ラバウル少佐日誌:『艦隊コレクション』α編

檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

#ラバウル少佐日誌

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－－－－－－鷹の様な目つきをした女が、青い海と空を見つめていた。 (1) #ラバウル少佐日誌

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彼女は然し堅牢なる表情とは裏腹に、目の色は何処か達観した柔らかさを持っていた。 見ているものは、今ここにある人の営みではないのだろう。 かつて彼女の祖父や曽祖父の代に存在したものへと想いを馳せているのか、或いは……、 いずれ来る、明日を見ているのか。 (2) #ラバウル少佐日誌

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「お前には何が見える？」 彼女を後ろから呼んだのは、 「……過去と、未来と、そして諸行無常の人の輪廻です、武蔵様」 日に焼けた様な色の肌、黄ばんだ銀髪、そして羽織っただけの衣服……正に、野生児。 眼鏡が彼女の姿を、現代人の枠にギリギリで繋ぎ止めている。 (3) #ラバウル少佐日誌

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「滅びは見えないか？我等人々が、あの土左衛門共に食い滅ぼされる日が」 おどけた様な、試す様な、不気味な笑みを武蔵は浮かべる。 「我等が老い朽ちた後も、人は益々生き永らえ続ける事でしょう」 「長門」 虚ろな笑みだ。 「私を稚児扱いするな」 「滅相も無い事」 (4)#ラバウル少佐日誌

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「私には見えるのだ。人の弱さが、愚かさが。それ故に尚見えるのだ。惨たらしき終わりの時が」 長門は、ふふ、と笑んだ。 「何が面白い？」 同じ様に武蔵も嗤う。 「いえ……見聞の少ない者は、こぞって狭い考えでしか薄暗い明日を読めないのですね、と」 「何……？」 (5)#ラバウル少佐日誌

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それきり、長門は呼び止める武蔵の声を背に、何処かへと歩き出す。 (所詮人は如何なる身分の女の腹から産まれても、同じ人なのだな。それ故に幸いであり、それ故に……) 早歩く長門は、肩で切った風に大淀の抱えていた書類が巻き込まれた事にも気付かない。 (6)#ラバウル少佐日誌

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……やがて速くなる脚はひた走るまでに至り、彼女は遂に行き止まりへぶつかった。 そこは、ラバウル基地の船渠であった。 彼女の所属する『少佐』の艦隊だけでなく、この基地を拠点に戦う全艦隊の艦娘が身に纏う艤装の修理点検を行う場所だ。 (7)#ラバウル少佐日誌

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……暫し立ち止まっていた長門であったが、行き先を思い出したかの様に、彼女は歩みを再び静かに進めた。 入り口付近の駆逐艦艤装が並べられているエリアから暫く歩き、潜水艦娘用の地下出撃室行きのエレベーターへ乗ると、階数表示パネルへ両目を近付けた。 (8)#ラバウル少佐日誌

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何かを認証したのか、エレベーターは下へは行かず上へと進む。 数秒、低く唸る駆動音を上げた後に扉が開いた先には、壁そして天井がコンクリートの打ちっ放しになっている、赤絨毯の敷かれた広大な空間が広がっていた。 (9) #ラバウル少佐日誌

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「Oh……？ナガト！また艤装とmeetingしに来たノー？」 赤絨毯を敷いたのはソファに腰掛けたまま長門へ振り向いた彼女でなく、この基地に属する元帥達の指揮下にある金剛達だ。 「……いざという時に、身体と鎧がより馴れ合っていた方が良いだろう？金剛さん」 (10)#ラバウル少佐日誌

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「ホントにそれだけナノ？」 長門は足を止めた。 「それ以外に何があるんだ」 「知ってるのはナガトの方デショ？」 「……『あなたも』なのか？」 「Noデース。でも風の噂に聞いた事有りマース」 クッキーと紅茶をテーブルへ置き、金剛は長門の前に仁王立つ。 (11)#ラバウル少佐日誌

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「自衛隊からこっちへ来て、初めて長門の艤装を着けてからずっとだ。5分から10分くらい、妙なものを見せられる」 「古い艤装着けてる子達、結構disease(ビョーキ)で解体願い出してたらしいネ」 「だが……だが、然しだ」 思い詰めた顔で、金剛を見下ろす。 (12)#ラバウル少佐日誌

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「『あいつ』は未来を知ってるんだ……」 「Wow……」 (続く)#ラバウル少佐日誌