【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】
- karitoshi2011
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1【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】『学術の動向』2014年11月号掲載の福島医大精神医学・矢部博興教授の論を検討する。特集「…原発事故にともなう放射線健康不安と精神的影響…」から。川上・安村氏によるまとめの紹介①togetter.com/li/744914 の続き。
2014-11-19 08:33:00【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?①】
月刊学術の動向
2014年11月号
http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/
特集
福島第一原発事故にともなう
放射線健康不安と精神的影響の実態および地域住民への支援
特集の趣旨 / 川上憲人 ・ 安村誠司 ・ 春日文子
3.11後の放射線被曝と「精神的影響」の複雑性 / 島薗 進
県民健康調査からみた避難者のこころの健康問題とそのケア / 矢部博興
福島プロジェクト
―放射線ストレスへの心理支援― / 秋山 剛 ・ 萱間真美 ・ 大野 裕 ・ 川上憲人
地域の現場からみた福島県被災者の多様な不安と困難 / 草野つぎ
日本学術会議主催学術フォーラムを終えて / 川上憲人 ・ 安村誠司
2【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】矢部博興「県民健康調査からみた避難者のこころの健康問題とそのケア」「2011年3月11日の東日本大震災に引き続いて発生した大津波は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を引き起こし、福島県全県民を終りの無い放射線災害に巻き込んだ。」
2014-11-19 08:33:193【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】「内部・外部の放射線被曝量は低いものであったが、命の危険や子孫への危険を感じた福島県民は放射能被曝を恐れた。さらに、低線量被曝を受けた福島県民は、心理社会的問題やスティグマの問題に直面することになった」「福島県民」だけが原発被災者?
2014-11-19 08:33:424【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】「低線量放射能被曝を受けた避難者が直面する心理学的問題には二つの側面が考えられる。一つは、放射能自体によって引き起こされる可能性が危惧された脳への直接的影響であり、もう一つは、暴露に対する心理的ストレスによる精神的疾患などである」。
2014-11-19 08:34:035【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】①で紹介した川上憲人・安村誠司両氏の論考で示されていたように、原発事故による被災者への精神的影響は複雑である。だが、矢部氏の論考の冒頭は「放射線の健康への影響」という枠組みのみで考えられている。これは主要参照論文からも分かる。
2014-11-19 08:34:216【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】参照されているのは、放射線の健康影響を論じる学術誌掲載の論文や書物である「低線量放射能被曝を受けた避難者が直面する心理学的問題」という問題設定は、原発災害全体の精神的影響や心理学的問題を問うていない。放射線被曝の影響だけを問うている
2014-11-19 08:34:497【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】「一つは、放射能自体によって引き起こされる可能性が危惧された脳への直接的影響」が問われているのは異様だ。「放射線」と「心・精神」を媒介するものとして「脳」に注目しているが、もっと大切な問題が多々あると思われるからだ。
2014-11-19 08:35:018【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】「もう一つは、暴露に対する心理的ストレスによる精神的疾患」とあるが、これもきわめて狭い問題設定だ。放射能で地域が汚染されると生活が全面的に影響を受ける。避難する場合も避難しない場合も多大なストレスが生じる。その全体が問題であるはず。
2014-11-19 08:35:209【原発事故による精神的影響…捉えるか?②】精神医学者がこのような狭い問題設定をするのか、その理由は理解が難しい。BrometやHavenaarの名前があがっているが、その研究は「チェルノブイリ事故後25年の心理学的影響についてレビューした」というもの。研究文献を調べたということ
2014-11-19 08:36:4210【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】すると「脳への影響」は「ある」もあり「ない」もあって一致しなかった。「明白だったのは、一般的な集団研究からの報告で、事故の影響を受けた住民には、抑うつ、不安、PTSDの増加と同時に、否定的な健康認知が一貫して認められることと」
2014-11-19 08:37:0311【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】「彼らの母親がハイリスク群のままであり続けていることであった」と矢部氏は述べている。これは放射能への不安が「抑うつ、不安、PTSDの増加と同時に、否定的な健康認知」をもたらしたと解するものなのだろうか。この論考ではよく分からない。
2014-11-19 08:37:2112【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】この論考は2006年の「チェルノブイリフォーラム報告書」にも言及している。「Brometら(2012)が加わったチェルノブイリフォーラムでは、チェルノブイリ事故後に認められたメンタルヘルスの問題の多くは、うつ病、不安、PTSD、」
2014-11-19 08:37:4113【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】「原因不明の身体症状、そしてスティグマであったと報告している。そして、最終的には『チェルノブイリ事故後の最大の健康問題はメンタルヘルスであった』という結論が確認された」と述べている。引用は放射線防護研究誌に掲載された論文。
2014-11-19 08:37:5814【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】「抑うつ、不安、PTSDの増加と同時に、否定的な健康認知」について、それが何によって生じたのか、チェルノブイリフォーラム報告書でどのような推論がなされているのか紹介されていない。「放射線不安」が主因と判断する理由も述べられていない
2014-11-19 08:38:2115【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】「放射線への不安」こそが悪しき精神的影響の要因だと述べてきたのは長瀧重信氏togetter.com/li/355957 togetter.com/li/354973 「放射線への不安」解消こそ課題という論は長瀧氏周辺の独自の論か?
2014-11-19 08:40:05【長瀧重信氏と山下俊一氏のリスコミ経験】②
【長瀧重信氏と山下氏のリスコミ経験】③
16【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】ただし、Brometらの論も「放射線への不安」に焦点をあてる危うさをもっており、それは矢部氏の論にも影響を及ぼしている。原発事故の複雑な精神的影響が「放射線への不安」問題にすりかわる傾向。①で紹介したが、こうした論は修正が必要。
2014-11-19 08:40:2517【原発事故による精神的影響をどう捉えるか?②】1)原発事故の精神的影響は複雑。2)「不安」を抑えるということばかりに焦点をあてた対応は問題がある。togetter.com/li/744914 『学術の動向』2014年11月号の特集「放射線不安と精神的影響」の紹介。続
2014-11-19 08:40:38