ラバウル少佐日誌:狂信者と殺し屋編其ノ終

艦これ二次創作小説です。 一部艦娘のキャラ崩壊・過去捏造注意です。
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檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

少佐達がソコトラ島へと上陸したのは正午前の事だった。 (1) #ラバウル少佐日誌

2014-11-09 17:58:37
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「此処はどの辺になる?」 強い日差しの下、不気味な程に汗をかかない一人の男と二人の少女。 男に至っては白く厚い生地の軍服を着ているにも拘らず、暑そうな様子すら見せない。 「知らないわよー」 片方、呆けた様子の少女が答えた。 「いやお前には訊いていない」 (2)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 18:08:09
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ここはソマリア沖から少し外れたインド洋上のイエメン領ソコトラ島スィフィルライアル村になります。貧しい漁村ですが深海棲艦の侵攻が始まった数年前より以前に於いては海賊行為によってある程度生活は成り立っていました」 もう片方、きつい目つきの少女が淡々と言う。 (3)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 18:15:57
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

思わず呆けた様子を見せていた少女とデブの男は、彼女へ視線を向け、ぎょっとした顔を見せた。 「やけに詳しいな、お前」 「私は司令官の右腕に相応しき唯一の艦娘、この位の事は、知っていて当然かと」 「怖いわ、朝潮ちゃん……」 「いや……実に頼もしい」 (4)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 18:20:10
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

朝潮に歩み寄り、司令官と呼ばれた男……少佐は、彼女の見上げる目を覗き込む。 「君の推理を聞こう」 「は?」 「昨日より思っていたが……ある程度、今回の一件について見当がついていると見た。お前の仮説を教えてくれ」 「いえ……そのような事は、決して」 (5)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 18:25:20
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「あ、朝潮ちゃん、司令官……」 二人の沈黙を破ったのは、もう一人の少女だ。 「ごめんね、荒潮」 朝潮は軽く謝り、 「うグ」 少佐を右手の主砲で撃ち飛ばした。 「えっ」 「死にたくなければ私の言う事を聞いて。これからこの村の人達を逃がさなきゃいけないの」 (7)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 18:28:56
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

少佐は汚い黄色の脂肪塊を撒き散らしながら海上に不時着し、血と脂を垂れ流しながら沖へと流れ去っていった。 朝潮はその様子を確認すると、何事か荒潮には分からない言葉で近くの岩礁へ呼び掛ける。 「ひっ……」 現れたのは、数十隻……否、数十人の深海棲艦だった。 (8)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 18:34:08
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「大丈夫、荒潮。この人達は私の昔の知り合いだから」 それだけ言うと、またも朝潮は深海棲艦達と、荒潮の知らない言葉で会話を始める。 深海棲艦達は何事か話し合い、また朝潮へ異を唱えている様子だった。 だが負けじと朝潮も、かなり強気な調子で説得している。 (9)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 18:38:10
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

……やがて深海棲艦達の方が折れたらしい。 戦艦棲姫と、彼女の陰から姿を現した水死体の様に真っ白な肌の老翁が、何度も深く頷く。 振り返った朝潮の顔は、やや明るい笑顔を浮かべていた。 「ごめんね荒潮、待たせちゃって。それと、もう一つだけ、ワガママさせてね」 (10)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 18:43:22
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

夜も更けて日付が変わった頃、緑や赤、黄色の光を浮かべた一団が浜辺近くの林を歩いていた。 それは遠くから見れば何やら綺麗で幻想的だろう。 だが実際のところは、人類の敵対者、深海棲艦が群れを成して陸地を歩いている姿に他ならない。ただ一つ可笑しな事といえば、 (12)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 18:54:00
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

その一団の中に、二人の艦娘もいる事だ。 (13)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 18:54:35
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……朝潮ちゃん、この人達は、一体」 荒潮は、朝潮の事が怖くなっていた。 歳に合わず妙な程に戦いへの戸惑いが無ければ、血や肉も平然と見る事が出来る彼女の異常性に、もっと早くから気付くべきであったと後悔すらしていた。 (14)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 19:00:52
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「あまり詮索しないで、お願いよ、荒潮」 妙にこの時の朝潮は、彼女に対して不親切であった。 「……じゃあ、これはどこへ向かってるの?」 「ごめんね」 「どうして、少佐を撃ったの?」 「今はやめて」 「私達は生きて帰れるの?」 「それは勿論よ」 (15)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 19:04:29
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「こんな何も分からないままで、信じてっていうの……?」 「……あなたは知る必要ないわ。あなたは、こんな事、知っちゃいけない」 (16)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 19:11:07
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「その意見には賛同しましょう。しかし朝潮さん、あなたのやっている事は上官殺しに加えて人類に対する反逆行為ですよ?」 二人も指令室や工廠でよく聞いていた声が、後ろから投げ掛けられた。 その直後だ。 二人の遥か前方、列の戦闘が爆発炎上したのは。 (17)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 19:18:21
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「大淀、さん……!?」 涙を下瞼に溜めた荒潮は、安堵で揺れる声を漏らし、彼女へ飛び付く。 「間に合ってよかった……提督、荒潮さん、朝潮さんを保護しました。予定通りこちらは撤退を始めます」 『うむ、よくやった大淀。朝潮は我が艦隊に無くてはならぬからな』 (18)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 19:23:04
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「間に合わなかった……か……」 ぼそり、と朝潮が呟いたのを、荒潮は聞き逃さなかった。 「朝潮さん、作戦終了です。『囮』としての働き、充分に過ぎる程でしたね」 「事務方が出しゃばるな、何も分からないクセに……」 「はい?」 「ううん。分かった。帰ろう」 (19)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 19:27:04
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

大淀に抱かれ、彼女の胸の内から後ろを見る荒潮。 一体全体何が起きてどうなったのか、彼女はさっぱり分からず終いだった。 深海棲艦達の、彼女には分からない言葉で叫んでいる怒声と悲鳴が、遠くなってゆく。 朝潮は凍りついた表情で、黙々と大淀の後ろを歩いている。 (20)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 19:35:00
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「荒潮」 「なあに?朝潮ちゃん」 一筋の涙が、彼女の目から落ちた。 「私は……どうすれば良かったの?」 (終)#ラバウル少佐日誌

2014-11-09 19:37:19