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@hasae_1st 「ごめんね、ニート」 手、繋いで。そう言われた時、少し嫌な予感がしていた。けれど、神との戦いで身も心もボロボロだった少年には、その手は安堵の場所でもあった。 だから、繋いだ。 ふ、と優しく微笑んだ魔王は…そのまま、反対の手で自らの胸を貫き、心臓を抉り出した。
2014-09-29 22:49:55![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@hasae_1st 「この命を使って、世界を守るためには…やっぱり、君の手が必要だから」 己の命を代償に、神を封印すると。その為には、勇者に殺されないと。 そう言った魔王は、繋いだ勇者の手を、心臓に近付けた。
2014-09-29 22:50:11![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@hasae_1st 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。 勇者は拒絶した。首を振り、声を荒げ、涙を散らし、泣き喚いた。それでも、その小さな手はゆっくりと魔王の心臓に埋まっていく。 あたたかい。 こんなにも、あたたかいのに。 「どうか、幸せに」 微笑んだ彼の命は、あっけなくこの手の中で弾けた。
2014-09-29 22:50:21![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@hasae_1st 気が付くと、豪奢な部屋の中。城の綺麗なベッドに、寝かされていた。 メイドだろうか、無愛想な黒髪の少女に、何故自分はここにいるのか、と勇者は尋ねた。すると 「魔王は死にましたよ。自らの命を代償に、神を封じて」 無感情な言葉は、現実と共に勇者を侵していった。
2014-09-29 22:50:45![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@hasae_1st それから、勇者は人に温かく迎え入れられた。王は故郷を失った勇者のために城に住処を提供し、衣食住困らない生活を約束した。そして、将来も。
2014-09-29 22:51:00![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@hasae_1st 時は過ぎて、勇者と呼ばれた少年は王となった。彼はとても良い王だった。 全てを笑顔で受け入れ、人を愛し、人を許し、人の為に尽くした。
2014-09-29 22:51:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@hasae_1st そんな王は、ふと夜空を見上げた。いつか魔王と見たような、満天の星空だ。 「いつか、一緒に旅に出よう」 その約束は、果たされる事はなかった。 「……嘘つきめ」 王は、民の前では決して見せない表情で笑った。
2014-09-29 22:51:30![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
@hasae_1st もし。もし、未だこの身に、勇者としてのちからが残っているなら。 そんな、途方もない事を考える。でももし、もし叶うなら。 「…やり直したい」 あの日の戦いを。 もっと、もっと強くなるから。 あいつを死なせたくないから。
2014-09-29 22:51:47