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翠寿
@suizyu329
12。クロハの案内のもと、オレ達は海岸沿いを進んでいくことになった。諸島が連なっているそこをいくつか経由していかなければならないらしく、以前の旅で船酔いした苦い記憶が蘇る。露骨に顔を顰めたオレにクロハは薄く笑って島を指差す。そこにはいくつもの橋が島々を繋ぐ姿があった。#続空想紀行
2014-09-25 21:38:06
翠寿
@suizyu329
13。島同士を繋ぐ架け橋のおかげで船を利用する必要がなくなる。潮が引いている時にしか使えないその橋を渡りながらオレはホッと安堵の息を吐いた。海面との高さがあまりないので青白い海の上を直接歩いているようだ。砂浜は白く輝き、光の粒が煌めいている。バカンスには最適な光景だ。#続空想紀行
2014-09-26 22:57:24
翠寿
@suizyu329
14。諸島はリゾート地として使われているものがほとんどで、趣あるホテルがいたるところに建てられている。二つ三つと島を渡り、そこでクロハの歩みが止まった。何事かと思えば次の島に続くはずの橋がない。なんでも二日前の嵐で橋を支える柱が壊れてしまったらしい。#続空想紀行
2014-09-27 21:59:18
翠寿
@suizyu329
15。船を利用するには金もかかる。どうしたものかと頭を悩ませるオレ達の耳に甲高い指笛の音が届いた。見れば自信満々の表情でアヤノが彼方の空を見つめている。数分しないうちに近づいてきた羽ばたきの音にオレはなるほどと納得した。ひーすけは竜だ。人を乗せる教育もされている。#続空想紀行
2014-09-28 23:20:26
翠寿
@suizyu329
16。さすがに三人を乗せて長距離飛行は難しいので次の島に着くまでひーすけの背を借りることになった。アヤノを先頭にして男二人が竜に跨り、大きな翼が砂を打つ。ブワリと舞い上がった視点に上擦った悲鳴を飲み込んだ。随分と頼もしくなった。まだ肩に乗るサイズだった頃が懐かしい。#続空想紀行
2014-09-29 23:22:41
翠寿
@suizyu329
17。大きくなったとはいえひーすけが竜種の中で小柄な方の分類に入るのは変わりない。成人男性二人の荷は想像以上に重い、空中飛行はあっという間に終了した。砂浜に降り、浮遊感から解放されて胸を撫で下ろすオレと対照的にクロハは残念そうだ。ひーすけを労うアヤノは苦笑していた。#続空想紀行
2014-09-30 22:41:52
翠寿
@suizyu329
18。諸島地帯を抜ければ途方もなく広い砂海がオレ達を待ち受けていた。水気を孕んだ砂浜だから砂漠よりはマシだが見た目は大差ない。どうやって超えるのか問えばしれっと「船を使う」という答えが返ってきてオレはその場に崩れ落ちそうになった。結局使うのかよ！叫ぶのも当然だろう。#続空想紀行
2014-10-01 22:41:41
翠寿
@suizyu329
19。利用するのは砂海専用の船、俗に砂船と呼ばれる代物だ。砂の波の動きを捉え滑るように移動する船底は海に比べて上下運動が少ない。これなら酔わずにすむかもというオレの期待は乗船して十分で打ち砕かれた。船の縁にしがみ付いて唸るオレの後でクロハが爆笑している。覚えとけよ。#続空想紀行
2014-10-02 23:30:35
翠寿
@suizyu329
20。船から降り、足取りも覚束ないオレのためにと小休止を挟んで旅は続行。白い砂浜に別れを告げて一行は北上する。気候的にも住みやすいのか、多種多様な魔法生物達が林の影から見え隠れしていた。自然が豊かなおかげだ。人を恐れず近づいてくる動物との戯れに心を癒される。#続空想紀行
2014-10-03 23:02:20
翠寿
@suizyu329
21。アヤノの腕の中で鼻を鳴らしていた綿飴のような魔法生物が突如怯えを示す。見れば二人の顔つきが変わっていた。ざわめく林の奥、逃げ回る魔法生物に刃を向ける数人の男の姿を捉える。密猟者だとクロハが低い声で呟いた。鉄の檻のなかにはたくさんの魔法生物が押し込められていた。#続空想紀行
2014-10-04 23:16:19