【きょうもまたあの子が】福間健二 #2factory74

タイトルは、ドナルド・バーセルミの短篇「ここにあるこの新聞」の次の書きだしから。「今日もまたあの女の子がやってくる編み針はがね色の編み針を持ってうるさく跳びはねながらやってくる」(山崎勉・邦高忠二訳)。バーセルミ作品はなにかのパロディなのだろうが、こちらは何をやっているのかよくわからない。説明にならないと思うが、日々の反復のなかに、たがいの結びつきなしに入ってくるものに対して、受け身でも能動でもない、素直な反応をしていたいということがひとつある。そう思っていたら、「恋を、しない、のは、だめだ。」という4への素直な反応に出会った。ちょっと驚いた。なにか、自分が追いつめられて泣きだしたいくらいの気持ちになっているような気がしてきた。 で、音楽は、Etta James の「All I Could Do Is Cry」。 https://www.youtube.com/watch?v=UdD-zac4mx8
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福間健二 @acasaazul

緊急の、仕事は、ない、と思う。空は曇っている。どこへ行こう。北にも南にも権威はない。語りおわった物語。さむざむしい土手に置きわすれた黒い帽子も黙っている。火曜日、燃えないゴミの日。財布には千円札が何枚か。新米のおにぎりが食べたい。(きょうもまたあの子が1)#2factory74

2014-10-21 10:34:50
福間健二 @acasaazul

落とし穴、から、這い上がって、地面の図形に安堵する。毎晩のように同じ失敗をしながら、救助されるこのぼくは通りみち。通るものが落としていく針を何本飲んだだろう。できればお断りだが、きょうもまたあの子が来てその得意の死に方を自慢する。(きょうもまたあの子が2)#2factory74

2014-10-22 12:35:23
福間健二 @acasaazul

否応ない、チクチクする、生きていることの確認だったきのうを歩きなおさない。そういうもの、じゃなくて、それだ。それと自分のあいだの苦しみ多い感受性のロープに縛られることだ。まるひら製菓の、タンナファクルー。いつからテーブルにあったか。(きょうもまたあの子が3)#2factory74

2014-10-23 10:36:46
福間健二 @acasaazul

恋を、しない、のは、だめだ。判断、しない、のも。好奇心がない、のも。鳴らなくなっているけど、スロヴェニアで買った笛がそう言っている。よく考えてみれば、やることは山積みだ。いま何が通ったか。醜いプライドだ。始末しないと手遅れになるよ。(きょうもまたあの子が4)#2factory74

2014-10-24 09:36:32
福間健二 @acasaazul

きょうもまたあの子が。やりたいことを隠した地図をもって、曲がり角に。ムラッと、どうしたって植民地分割。日が暮れる。楽しいこと、ちょっとしかない。ぜいたくを、言うな、と封じていい箱じゃないだろう。だったらラグーのカキフライ、もう二皿。(きょうもまたあの子が5)#2factory74

2014-10-25 11:04:31
福間健二 @acasaazul

食べ、歌い、苦しみ、憤激し、笑った。分裂、じゃなくて、液化して循環する、だれの苦手なニューヨークが、ごちそうさまなのか。油のついた手でさわられる。ぼくは生きていた。ぼくの前を行く移住者は、たがいの熟れていない部分に息を吐いている。(きょうもまたあの子が6)#2factory74

2014-10-26 10:57:39
福間健二 @acasaazul

その人たちは、語りかけてくる門が怖い。やっていたことをやっていたと言わずに、忍び歩きの、ティッシュで鼻血をおさえる冬の準備だ。日によって変化する、通れない場所と通れる場所。ある日はざわめく葉の音に追われ、ある日は黒い塔にたどりつく。(きょうもまたあの子が7)#2factory74

2014-10-27 11:56:49
福間健二 @acasaazul

言わなかったのか、言えなかったのか。オレンジ色の朝焼けに屈服しながら老いて、うららかな昼も迷路だ。どこをどう通っても夕焼けの背中に匂う粉をかぶっている。問題は多い。フン! 皮膚のしみを気にしながら手紙を書き、料理をして、だれを招く?(きょうもまたあの子が8)#2factory74

2014-10-28 10:07:15
福間健二 @acasaazul

よけるか、キャッチするか。塔から投げられるもの。まだ十月、まだ迷う。酸素の届かない細胞からの、抗議。耳をふさぐが、赤い実、なっていて。立ちどまる者の、眠る権利を奪う。きょうもあの子の死に方が。できなかったこととやったことのリストが。(きょうもまたあの子が9)#2factory74

2014-10-29 11:15:53
福間健二 @acasaazul

はれつ、する。さいごまで、いく。そうなる夢のテーブルにきみの小さな手とナイフがあるはずだ。窓からだれが覗いていてもいい。長い歳月、歩いて、あらわれては消えるぼくの、ささやかな願い。タンナファクルー、残った一個。半分ずつ食べよう。(きょうもまたあの子が10)#2factory74

2014-10-30 08:23:08