ラバウル少佐日誌:狂信者と殺し屋編

艦これ二次創作小説です。 駆逐艦娘のキャラ崩壊・過去捏造注意です。
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檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

(MI作戦編は旬を逃してしまった為、無かったことになりました)

2014-10-23 17:07:49
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

------波の揺れが静かに、彼女の意識を振り起こした。 (1) #ラバウル少佐日誌

2014-10-23 17:17:27
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

僅か半年で襤褸布の様になった、かつて彼女の通っていた小学校の制服の袖を握り締め、重く痛む腰を静かに上げる。 どろり、と両脚付け根の間から、白く濁った液体が滴り落ちた。 だが彼女はそんな事、気にも留めない。 ゆっくり歩みを進めて、目の前の扉を押し開けた。 (2) #ラバウル少佐日誌

2014-10-23 17:20:16
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

開け放たれた光の先には、濁った青玉色の水面が延々と続いていた。 空には対照的に美しい青色に、薄く白い雲が掛かっている。 ここに日本人は彼女しかいない。 他は肌の黒い男達がいそいそと、次に襲う船の情報を漁っているだけだ。 (3) #ラバウル少佐日誌

2014-10-23 17:26:54
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

彼女はありきたりな自由が欲しかった訳ではなかった。 学校の友達、塾の友達、そして家族……。 その全ての人間と、彼女の見ている世界にずれが存在していたのだ。 彼女は柔らかいベッドに、美味しい食事に、善良な人間達に、苦しみを感じていたのだ。 (4)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 17:33:16
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

彼女は、醜い世界を求めていた。 それが故に、娼婦も兼ねた少女兵となって、彼女が元いた身分の人間共を殺し、略奪するチャンスを、逃さなかった。 代償は世間的には大きいものだったのかもしれない。 家族、級友の全てを彼女は『生贄』にしたのだから。 (5) #ラバウル少佐日誌

2014-10-23 17:38:43
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

だが彼女にとって、それ等は彼女自身を縛る忌々しい鎖でしかなかったのだ。 彼女は、欲望に忠実にありたかっただけであったのだ。 (6) #ラバウル少佐日誌

2014-10-23 17:45:26
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

殺して奪い、男共に躰を貪らせる快楽は、彼女の灰色をしていた世界に阿片で出来た絵の具を一気にぶち撒けた様な革命を与えた。 だが存外彼女は思い詰めた真面目な顔と、気難しげで事務的な言動を続けていた。 ……それが彼女なりの、幸福に身を委ねた振る舞いなのだ。 (7) #ラバウル少佐日誌

2014-10-23 17:50:24
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

ぼんやりと、彼女は海の彼方を見つめ続ける。 何という事は無い。 ただ、じっと彼女は海の彼方を、見つめている。 (8) #ラバウル少佐日誌

2014-10-23 17:56:14
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「朝潮ー!」 彼女を真実の世界へ引き戻したのは、呆けた調子を装った、一人の少女の声だった。 「どうしたの?荒潮」 キリリ、と勇壮な表情を作り、朝潮は振り向く。 (9)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 17:59:25
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「少佐がお呼びみたい」 何時の間にか彼女の着ていた襤褸布は、目の前の少女と同じ意匠の制服に変わっていた。 両腕には通常の銃器よりも明らかに物騒な火器を着け、背には奇妙な機械を背負っている。 彼女達の乗っている船も、海賊船どころか海軍の輸送船である。 (10)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 18:06:01
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「分かった。じゃあ海上護衛の交替、宜しくお願いするわ」 「護衛……?」 わざとらしく荒潮は首を傾げる。 「さっきまでの朝潮、護衛っていうより、何か思い出してただけに見えたけど……」 「何か思い出しながら目を見張らせてたの」 朝潮は即答し、足早に去った。 (11)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 18:12:40
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……どうか神様、私達から朝潮ちゃんを奪わないでください」 その後ろ姿をぼんやり眺めながら、荒潮はぼやく。 「幸せに生きたいなんて贅沢は言いません。だから私達をきっと、あの子と一緒に死なせて下さい。これ以上苦しむことが無いようにして下さい。どうか……」 (12)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 18:17:27
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「司令官!お呼びになりましたか?」 勢いよく船橋へ乗り込んだ朝潮は、真面目な表情と固い声色で乗員達を威圧する。 唯一人、白い詰襟を纏ったデブの男以外を。 「んむ。今日も元気そうで何よりだ」 「有り難うございます」 はにかんで見せた朝潮へ少佐も笑い返す。 (14)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 18:32:04
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

そのあまりに不気味な笑みに乗員達は、半歩後退りしたが、朝潮は寧ろ……、 恥ずかしげに笑顔の頬を薄桃色に染めていた。 「さて、実はこの海上護衛任務だが……君も察していたのではないか?行き先が何時もとは、違う事に」 「はい。船もかなり大型でしたから」 (15)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 18:36:57
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「そう、実はだな……」 少佐は不気味な笑みを解き、少し困ったような笑みを見せる。 「ソマリア沖に敵の潜水艦隊が現れ始めて、エジプトから仕入れているミイラ粉が止まってしまったんだ」 「そういう事でしたか……」 (16)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 18:53:17
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「アレが無いと魔術実験が支障を来してしまう。が、その事を五十鈴や山城に話したら、アイツ等鼻で笑いやがった」 やれやれだ、といった様子で首を横に降る少佐。 その姿を見つめる朝潮は、少佐に負けず劣らずの卑しい笑みを浮かべている。 (17)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 18:58:32
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「御言葉ですが司令官……」 「何だ?」 朝潮は、そこにいない者を小馬鹿にした表情を浮かべている。 「五十鈴の様な尻軽の低脳女や、扶桑の事しか頭に無い狂った同性愛者等に頼る等と、司令官の威厳に傷が付くも同じです」 「ほう……?」 (18)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 19:04:46
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「この朝潮、確かに駆逐艦娘であるので装甲は薄く頼り無い事でしょう。然し私はその二者より確実に優れたものを持っています」 「忠誠心か?」 朝潮は深く頭を下げた。 (19)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 19:09:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「この作戦、必ずや朝潮は成功させて見せます」 少佐は、その直向きな態度を前に…… 然し、 意地悪い返事を返した。 「それで……私へ忠誠を尽くした見返りには、何が欲しい?」 「えっ……」 (続く)#ラバウル少佐日誌

2014-10-23 19:12:55