【艦これ連載SS】秋雲さんと東方小説書き提督　その２

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

で、横須賀に帰り着いて、みんなで間宮へ。 「あ、司令官、みなさん、お疲れ様です！」 「おー、みんなお疲れー」 鎮守府で留守番組だった三日月ちゃんや川内さんらが秋雲たちを間宮で出迎えた。既にいい匂い。お腹すいてきたよ。お昼ちゃんと食べてないもんなあ。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「手伝うわね」 鳳翔さんが調理場の方に向かい、秋雲たちは三々五々席に着いた。一航戦、二航戦らのＭＩ作戦本隊と、龍驤さんらＡＬ作戦組がいないので、人数的にはいつもより少ないけど、一気に賑やかになる。三日月ちゃんがビールを持ってきてテーブルに配った。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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全員のグラスに飲み物が注がれたところで、木曾さんに促されて提督が立ち上がる。 「あー、ＭＩ作戦とＡＬ作戦の総括には早いが、今作戦の主眼である夏コミ海域攻略は、無事成功裏に終わった。これも皆の尽力のおかげだ。まずは一言感謝を述べたい。ありがとう」 #秋雲さんと東方小説書き提督

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一度頭を下げ、咳払いして、提督はグラスを掲げた。 「まだ前線にいるＭＩ組、ＡＬ組には悪いが、まずは夏コミ海域の攻略を祝して！　乾杯！」 『かんぱーい！』 あちこちでグラスが打ち鳴らされるとともに、鳳翔さんと間宮さんが料理を運んでくる。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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というわけで、楽しい打ち上げ開始。秋雲も、新刊も提督の本もよく捌けたから、菊月ちゃんと気分良くお酒飲んでたわけ。 「菊月ちゃん、夏コミはどーだった？」 「……暑かったが、楽しかった」 「うん、それは何よりぃ。秋雲も楽しかったよぉ」 「あ、秋雲、近い」 #秋雲さんと東方小説書き提督

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お酒入って菊月ちゃんに絡んでたら、「ちょっと秋雲さん」と漣に呼ばれた。 「ん？　なに漣」 「菊月さんとお楽しみのところ申し訳ないんですが、ちょっとこっち来てもらえます？」 振り向くと、七駆のテーブルにいるセンカちゃんがこっちをガン見してた。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「なに？　センカちゃんがどうかした？」 「いやあ……あ、菊月さんもご一緒に」 「私もか」 というわけで、菊月ちゃんと席を立って七駆のテーブルへ移動。七駆がセンカちゃんを囲んでる中に、近くの椅子を寄せて菊月ちゃんと割り込む。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「で、なに？」 「いや、センカさんに今日の戦利品から、よさげな百合本を重点的に読ませてみてたんですけどもぉ、どーも反応が芳しくなくてですね」 「違ウノダ」 漣の言葉を遮るみたいに、センカちゃんが手にしていた薄い本を置いて言った。 「違うって、何が？」 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「人間ガ、紙ニ描カレタ絵ニ願望ヲ投影シテ楽シム生キ物デアルコトハ理解シタ。コレラノ本は皆、ソウイウモノダ」 「うん、そうだけど」 「ダガ、私ハ違ウノダ」 センカちゃん、きっぱりと言い放った。 「アノ、きましノ塔ガ建ツ感覚ガ、ココニハ無イ」 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「アッハイ……って、え？　なに、東方キャラじゃ百合妄想できないってこと？」 「ソウデハナイ。紙ノ絵ハ動カナイ。喋ラナイ。絵ト文字ダケデハ……違ウノダ……」 センカちゃんはそう言って、首を振ると、ぐるりと視線を巡らせて、店の一角に目を留めた。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「神通さん、お注ぎしますね」 「あ、ありがとう、三日月さん」 「よいしょ……あっ、ご、ごめんなさい、注ぎすぎました！」 「大丈夫、溢れてはいないから……あっ」 「ひゃっ」 「ああ、ごめんなさい、三日月さん、大丈夫？」 「あ、はい、大丈夫です……」 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「濡れてしまいましたね……拭きますから、じっとして」 「あっ……く、くすぐったいです、神通さん……」 「え、あ、ごめんなさい……」 「い、いえ……あの……」 ――とまあ、そんな調子で、三日月ちゃんと神通さんがいちゃついていた。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「アレダ」 「あれって」 「アア……きましノ塔ガ建ツ……アアデナクテハ……」 胸の前で手を組んで、センカちゃんは陶然とそう言った。え、それってつまり？ 「そう、さっきからずっとこの調子なんですよぉ」 漣も困り顔で秋雲の方を見る。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「百合本を何冊読ませても、そっちのけで曙と潮のイチャイチャに注意を向けてしまって」 「いちゃついてないわよ！」 曙の叫びはとりあえず無視。 「これってもしかしなくても、センカさん」 「百合は百合でも……落ちたのは三次百合沼」 なんてこったい。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「いやあ！　漣的にはｋｔｋｒなんですけど！　三次百合へようこそ！　メシウマ！」 「百合の仲人はひとりで十分だよ！」 秋雲がそうツッコミを入れていると、神通三日月カップルを視姦してたセンカちゃんが秋雲たちの方を振り向いた。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「オ前タチモ、モット、アアシナイノカ」 「え？　秋雲と菊月ちゃんのこと？」 「ソウダ。モット抱キアッタリ触レアッタリ見ツメアッタリシテクレルト、きましノ塔ガ増エル」 いや、そんなこと言われても。 「きましノ塔ヲヨコセ！」 迫らないでよ！　怖いよ！ #秋雲さんと東方小説書き提督

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「ダメデスネ、センカ。ソンナ強要シテハ、求メル物ハ手ニ入リマセンヨ」 と、リトちゃんが現れてそんなことを言い出した。 「黙ッテイレバ、百合ップルハ勝手ニイチャツキマス」 「ソウイウモノカ」 「ソウイウモノデス。ホラ、ソコデモ」 #秋雲さんと東方小説書き提督

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と、リトちゃんが指した先では、 「おつかれ、あきつ丸」 「お疲れ様であります、はっちゃん殿」 「いっぱいふたなり本買えたね。明日もがんばろ」 「頑張るであります！」 「今日の分はあとで、一緒に読もうね」 「はい、であります」 #秋雲さんと東方小説書き提督

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遅れて合流したはっちゃんとあきつ丸が顔を寄せ合って幸せそうにしていた。あっこもラブラブだなあ。 「ホラ、アソコモ」 と次にリトちゃんが指したのは睦月型のテーブル。 「皐月、口の脇についてるぞ」「んー？　長月、口で取ってよー」「ばっ――」と皐長。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「オオ……コレダ……私ノ胸ニ宿ッタコノ正体不明ノ感情……コレガきましノ塔トイウモノナラ……私ハ……」 センカちゃん、胸元に手を当てて感極まったように言った。 「私ハ……戦ウタメデハナク……きましノ塔ヲ感ジルタメニ生マレテキタノカモシレナイ……」 #秋雲さんと東方小説書き提督

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ああ、リッカちゃんやワンコちゃんもこうやって落ちたのか、と秋雲にもよくわかるセンカちゃんの姿だったよ……。ねえ、そうでしょ？　戦うことしか知らなかった深海棲艦がさ、東方や百合を通じてそれ以外の感情を知ったわけでさ。ファーストコンタクトってやつ？ #秋雲さんと東方小説書き提督

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「秋雲ヨ」 「アッハイなんですかセンカちゃん」 「ツマリ、人類ガコノ薄イ本ニブツケル願望トイウノガ、今私ノ感ジテイルモノナノダナ」 「え、あ、うん、それで合ってると思うよ……」 「ソウカ……港湾ヤ離島ガナゼ人類側ニツイタノカ、ヨウヤク解ッタ」 #秋雲さんと東方小説書き提督

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センカちゃん、眩しそうにリトちゃんとワンコちゃんを見やる。 「コレハ……心地ヨイモノダナ……私ハコンナ、きましヲ与エテクレル存在ヲ沈メヨウトシテイタノカ……」 そう呟いて、それからセンカちゃんは弾かれたように顔を上げると、立ち上がった。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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そうしてセンカちゃん、つかつかと提督に歩み寄る。 「コレガ、貴様ノ策略カ」 「うん？　なんの話だ、戦艦棲姫」 「私ニ、コノヨウナ感情ヲ教エルノガ、最初カラ貴様ノ目的ダッタノダナ」 「半分はな」 「半分ダト？」 提督はニヤリと笑う。 #秋雲さんと東方小説書き提督

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「まだ半分だ。戦艦棲姫、君にはもっと学んでもらわないといけないことがある」 「何ダト」 「ただキマシの塔を感じるより、もっと楽しいことだ」 「ソンナモノガ、存在スルトイウノカ」 「ああ」 ――あ、提督が何考えてるのか、解った気がする、けど……。 #秋雲さんと東方小説書き提督