四大聖戦:第一戦闘フェイズ【巨大樹の間】

抗いしは瑞風の勇者 @wind_he_ro 対するは徒波の魔王 @fileWoz
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【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

少年は梅雨の雨の中に俯いたまま立ち尽くしている。雨足が、弱まり始める。

2014-09-30 15:08:54
徒波の魔王 @fileWoz

雨足が、遠くなり始める。 攻撃を受けた少年は立ち上がり、俯いている。 「力をまだ分かってねえのか?ったくよぉ、ここんなの俺様が苛めてるみたいだぜ」 溜息を付き、しかしあまり気にした様子はなくその顔はすぐに少年を侮蔑するような色に変わる。 「何かしねえと殺しちまうぜ」

2014-09-30 19:18:02
徒波の魔王 @fileWoz

掌を突き出す。またもや少年の周囲に泡が四つ。先ほど雨が降っていた時よりは幾分か小さいものではあるが、周りにまだ水滴などが残っているため大きさは少し残っている。 少年が動けば、また爆発するだろうそれはしかし、包囲は完璧ではなく彼の先ほどのような身体能力ならば逃げることは

2014-09-30 19:24:48
徒波の魔王 @fileWoz

無理はないだろう。 「女神サマが選んだ奴らも、大したことねえのな」 鼻で嗤う。

2014-09-30 19:26:06
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

最後の一滴が落ち切った。雫は土に吸い込まれていく。少年は堂々と顔を上げた。瞳と虹彩に境界の存在しない、いっそ清々しい程黒い目は煌々とぎらついて、先と全く変わらない憤怒を宿している。 「僕は殺されない。殺されるのはお前だ」 少年が、跳ねる。だが向かうのは魔王ではなく、上。

2014-09-30 20:18:39
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

包囲する泡が爆発する。爆風さえ利用して少年は身体を上へ押し上げる。枝を伝い、幹を登り、巨大樹の葉が繁茂するさらに上へと抜け出るために。無事、分厚い木の葉の層を抜ける事ができたなら。其処には少年の白南風が作りだした夏の陽射しと、爽快な風の吹く一面深緑のフィールドがあることだろう。

2014-09-30 20:18:53
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

日光を通さぬ程複雑に絡み合った枝葉は、激しく体重をかければ抜けてしまうかもしれないが、それでも立っていられる程度には強靭だろう。 一方森中では。たっぷりの水と夏の陽射しを受けて、木々やそれに寄生して生きる植物が急速に成長を始めていた。

2014-09-30 20:19:05
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

【黒白ノ南風】の起こした事象である事によって、ある程度の意思を持ちながら。生きる糧の一つたる水を奪われた植物たちが、強靭な蔦、貧弱な根、強きも弱きも関係無く、魔王に向かって伸ばしていく。捕え、恨み晴らさんと。

2014-09-30 20:19:11
徒波の魔王 @fileWoz

「おいおいおいそれはせけーぞ!おい!」 勇者が飛ぶ。否、跳ぶ。此方の泡すら利用し高く高く、器用に登りその身は徐々に小さくなっていく。その様子を徒波は、声を荒げ批難する。これまで自分が一方的に攻撃したことなど気にする様子もない。 そんな彼に、忍び寄る気配。

2014-09-30 21:56:13
徒波の魔王 @fileWoz

「あぁん……?うわっきっも!」 振り返る徒波の目前に、蔦や根など様々な植物が蠢き、襲い掛かる。 「だあっ!くそっ!いっっでぇ!貴様らこの俺様に刃向かうなんてよぉ……何様のつもりだぁ!」 枝は皮膚を削り、蔦は身体を打つ。根は彼を捉え離そうとしない。

2014-09-30 21:56:21
徒波の魔王 @fileWoz

ジタバタと暴れる徒波だが、いくつそれらを退けてもこの場所において彼らは無限の軍勢と化している。 露出した箇所は既に傷だらけで、騒ぐ男の荒声が誇張でないことを表している。 「あぁったくよぉ!てめぇらぶっ殺してやる!」 植物達を、睨み付ける。

2014-09-30 21:56:34
徒波の魔王 @fileWoz

これまでとは比にならぬ程に小さな泡の粒がそれらの表面に這われる。 「はっ!!」 叫ぶ。声の振動により、それらは爆発。襲い掛かる勢力の表面を削り、己から遠ざける。 そして、彼らがまた復活し襲い掛かる前に自分の周囲に泡を配置。勇者と同じ方法を使い、自らの身体を射出させる。

2014-09-30 21:56:46
徒波の魔王 @fileWoz

なんとか幹を掴んだ頃には既に疲労困憊とばかりに息を荒げて巨大樹を見上げる。 「あぁくそ、左手がいてえ右手もいてえ、首筋もいてえ……あのクソ餓鬼何処行きやがった」

2014-09-30 21:56:59
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

陽射しが眩しい。風が穏やかだ。これがきっと、世界の本来の容。清々しい大気と深緑の薫り。世界から今、この美しい風景が失われている事に、改めて怒りが湧く。 「絶対に、殺してやる」 力づくで世界を奪い返す。噛みしめる歯が、軋む。少年の憤怒に連動し、再び風が吹く。

2014-09-30 22:58:38
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

――白南風。生命を喚起させる風。風は樹木の間を駆け抜けていく。植物が次々と萌え出でて伸びる。魔王の元に、伸びる。 「僕の手で、絶対に」 無意識の少年の意図を汲み、生まれたばかりの瑞々しい青は魔王の元へ。捕える、或いは追い立てる。少年に差し出す為に。 「――殺してやる」

2014-09-30 22:58:45
徒波の魔王 @fileWoz

「うわきやがった!!」 ぜえはぁと息を整える徒波に、再度意思を持った植物達が牙を向き枝を向け蔦を向け殺意を向ける。 誇張なく痛む身体に鞭を打ち、徒波が逃げる先は遥かまた上空。捕まるわけにはいかぬと必死で手を動かし逃げる。 気が付けば、視界が白く包まれる。

2014-09-30 23:36:55
徒波の魔王 @fileWoz

それが太陽だと気付いた頃には……そこに勇者がいて自分がここまで追い込まれたということに気付いた頃には、徒波は葉の絨毯の上に寝っ転がっていた。 「だあくそっ!」 脚に絡まり付く蔦を引き千切り、唸る。立ち上がるのも億劫なのか座った体勢になり、先にいた勇者に向き直る。

2014-09-30 23:37:00
徒波の魔王 @fileWoz

「俺様の方から来てやったぜ?」 威張ったように、腕を組み胸を仰け反らせる。如何にも望んでここに来た、と言わんばかりだ。 「あぁ〜つか眩しいんだよここよぉ!」 文句を言いつつ、掌を敵の足元に向ける。 泡は、視界に映る場所には現れない。彼の足の下の空間、草と草の間に幾つも出した。

2014-09-30 23:40:41
徒波の魔王 @fileWoz

もし動けば即刻炸裂し、葉を削り立つ地を削り彼を落とす。だが勿論足元だけにしか仕掛けていないので跳躍されたら意味は無くなる。 「ほら、俺様を殺すのが勇者サマの仕事なんだろう?」 こいよ、と腕を広げる。

2014-10-01 00:18:29
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

「仕事?そっか、お前は僕たちが女神に命じられて君たちを殺しに来てると思ってんだ?馬鹿だね。そんなわけない」 女神の神託が無くとも、少年は何時か必ず自ら魔王を殺しに来ていた。 「僕は僕の恨みで魔王を殺しに来た」 憤怒の炎が黒い目の中で燃え盛る。

2014-10-01 00:23:43
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

「被害者面って言ったな。当然だろ。僕は被害者だ。お前たちの仲間なんか知らない。僕は普通に暮らしてただけだ。大好きな母さんと、父さんと。叩き潰したのはお前たちだ。復讐なら、傷つけたとかいう本人にやってろよ。僕は関係なかったッ!」

2014-10-01 00:23:54
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

「これだけ草とか樹とか、動くのも納得する。僕は元気にしてあげただけで、操ったりしてない。みんな恨んでるんだ。お前の事」 歩み寄るべく一歩を踏み出して、しかと生い茂る枝葉を捉える事ができなかった。葉の間で炸裂した泡が緑の絨毯を突き破り、できた虚に足場を無くして吸い込まれる。

2014-10-01 00:24:09
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

不意の事象は全て魔王のものと決めつけて、落ちゆくままに穴開いた空を睨め上げた。 全力の憎悪と悪意と殺意と怨嗟と胸に渦巻く負の感情をたった一言に詰め込む。 「 ― ― 死 ね 」 同調する草木が一斉に蠢く。蔦が木の葉が枝木までもが。此度は捕える為でなく、殺す為に。

2014-10-01 00:24:14
徒波の魔王 @fileWoz

「あーあーなるほどな。じゃ同じこと言うぜ、お前の親を殺した奴を恨め。まぁ俺様が殺していたとしても覚えちゃいねえがなハッハッハ!」 笑い、それと、と続け立ち上がる。手を広げ勇者だけでなく下に生い茂る全ての存在に語り掛けるように声を張り上げる。

2014-10-01 01:38:45
徒波の魔王 @fileWoz

「お前らはこの人間とやらが蔓延る世界を少し予想した方が良い」 言い終わるが否や、目の前の勇者の身長が少し減り、徒波が瞬きをした時にはもう見えなくなる。 落ちたのだ、と彼が確信したのと、声と殺意が届いたのはほぼ同時だった。 「死ね?俺様に?そのまま返してやるよばーか死ね!」

2014-10-01 01:39:04