ラバウル少佐日誌:狂信者と殺し屋編其ノ弐

艦これ二次創作小説です。 駆逐艦娘のキャラ崩壊・過去捏造注意です。
0
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

(前回までのあらすじ:退屈な日常を捨て、略奪と殺戮の限りを尽くす娼婦兼海賊の営みに明け暮れていた少女。彼女は今、再編された日本海軍に潜り込み『朝潮』の艤装を身に纏い、『少佐』と呼ばれる曲者提督に仕えていた)

2014-10-26 15:40:41
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

(戦争狂の少佐に心酔し心寄せる朝潮は、彼の艦隊に所属する他の艦娘達を蔑んで見ていた。誰も彼の事を快く思っていないからである。だが、その少佐は朝潮に「何を見返りに忠誠している」のか、と問う)

2014-10-26 15:47:03
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「もう下がっていいぞ、朝潮」 「いえ、船員が何か企む可能性も否定出来ません」 わざと、聞こえよがしに朝潮は言い放つ。 「杞憂だ、朝潮」 少佐は眠たげに言い放ち、椅子から腰を上げた。 「そうですか。それでは……」 つかつかと、朝潮は船橋の出入り口へ向かう。 (2)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 15:57:39
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

が、 「……ぐ」 「おい、どうした……?」 少しばかり、船員達がざわめいた。 入り口付近の船員が、不審な動きを見せる。 「司令官、この男が何を後ろ手に持っていたか、お見せ致しましょうか?」 船員の腕を一束ねに抱え込み、その中に握っているものを朝潮は掴む。 (3)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 16:07:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「いや、いい」 少佐は返事をして立ち上がると、 「ぐあァ!」 朝潮が拘束していた船員の左胸を、銃でぶち抜いた。 「な、な、何を……」 船員達は狼狽えながらも、少佐へ皆して銃を向ける。 「船長?」 酷く下卑た嗤みを、少佐は向けた。 (4)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 16:13:17
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「こういった事は信頼の積み重ねだ。私は君が海軍の物資をヨーロッパへ横流ししている事を黙ってやった代わりに、今日までの頼み事をしていた……ここに一つの信頼関係があった筈だ。だが」「ひィッ……」 船長の肩を、きつく掴む。 (5)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 16:19:24
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「それも今で終わりだな」 軽く言って、そして 「グギッ!……」 船長を殺した。 「さて?」 少佐が嗤い、その後ろで朝潮が火砲を構える。 「死にたくない奴は私と取引をしよう。後の連中に用は無い、死ね」 (6)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 16:24:45
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……朝潮ちゃん?」 ふと目を覚ました荒潮は、彼女の視界数センチ先に、愛しき『姉』の顔を見た。 「起こしちゃった、ごめん」 すっ、と朝潮は荒潮との間に距離を空ける。 「別にいいのに」 荒潮がぼやく。 (別に、火薬と血の匂いの事、もう分かってるのに……) (8)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 16:36:48
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ねえ荒潮」 「なにー?」 出来るだけ、何も知らない風を装って、荒潮は問い返す。 朝潮に染み付いていた、一悶着分の血の匂いで全て分かってしまってはいたが……。 「どうして司令官の事、誰も分かってくれないのかな……少し虚しくなっちゃって」 「あらあら……」 (9)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 16:43:19
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

荒潮は困った顔をした。 「少佐は、ああいう性格だから、分かってもらうのなんて、何千年経っても無理じゃないかしら」 「私達でも司令官の事を分かってあげられるのに……どうして……」 「それは逆だと思うわ」 荒潮は、きっぱり言い放つ。 (10)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 16:56:30
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ねえ朝潮ちゃん」 荒潮は、朝潮の背中に視線を刺す。 「私達だけじゃダメなのかしら」 「私達が死んだ時、誰が司令官の為に戦えるの?」 「……長門さんとかは?」 「あいつが頭を下げてるのは司令官にじゃなくて、海軍司令部にの間違いよ」 朝潮は項垂れる。 (11)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 17:01:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……ねえ、朝潮ちゃん」 荒潮は、もう一度だけ朝潮へ訊く。 「朝潮ちゃんは逆に、どうしてそこまで少佐の事好きなの?」 ……答えは暫くの間返って来なかった。 「上官は私達と違って死なないから。だから好きになって、死なれて、それで辛くなる事も無いでしょ?」 (12)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 17:11:54
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「じゃあ、荒潮元気そうだし、また明日ね」 「あっ……」 足早に、朝潮はその場から去ってゆく。 「ま、待って朝潮ちゃ……ひッ」 振り向いた朝潮の顔が、荒潮には一瞬別のものに見えた。 酷く痩せこけてぎらついた目をした、獣か餓鬼のようなおぞましき顔の少女に。 (13)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 17:19:09
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「大丈夫、荒潮。心配いらないから」 こくり、と、ゆっくり頷く荒潮。 出来るだけ朝潮に怖れを悟られないように、彼女は敢えて笑顔を装わなかった。 「荒潮は出来るだけ安全に戦えばいい。その間に私達が戦争を終わらせて、あなたを家族のところへ帰らせてあげるから」 (続く)#ラバウル少佐日誌

2014-10-26 17:25:09