モーサイダー!~Second Lap~Episode XI

@mor_cy_darにて投稿している連作バイク小説モーサイダー!~Second Lap~Episode XIのまとめです。テキスト版はこちら(http://ncode.syosetu.com/n1122cd/)からどうぞ
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IngaDo type-RR @mor_cy_dar

モーサイダー!~Second Lap~Episode XI #mor_cy_dar

2014-11-03 23:20:45
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

三鳥栖志智は意外にも喧嘩というものをしたことがほとんどない。格闘技の心得もない。  それでも男ならば。ましてや同年代が相手ならば、一目みれば物理的な『解決』が可能かどうか、ある程度の見立てはつく #mor_cy_dar

2014-11-03 23:21:06
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「十秒……いや、五秒あれば、記憶を飛ばすくらいは出来るか……」 「あの、お義兄さん。指をぽきぽき鳴らしながらそういうこと言うのやめてください。  怖いですから」 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:21:19
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「えっと、志智くん。この子は知り合いなんだよね?」  逃走を準備するように身構える金髪の美少年を、瀬尚玲矢(せなおれや)は不思議そうな顔でみつめていた。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:21:34
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「まあ、知り合い……といえば知り合い、かな」  肩をすくめながら志智はその忌々しい姿を半眼で見つめる。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:22:30
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

日原院ティック。  亞璃須の弟であり、そして志智の妹である千歳とは同級生でもある。志智にとってもっとも悩ましいことは、明らかにティックが千歳へ特別な感情を抱いており、度重なる妨害にも諦める様子がないことだった。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:22:46
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「いや、初対面な気もするな。むしろ、名前も知らないように思えてきた。ああ、そうだ。こんなやつは知らない」 「ひどいですよ、お義兄さん……」 「あっ、お義兄さんっていうことは志智くんの親戚なの?  えっと、瀬尚玲矢です。はじめまして」 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:22:58
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あ、はいっ! そうなる予定です! はじめまして、日原院ティックと言います!」 「何がそうなる予定です、だ! さっとその一文字を外せ!!」 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:23:12
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あぐふぐぅぅぅぅぅぅぅっ! お、お兄さん、首っ……首はまずいですってば!……お、落ちますぅ……!!」  刹那、志智の両腕が閃光のごとく走り、ティックの首を締め上げた。必死のタップをあと数秒無視していたならば、救急車の手配が必要になっただろう。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:23:20
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「か、ふ、はぁ……し、死ぬかと思いましたよ」 「ここで一気に葬ってやっても良かったんだがな」 「本気の目で言わないでください……」 「あはは、志智くんとティックくんって仲がいいんだね!!」 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:23:33
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

99パーセント本気の殺意と1パーセントの生を求める必死の抵抗は、なぜか濃密なじゃれ合いに見えてしまったらしい。  にこにこと笑いながら志智とティックを見る玲矢の表情は、どこか母性的なものだった。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:23:41
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「いいなあ、男の子って……うちの弟たちも、よくそんなふうにふざけあってるんだよね」 「いくら何でもここまではしないと思うが……玲矢は弟がいるんだな」 「うん、言わなかったっけ? 弟が二人いるんです。おねえちゃんです。えっへん」 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:23:56
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「えへへー、ティックくんみたいな子だったら、あたしも弟にほしいなあ」 「わーい、ありがとうございますー」 「………………」 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:24:08
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

玲矢の右手がわしゃわしゃとティックの金髪を撫でる。高校二年生の少年は、恥ずかしがる様子もなく、どんな女性でも落とせそうな人懐こい笑顔を浮かべている。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:24:12
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(こいつ……)  その横顔を見ながら志智は思う。ひょっとしたら、この少年は狙い定めた相手なら、大体は射止めてしまえるだけの能力があるのではないかと。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:24:21
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(よりによって、なんで千歳なんだろうな……)  もっとも、それでも今のところ志智のかわいい妹が『大体』に入っていないことは、喜ぶべきなのだろう。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:24:29
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「そもそもティック。お前、なんでこんなところにいるんだよ」 「なんでって……普通にツーリングですけど。お兄さんこそ、どうしてこんなところにいるんですか?」 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:24:47
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「━━姉さんは一緒じゃないんですか?」  金髪の美少年は無垢な笑顔をうかべてそう言った。  まるで、ごく日常的な疑問を口にするように。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:24:55
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「……いや、それは」  しかし、三鳥栖志智には彼の真意がわかっている。日原院ティックはつまり、こう訊ねているのだ。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:25:03
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(……亞璃須のやつにバラされてもいいのか、ってわけか)  それはほとんど反撃不能の脅迫にも等しい。この状況で志智にどんな弁解ができるというのか。  せめて玲矢の方から説明してもらえれば、と思いながら視線を巡らすと、何かを期待するような瞳がそこにはあった。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:25:12
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(俺に何を言えっていうんだよ……)  亞璃須には関係ないとでも宣言してほしいのか。今日は玲矢とだけ付き合うのだと言えばいいのだろうか。 (くそっ)  結局、志智が選んだ行動はすこし離れた自販機の陰まで、ティックを手招きすることだった。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:25:21
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「……おい、何が望みだ」 「えっ、なんのことですかお義兄さん?  ああ、喉が渇きましたね! 僕、カフェオレが飲みたいですね」 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:25:34
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「………………くっ」  黙って志智は自販機にコインを入れた。ごとり、と金属缶が落ちる音。  カフェオレの缶を力いっぱい投げつける寸前のところで志智の手は止まった。 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:26:09
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「……どうぞ」 「ありがとうございます! お義兄さんにおごってもらえるなんて、嬉しいです!」 「缶一本で黙っててくれるなら、これ以上うれしいことはないんだけどな」 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:26:25
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「あはは、そうですねえ。  ところで僕、こんど千歳ちゃんと遊園地でも行きたいなあ、って思ってるんです」 #mor_cy_dar

2014-11-03 23:26:38
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