【じゃあね、ラヴ!】福間健二 #2factory75
制作中の、いくつもの作品のあいだを通って、とくに故障の多い秋というわけじゃない。雨に濡れても、ドレスの背中のジッパ―、おしりまでちゃんとおりた。争うのは、獰猛なタオルと果実の香り。香りに勝ってもらうけど、傷あとにはさわるな。火傷するよ。(じゃあね、ラヴ!1)#2factory75
2014-11-06 10:32:29そんな言い方。終わってる。わかってる。でも、お昼はスープとパン。スープには漢字とカタカナが入ってる。わかってないじゃない。玉葱と人参とミートボールだよ。このぬくもりへの、古典的な通路。ぼくが演奏するそれをふさぐ神様になって帰ってくるな。(じゃあね、ラヴ!2)#2factory75
2014-11-07 11:23:20通路をふさぐもの。窓を曇らせるもの。再構成される作品を脱出してきた黒い影でしかない素材が錆びついているのだ。言わなくていい目的を溶かすオイルがここにも必要だ。さわった。さわってしまった。溺れる二人を見すてたのだとしても、泣いてたまるか。(じゃあね、ラヴ!3)#2factory75
2014-11-08 10:53:27エリカを殺して、きょうの、努力。川はコピーされた少女時代の森に流れ込んでいる。何を見出すのか。くやしさからの螺旋と、灰色の岸辺の、灰色の枯枝。いくつかの、そのなかに。しゃべりすぎる分身。逃げようとするから、追う。捕まえる気はないのに。(じゃあね、ラヴ!4)#2factory75
2014-11-09 10:36:54初めはそれだと気づかなかった時計の音と、まだ雨のなかを歩いているエリカの体から放たれる熱。どんな針を隠しているのか。これっきりの、おとぎ話。いいか、簡単にわかる破綻をもったいぶって語りだしそうな分身たちのあいだで雲が抵抗しているのだ。(じゃあね、ラヴ!5)#2factory75
2014-11-10 10:25:32風景が彼を見ている。荒廃し、透明感を失いながら、うるさく背中の目を活動させる秋だ。単純な部品、でも帰る場所のない放浪者になって通りぬけなくては。悲しみで衰弱し、歓びで元気になる。割れても大丈夫。ほら、にっこり笑うと人生これからの別人だ。(じゃあね、ラヴ!6)#2factory75
2014-11-11 09:48:47じゃあね。次に会うときは、たとえば人字草とサルビア。白い花と赤い花を突起ぐるみ入れかえてみせるよ。それまでは覚悟して扉をあけるソウル・キッチン。だれの旋律とも結合しない苦しい目ざめ。いやでも、忘れることを学んで枯れる葉の掃除からの一日。(じゃあね、ラヴ!7)#2factory75
2014-11-12 10:33:03なにもないけど、さあみんなでおいしく食べよう。葉っぱだらけのエプロンの、夢や希望がなくてもへっちゃらクラブ。この人たちのいる未来を忘れていた。はい、いただきます。きのこスープに魔法のスプーン。でも、朔ちゃんのさびしい人格は長居できない。(じゃあね、ラヴ!8)#2factory75
2014-11-13 12:08:49大地の歌なんかじゃないけど、地面からささやくようにうたって、つまりは故障だ。きょうの、有刺鉄線。自動ドアのむこうにならぶ娘たちは、隠れる木が見つからない。みんな修行中なのだ。火は飛ぶ。誘惑もあるだろうが、ぼくは炎になっている暇がない。(じゃあね、ラヴ!9)#2factory75
2014-11-14 12:06:40彼女は虹。どういう意味だったのか。いつか、ではなく、いま、ぼくはすべてを思い出した雲なのだ。雨になってキスする非常線の色。眠りのなかで忍び込む九十九階のアパートですること。ちょっとインチキな東京の炎の夜と、人生論。名残りは惜しいけど。(じゃあね、ラヴ!10)#2factory75
2014-11-15 12:17:45