的に定め、残った雷巡チ級と駆逐ロ級が歪な鉄細工を思わせる不快な雄叫びを挙げる。
2014-06-28 21:02:52ほぼ孤立した状態で複数の怪物に狙われているというのに、舞風の顔に焦燥や混乱は浮かばない。一定のリズムで人差し指を振り、風に舞う木の葉の如く左右にゆっくりと主機を走らせる。 『奴ら』に挑発が通用する知性があるかは不明だが、誘導された事には気付いていないようだった。
2014-06-28 21:06:25後方に陣取りながらも、赤城と祥鳳の両名はとうに敵の動きを察知している。無数の艦載機が風と暗闇を引き裂いて、少女に群がる獣達を見下ろす。 中心の少女はヘッドフォンから流れる音に聴き入り、瞼を閉じて踵と顎を上下に揺する。
2014-06-28 21:10:55彼女の鼓膜を震わせるのは音符ではない。自分以外の5人が操る計100を超える航空機達のAIから送られる音声信号だ。記号化され圧縮されたその調律は、空母としての適性を持たない駆逐艦娘にとっては理解するどころか雑音以下でしかない。 それでも舞風にとっては最高にノれるロック音楽となる。
2014-06-28 21:14:21無慈悲に降下される火薬を覆う鉄の塊が、次々と海上に破壊をもたらす。為す術も無く業火に燻られる敵艦と火柱の隙間を縫って舞風が駆け抜ける。滑り、跳ね、回り、踊る。それらの動きの全てに銃声を孕ませ、敵を翻弄し傷口を抉り続けていく。
2014-06-28 21:19:17白い波紋を立てて舞風が制止する。 左手を高らかに挙げた。 瞬間、彼女の左右を戦艦の砲撃が通過する。 舞風が挙げた指先を鳴らすのと同時に。 深海棲艦が爆炎に包まれ、砕け散った。
2014-06-28 21:23:43残党がいる可能性へ注意を払いつつ、最上が妹分の頭をくしゃくしゃと撫でる。 扶桑艦隊にとって、舞風は最高の遊撃手と言えた。 突撃からの威嚇と翻弄、自身で攻撃と回避もこなしつつ扶桑達にとって最適な位置へと誘導までこなす。その全てを、指示を待つ事無く航空管制の情報だけで判断している。
2014-06-28 21:29:14彼女達第一遊撃艦隊が誇るのはまさしく連携力であった。6分の5が空母タイプと異例な編成ではあるが、それ故に索敵能力と交信に長けている。各々の役割を分担し短所を補い長所を伸ばし、扶桑の指揮の元に火力の破壊力を限度以上に引き上げていく。 攻防のバランスでは右に出る艦隊はいないと云える。
2014-06-28 21:35:33