【艦これ連載SS】秋雲さんと東方小説書き提督　その２

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

「君だって、本当はそれを知りたくて、夏コミに来たんじゃないのか？」 「――――」 「我々と戦うより楽しいことが、この世にはある。人類の作った文化という、な。ここは、君の求める百合の宝庫だ。鎮守府内のカップルは10組を超える」 「10クミ……」 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

「さあ、どうする？　知ってしまった感情を否定して深海棲艦としての本分を果たすか？　それとも、もっと楽しいことを探してみるか？」 「…………」 「この鎮守府では、百合っぷるのイチャイチャは無制限見放題だ。深海棲艦に、百合っぷるはいるか？」 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

「――テイ、トク……」 がくり、とセンカちゃんは膝から崩れ落ちた。 そして、絞り出すような声で、こう言った。 「百合ガ、見タイデス……」 ――そう、これこそが、センカちゃんが完全陥落し、そっちの言う《奇跡》が成就された瞬間だったわけ。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

いやあ、長かったねえ……このインタビュー始まってから半年かあ。 というわけで、この話が始まった時点での《奇跡》――センカちゃんの完全陥落の話はここまでだけど。 まあ、半年もかけてこの話してる間に、また色々あったよねえ……。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

渾作戦とかさあ、冬コミとかさあ……。 引き続き、そのへんの話してけばいいの？　りょーかい。 ま、ある意味じゃここからが本番だかんねえ。 また長い話になるだろーけど、よろしくねえ、リッカちゃん。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

[秋雲さんと東方小説書き提督　第三部　了] （つづく） #秋雲さんと東方小説書き提督

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浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

はい、どちら様ですか？ あっ、え、ええと、離島棲鬼さん？　あ、はい、どうぞ……何の御用ですか？ というか、ここにいていいんですか？　堂々とショートランド基地の中にいて……あ、許可は取ってるんですか、ならいいんですけど……。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

は、はい。リトさん……と呼べばいいんですか。わかりました……。 それで、ええと、私に何を？ ――えっ、ゆ、夕張さんの話ですか？　そんなこと急に言われましても……え、ええと……夕張さんの、何を聞きたいんでしょうか。夕張さん、今もそちらですし……。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

あの、夕張さんに何かあったんでしょうか……？　そうじゃない？　それなら、いいんですけど……。夕張さん、元気にしてるでしょうか……。 ……さ、寂しくなんかないです。連絡はよくくれますし……たまに会えますし……うう……。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

――え？　去年の夏コミのときの話、ですか？ ああ、はい……横須賀の方で、提督と戦艦棲姫さんとの間に和平交渉が為されたんですよね。後から聞きました。でも、私はずっとショートランドで……え？　そのとき夕張さんがここにって、な、なんで知ってるんですか！？ #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

そ、そうですけど……はい……八月十六日の明け方ですよね。 ＭＩ作戦は、こちらにいた五航戦や北上さんたち、利根さんたちも駆り出されてましたけど、私はショートランドでお留守番でした。 作戦が上手くいってるっていう話は、ここにも聞こえてはきてたんですけど。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

あの日……十六日の朝は、夜が明けるより随分前に目が覚めたんです。予感……があったわけじゃないんですけど……ほら、夏コミの日だったじゃないですか。夕張さんが提督と参加するはずだった東方の日……。早く目が覚めてしまったのは、そのせいだったと思います。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

私、あの、横須賀で夕張さんと出会うまで、そういうこと全然知らなかったんですけど……夕張さんに連れられて、オンリーイベントには何度か行きました。例大祭とか……。それで、夏コミも一緒に行こうって、例大祭の頃は夕張さん、言ってくれてたんです。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

その後、夕張さんがあっちに潜入することになっちゃったので……夏コミ、夕張さんと一緒に行きたかったなって……そういう気持ちが、たぶんあの日、夜明け前に目が覚めた理由だったと思うんですけど。 とにかく、目が冴えちゃったので、外に出たんです。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

港で、まだ暗い海を眺めて、潮風を感じていたら――水平線に、こっちに向かってくる影が見えました。最初は夜間哨戒に出てた誰かだと思ったんですけど、よく見ると違う。深海棲艦！？　と、身構えました。でも、その影は単独で……一隻で突っ込んでくるはずもないし。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

どう判断したらいいのかわからなくて、私がおろおろしているうちに、その影が私に気付いて――そして、大きな手を振ったんです。 え？　と思ったとき、ちょうど水平線が明るくなってきて――その影は、頭に被っていたものを外しました。 夕張さんでした。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

「ゆ、夕張さんっ！？」 「五月雨ちゃん！」 深海棲艦の格好をした夕張さんは、そのまま上陸してきて――呆然としていた私は、そのまま……あの、夕張さんに、抱きしめられてしまって……。 私、なんで夕張さんがここにいるのは、わけがわからなくて……。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

「夕張……さん？　夕張さん……ですよね……？」 「五月雨ちゃん、五月雨ちゃんだぁ……会いたかったよ」 ほっぺたをくすぐる夕張さんのポニーテールから、夕張さんの匂いがして……私、色んな感情がぐしゃぐしゃになって、なんだか泣けてきちゃって…… #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

泣き出しちゃった私を、夕張さんはぎゅって抱きしめて、ずっと髪を撫でてくれて……え、あ、ええと、っていうか、何を喋らせるんですかぁ！ え？　そのまま続けてって……わ、わかりました……。でも、別に何かあったわけじゃないですよ……？ #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

「……落ち着いた？」 「ゆ、夕張さん、ごめんなさい、私……」 「もー、謝らないで。五月雨ちゃんに寂しい思いをさせてたのは私なんだから」 「夕張さん……あの、どうしてここに？」 「ん、ああ、裏ＭＩ作戦のついでに寄ったの」 「裏？」 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

そのとき私はよく知らなかったんですけど、戦艦棲姫さんを敵艦隊から連れ出して夏コミに連れて行く作戦が進行していたんですよね。それを援護したのが夕張さんと港湾棲姫さんだったと……え、リトさんもなんですか？　あ、それは失礼しました！ #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

「センカちゃんたちは七駆のみんなが夏コミに連れてってくれるはずだから。私は、こっちに来たの。五月雨ちゃんに会いたかったから……」 「え……ええと」 夕張さんは笑ってそう言ったけど、それってつまり、夏コミを諦めてこっちに来たってことですよね。 #秋雲さんと東方小説書き提督

浅木原忍@31日西う25ab @asagihara_s

「そ、そんな、夕張さん……いいん、ですか？」 「え？」 「だって……夏コミ、今日で……夕張さん、あんなに楽しみにしてたのに……」 私がそう言うと、夕張さんはきょとんと目を見開いて、それから苦笑して私の頭をぽんぽんと撫でて、 「何言ってるの」 #秋雲さんと東方小説書き提督