ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/11/25

@Japanese_Fairy_

夏の暑い日、祖母に会いに町外れにあるお寺に行った。案の定、首に巻いたタオルで汗を拭きながら草毟りをしている。お迎えが来た時に綺麗なお墓に入りたいでしょ？祖父が死んでから毎日掃除を欠かさない。おばあちゃん、今度は私が掃除する番よ。お墓の中でゆっくり休んでいいのよ。 #twnovel

@littlelttil

生まれてくるときは、一筋の光なの。ずっとずっと高いところから、おかあさんを見つけて、一直線に降りていくんだよ。それからね、すっと、光のまま。子宮のなかは、誰もが知っていて誰もが知らない、とてもあたたかい場所なの。でもどうして。覚えていられないんだろうね。 #twnovel

@wakegiorino

#twnovel おやすみの前に。こんばんは、アナウンサーの星孝夫です。同僚がイヤホンを耳につけ何やら聞き入っています。目が合うと「息子のお下がりだよ」と音楽プレイヤーを見せてくれました。いいなあ、というと「使い方が難しくてずっと同じ曲しか聴けないんだ」。私、ちょっと泣きました。

へん子@推し増し中 @henda4

#twnovel 上を見ながら不恰好に走る君。「どうしたの」「もう少しでお月さまの真下に行けそうなんだけど」いくら走っても月には追いつかないよ。それは君もわかっていると思ったから、白い息だけそのままはいた。

ぼろいねこ讃 @nekoboro

休火山がいちばん怖いのよ、と母さんが言っていた。うちの家は、ある死火山のふもと、何の脅威もない。登山家と修行者の拠り所としてそびえる穏やかな姿を、幼い頃から見てきた。だから、煙が上がった休火山を見たとき、わたしは思わず「お母さん！」と叫んでしまったのである。 #twnovel

まる @kuroi_kitsuneko

電車の中でじっと目を瞑る。心地よい振動に、次第にうとうととする。遠くで「閉まるドアにご注意ください」というアナウンスが響く。慌てて目を覚ますが、電車は動き出している。通り過ぎる駅を呆然と眺める。駅のプレートには「人生の分岐点」と記されている。 #twnovel

泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 夢の話は退屈だ。夜に見るものであれ昼に語られるものであれ。悪夢の苦痛を訴えてくる女と理想の結婚像を語る女に挟まれながら、私は昨晩見た夢を思い出している。悪夢女の夫と結婚女の彼氏と同衾していた。目の前の二人の女達は溶けて混ざり合い臭気を放ち始めるがうまく叫べない。

想像を凌駕する人 @Jose_Ichiro

隣の中年リーマンが満員電車の中ケータイで、何かのSNSの誰かの日記を読んでいる。ちらっと見えたタイトルは『さみしい』内容は『憂鬱。学校行きたくない』。リーマンはその日記に『俺慰めようか？』とコメントする。俺が子供の頃思い描いた21世紀はこんなのではなかった。 #twnovel

@K_Ichida

#twnovel 祭りの空に花火が散ったので、姉を殺すことに決めた。病弱で長く生きられない姉は、きれいなうちに死にたいと言っていた。境内の暗がりで背中を何度か刺す。姉は倒れてこときれた。パンと花火が上がり、姉の白い肌が浮かぶ。ありがとう、姉の声が聞こえたような気がした。

アルコ @__arco

振り子がゆっくりと振られる。あの街に泳いで行ってしまったあの人の事を考える暗闇。半分開いたカーテンの隙間からは、夜の粒が見えた。仰向けになりながら空を切る左手には、まだ指輪の痕が残っている。狭かったあの頃の使い心地を思い出しながら、夜のベッドに、夢に沈んでいく。 #twnovel

酒井優 @glatyou

「一般的な人間」私が生まれる何万年も前、私がこの世に生を受けるまでに世界を用意しておく準備が始まった。そして親となるべき男女が愛を育み、私を産む。私が生きるたった数十年の為に世界は社会や文化を形成し、そして私がいなくなった後はまた何万年もかけて世界を片付ける #twnovel

酒井優 @glatyou

「一般的な動物」私が生まれる何万年も前、私がこの世に生を受けるまでに世界を用意しておく準備が始まった。そして親となるべき雄雌が交尾し、私を産む。私が生きるたった十数年の為に世界は自然環境を形成し、そして私がいなくなった後はまた何万年もかけて世界を片付ける #twnovel

酒井優 @glatyou

「一般的な虫」私が生まれる何万年も前、私がこの世に生を受けるまでに世界を用意しておく準備が始まった。そして親となるべき雄雌が交尾し、私を産む。私が生きるたった数十日の為に世界は自然環境を形成し、そして私がいなくなった後はまた何万年もかけて世界を片付ける #twnovel

とおる6th @windcreator

絡繰娘は時刻を告げる。それはもう寸刻も違わぬ精確さで、彼女は時刻を告げる。彼女の体内に納められた複雑で精巧な絡繰が、極めて精確な時を刻み続ける。彼女さえいれば、もう時計など必要ない。だから、主人は言う。「君には一生僕の側にいてほしい」2秒、彼女の時がズレた。 #twnovel

@souco_mamiya

雨上がりの路地、指輪をはめた右脚の小指が、しとと濡れた地面を這いずっていた。きっとまただれかがなくしでもしたんだろう、足元までやって来たそれを、僕は車道へと蹴りとばした。ひしゃげた指と僕の表情を見ても、隣のサカナはにこにこ笑うだけだった。 #twnovel

八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。深夜の公園の噴水池の中から潜水服姿の女が現れた。彼女はアクアラングと酸素ボンベを外し潜水服を脱ぎ捨てると、ビキニの水着姿になって人間豹に訊いた。「ここはどこ？」「世界の果てだよ」「よかった」と言って彼女はニコリと笑った。 #twnovel

すわぞ @suwazo

#twnovel 残業を終えてアパートに帰る。貰ったオレンジを剥いたら中から妖精が現れた。ティンカーベルみたいなやつ。「おめでとう。ずっとあなたに会いたかったわ」そう言われて、今日が僕の30歳の誕生日であることに気づいた。妖精はまばゆい光を放って宙を舞う。万華鏡の中みたいだ。

Shimada Yuichi @chimada

僕が居間に入ったとき妻は何か考え事をしていたようで、僕が帰ってきたことに気づかなかった。「どうした？」「あの子がね」娘に何かあったのか。「サンタさんに頼んでくれって」「何を？」「『好きな男の子にバレンタイン・チョコを渡す勇気』を」「……」僕たちは困ってしまった。 #twnovel

かわうそ @kawauso0815

#twnovel 同僚が見たことのない腕時計をはめていた。「買ったのか？」と私が尋ねると、彼は嬉しそうに言った。「気付いた？これ、電波時計なんだ」「へえ」「電波で秒針を自動に合わせてくれるんだ」「秒針？」「そう秒針」「秒針だけ？」「そう秒針だけ」「へえ………」

ハラヨシ @harayosy

#twnovel お願いですマスター。機械である私にメイドな服を着せないで下さい。激しく無駄です。お願いですマスター。機械である私に試食させないで下さい。そういう機能はついてません。お願いですマスター。機械である私にそんなに優しくしないで下さい。熱暴走で…エラーです。

@saeba7

#twnovel 壊れてしまったの、私。仕方ないわ、だって壊れてしまったんだもの。…？貴方の心臓、壊れかけてるわ。私のと交換する？私、体は壊れたけど心臓は未壊よ。壊れた物は置いていって。私が受け止めてあげる。ああ、僕も限界だから迎えに来たんだ。おいで、あと少しだけ共に稼動しよう。

近江マイコ @OUMI_MAICO

#twnovel わたしは彼に透明感という最上級の侮蔑の言葉を放った。彼はそれにまるで気がついていない。黒目の大きな一重の瞳は明るくわたしを映しているのだ。わたしは微笑んで、けれども、悔しかったから、靴の中で足の爪先に力を込めた。ペディキュアは何色だっただろうか。

@asidity_dabyy

愛は枯れることが無い。コップを用意しても、金魚鉢を用意しても、水槽を用意しても溢れてしまう。けれど、ぴったりの器を手に入れた。あの器は、彼は私の愛を受け止めてくれる。喜ぶ私に彼は言った。「もう気は済んだかい。」私の愛を飲み干した彼は暗く淀んだ目をしていた。 #twnovel

Takao Rival @takao_rival

#twnovel マンボが健康に良いという研究が発表され、普通に歩く際にもウ！と掛け声を叫ぶ事が流行した。後に電機メーカーがウ！を叫んだ数を自動的に計測する器具を開発した所、爆発的な売れ行きを見せたという。「…先生、私は万歩計の話をお願いしたのですが」「や、だからマンボ計の話を」

喫サ🔥 @kissa310

「入院生活は暇だからツイッターは良い気晴らしになるわ、botっていうのを今作ってみてるの」そうベッドの上で笑っていた君。心配性の君は自分よりも常に僕の心配ばかり。そんな君がいなくなって数年、TLには今朝も心配性な君の「いってらっしゃい、ハンカチもった？」の呟き #twnovel