古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #35

更新三十五回目のまとめです。 サブ島沖海域の主力艦隊との決戦に突入する第六戦隊。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

どこまでも青い、抜けるような、そら。

2014-11-14 23:19:25
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

寄り添うような、見守ってくれるような、二つの白い雲。

2014-11-14 23:19:42
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

最初に現れたのは、南方棲戦鬼が放った艦上戦闘機だった。私たちの上空に差し掛かると申し訳程度に爆弾を投下してくるけれど、機数も少なく艦隊に被害はない。けれど、私たちには脅威にはならなくとも水上観測機は艦戦には太刀打ちできない。これで、私たちは弾着観測射撃を封じられた。

2014-11-14 23:20:55
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

そして、私たちにとっての最大の脅威が、その牙を剥こうとしていた。 「前方一時方向!雷跡4!」 青葉を先頭に単縦陣で進む艦隊の後方から吹雪の警告が聞こえる。そう、それは敵潜水艦の先制雷撃! 「面舵いっぱい!」 青葉の指示に合わせ、艦隊が雷撃を回避すべく右に舵を切る!

2014-11-14 23:26:11
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

敵潜水艦の放った魚雷が私たちのすぐ左横をすれ違うように通過していく!雷撃を無事回避した私は敵潜水艦がいるであろう場所に目を向けた。敵艦隊と砲戦中、背後からあの潜水艦に狙われ続けてはたまらない。私がそう思ったのと同時に、吹雪と叢雲が艦隊を離れ敵潜水艦に向かって突っ込んでいく!

2014-11-14 23:32:32
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「吹雪さん叢雲さん!頼みます!」 「はい!」 「任せなさい!」 私たち第六戦隊に取舵を命じた青葉が吹雪と叢雲に声をかけ、二人もそれに応える。川内たちの強行偵察により、サブ島沖海域の主力艦隊に潜水艦がいることは事前にわかっていた。背中を二人に任せ、私たちは敵主力に向かって突撃する!

2014-11-14 23:39:34
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

すでに敵潜水艦は潜航している。三式水中探針儀で敵潜水艦の居場所にあたりをつけた叢雲が、海面を駆けながら三式爆雷投射機及び手に持った爆雷を四方八方に投射する! 「沈みなさいッ!」 ドドンドンドンドンドオン! 着水し、設定された深度に到達した爆雷が敵潜水艦を圧殺せんと次々に爆発する!

2014-11-14 23:46:12
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「吹雪!どう!?」 敵潜水艦が潜航した海域を走り抜けた叢雲が吹雪を振り返る。吹雪は爆雷を投射せず、主機を止め両耳に手を当てて水中の音を聞き取っていた。 「圧潰音は聞こえない……恐らく小破相当のダメージね」 「上手く逃げたわね。でも二度と頭は上げさせない。古鷹の背中はやらせない!」

2014-11-14 23:52:51
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

叢雲の勇ましい声に勢いづけられ、私たちは全速力で海面を駆けて敵艦隊に迫った。敵艦隊の編成は輸送ワ級elite、南方棲戦姫、戦艦タ級flagship、駆逐ハ級flagship、駆逐ハ級flagship。ワ級を中央に、南方棲戦姫を手前に置いた輪形陣を組み、私たちと同航戦に入る!

2014-11-14 23:57:51
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

敵艦隊を右手に仰いだ青葉が右手を上げ、そして鋭く発する。 「目標、敵サーモン方面主力艦隊!全砲門、開けッ!」 ドウンドドウンドウン! 先頭から青葉、加古、私、古鷹ねーさんの順で単縦陣を組んだ第六戦隊4隻が一斉に砲火を開き大気を震わせる!目標は輪形陣の奥と後方の駆逐ハ級だ!

2014-11-15 00:06:56
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

20.3㎝(3号)連装砲から放たれた無数の砲弾を浴び、瞬く間にハ級が損傷する!私たちの目的は敵艦隊旗艦のワ級を撃沈すること。しかし、その護衛についている南方棲戦姫や戦艦タ級は私たち重巡の火力では昼戦で撃破するのは難しい。夜戦に持ち込むしかないけれど、その前に敵艦隊の頭数を減らす!

2014-11-15 00:15:17
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

しかし、敵艦隊も黙ってはいない。 ドオオオオン! 突如、轟音と共に視界が暗くなった。南方棲戦姫の16inch三連装砲から放たれた巨弾が私の目の前に落ち、私の背丈の何倍もの高さの水柱を上げたのだ。肌が粟立っているのは、砲弾が海面を叩いた水飛沫を浴びたことだけが原因ではない。

2014-11-15 00:20:40
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

思わず硬直した足を、私は連装砲を握った手で殴りつけて再び走り出した。お互いの火力を最大限に活かせる同航戦の体勢、南方棲戦姫とタ級の巨弾が次々に私たちの周囲に落下し、当たらずとも至近弾で徐々にダメージが蓄積されていく。けれど、恐怖に飲まれるなと自分に言い聞かせ、敵艦隊に撃ち返す!

2014-11-15 00:28:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

その時、視界の端に何かが映った。私たちの上空を、何かが飛んでいる。あれは、まさか。 ドズンドズンドズン! 前方にいる青葉のやや左側の海面にタ級の砲弾が着弾する。青葉は怯んだ様子もなく砲撃を続けているけれど、あれは、まずい。空にいたのはタ級の偵察機。タ級の弾着観測射撃が来る!

2014-11-15 00:36:45
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

偵察機からの観測結果を受けてタ級が照準を修正したのが見えた。全身にぞわっと鳥肌が立つ。戦艦の一斉射をまともに食らったら、重巡はひとたまりもない。私は思わす叫んでいた。 「青葉ッ!」 私の声に反応した青葉が後ろを振り返ろうとした。その瞬間、タ級の主砲が再び火を噴いた。

2014-11-15 00:42:32
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

タ級の砲弾が狙い過たず青葉に殺到する!私が迂闊に声を出したせいで、青葉の反応が遅れた。青葉の目が、ようやく敵弾に向く。けれど、今から回避行動をとる余裕はない!私が青葉をかばう時間もない! ドオドオオオン! 敵弾が着弾した。青葉のいた場所が、真っ白な水柱に包まれた。

2014-11-15 00:50:33
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉、青葉。そんな。 すでに限界近くまで回していた機関にさらに負荷をかけ、速力を上げて青葉のもとに駆け寄ろうとした。けれど。 「大丈夫」 敵味方の主砲が火を噴く音と砲弾が海面を叩く音に占められた砲戦の最中、私のすぐ前にいる加古の声が、私の耳にはっきりと聞こえた。

2014-11-15 00:58:56
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

一体何を、と加古に問い返そうとしたその瞬間!青葉の五体満足な姿が水柱の向こうに飛び出した!砲弾が至近弾となったか艤装や制服はあちこち切り裂かれているけれど、負傷したような様子は見られない!さっきの青葉は振り返ろうとしたのではなくタ級の弾着観測射撃を読んで回避しようとしていたのだ!

2014-11-15 01:04:29
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉は一斉射目の砲弾が落ちた方向に突っ込むように回避した。戦場では「砲弾が一度落ちた場所にはもう砲弾が落ちない」という迷信めいたジンクスが信奉されている事があるけれど青葉には確信があった。「一斉射目は近すぎたのでタ級は二斉射目では遠目を狙うだろう」と読んで逆の方向に回避したのだ!

2014-11-15 01:13:14
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

圧倒的な火力と装甲を誇る敵艦を相手取っているのに、青葉にはまるで浮足立ったところがなかった。私たちに的確に指示を出し、敵艦隊の砲撃を回避しやすい運動をとらせている。すでに駆逐ハ級は二隻とも沈み、タ級と南方棲戦姫も小破させている。はるか前方の海域に、夜の帳が降りているのが見えた。

2014-11-15 01:16:54
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

あの海域まで敵艦隊を引きずり込み、重巡得意の夜戦で片を付ける。やれる。私たちならそれができる。私が自分たちの勝算を確信した、その時。 「衣笠ッ!」 背後から古鷹ねーさんの警告。その瞬間、私の主観時間が泥のように鈍化した。全ての音が消え、景色が白黒になる。ゆっくりと右に顔を向ける。

2014-11-15 01:22:42
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私の体も含め全ての物体の動きが遅くなった世界で、南方棲戦鬼の放った16inch砲の砲弾がゆっくりと私に迫ってくるのが見えた。それを見た瞬間、私はどこか他人事のように「あ、これは当たるな」と思った。回避は間に合わない。青葉の動向を気にかけ過ぎて、敵艦への注意がおろそかになっていた。

2014-11-15 01:30:19