稲川淳二のつぶやき怪談　2014年9月25日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

こんばんは、稲川淳二です。 お待たせしましたねぇ、それでは、そろそろ始めましょうか。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

稲川淳二の「つぶやき怪談」、怖・楽しい時間を、共有しましょう。 何が起こっても、責任はとれませんけど。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

神奈川県の古い会館で、演劇集団の公演があって、出演者達が楽屋に入ったので、舞台での通し稽古を始めようとしたんですが、 照明のセッティングがまだ終っていないので、しばらく待ち時間ができちゃった。

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皆が暇を持て余していると、劇団員のＡ君がやってきて、 「ここの地下って使用禁止になってるんだよ。面白そうだから時間潰しに、ちょっと行ってみないか？」 と誘うと、

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「ああ、行こうか」 とＢ君が答えた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あたしも行く」 と久美子という女の子も話にのってきて、 男ふたりと女ひとりの３人で地下へ降りる階段まできてみると、明かりも無く、シーンと静まり返っていて、 地下へ向う階段の先が闇の中へと続いている。

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Ａ君が壁の明かりのスイッチを入れると、古い電球がついて、ボヤーッと鈍い光が階段を照らし出した。

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「降りようか・・」 「・・ああ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「何だか気味が悪いね・・」 カツンコンカントンカツンコン

稲川淳二 @Junji_Inagawa

３人の靴音が、コンクリートの壁に反響する。

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そして地下に着くと、階段からもれる明かりのむこうは、黒一色の闇におおわれている。

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Ａ君が壁のスイッチを「カチッ、カチッ、カチッ」と全部入れると、 少しの間をおいてボヤーッとした明かりがついた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

見ると手前に２つ部屋があって、その奥にリハーサル室と文字の入った部屋がある。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その入口の扉に“使用禁止”と書かれた紙が貼ってあった。

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どうやら使用禁止なのは、地下ではなくて、このリハーサル室の事だったらしい。

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３人が扉の前まできてはみたんですが、さすがに何だか気味が悪い。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「何で使用禁止なんだろうなァ？」 と、Ｂ君がポツリと言った。

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Ａ君が、 「どうするんだ？入ってみるのか？それともやめるか？」 とふたりに聞いた。

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「ああ、入るよ」 とＢ君が言うと、久美子という女の子も頷いた。

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「開くかなァ？」 Ａ君が、やおら扉のノブを掴むと回してみた。と回った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そのままぐっと手前に引くと ギィィィィーーッ・・ と擦れた音を立てて、開いてゆく。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

３人が覗くと、徐々に真っ暗な室内が見えてきた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と同時に、カビ臭いような埃っぽいような、臭いが鼻をついた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

地下にあって、永い間、締め切ったままになっていた為か、空気が澱んでいるらしい。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

気のせいか、闇の中に何かが潜んでいるような気配がする。