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【お玉さんの読書マラソン】名探偵図鑑完読作戦 第2部
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羽田詩津子の新訳版では登場人物の一人であるグリゼルダさんがかなり魅力度アップ↑で書かれてるので、ミス・マープルの厄介な印象は薄らいでますが、ミステリとして重要な幾つもの部分がサラリとした表記で訳されているので、正直、あまり好きではないのです。 『牧師館の殺人』は田村隆一版がマスト
2015-01-02 01:08:24![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
あっ、全然話は変わりますが、ウルトラ大傑作『五匹の子豚』は田村隆一の翻訳の旧版より、クリスティー文庫での新訳の方がさらに切れ味よくなっているので、2010年以前に『五匹の子豚』を読んでいる方は、是非、訳違いの再読をオススメします♫
2015-01-02 01:09:02![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
で、『牧師館の殺人』に関しては、あまりにチョロっと参戦なのに、ドえらいくらい傍迷惑なミス・マープルが見られるわけで、 この長編でのキャラクターイメージがアタマにこびりつきすぎて、他のシリーズ作品を読むときかなり障害になった、という個人的事情も。 『動く指』とかかなり損したよ〜、と
2015-01-02 01:09:37![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
よく考えなくても、『牧師館の殺人』と『書斎の死体』の12年間だけじゃなく、 トミー&タペンス『秘密機関』(1922年)と『NかMか』(1941年) バトル警視『七つの時計』(1929年)と『殺人は容易だ』(1939年) とポアロ以外の名探偵は、シリーズにかなりの断絶が存在してる
2015-01-02 01:10:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
『火曜クラブ』(1932年)以降のアガサ・クリスティーの仕事は、ほとんどエルキュール・ポアロの冒険譚に充てられている。 しかし、30年代後半からは彼を描くのに飽きたのか? 『そして誰もいなくなった』みたいな単発モノや、先に挙げた過去キャラの復活などに精力が注がれるようになるのね
2015-01-02 01:11:21![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
ポアロに飽きたというよりカウンターやら反動の方かな? ポアロはホンマええ名探偵なんだけど、とにかく自己主張が強すぎるわけで……。 後のポアロ作品でオリヴァ夫人(職業ミステリ作家)の口を借りて発せられる様々な愚痴って、クリスティーのポアロというキャラクターに対しての本音なんやろね。
2015-01-02 01:11:54![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
二作目の『書斎の死体』より後のミス・マープルものは名探偵役がミス・マープルでなければならない、エルキュール・ポアロでは成立しないという作品構造上の理由がある。 さんざん言ってる、前期作品では人の噂を束ねる安楽椅子探偵の側面が、後期作品では正義の執行者である側面が、その理由にあたる
2015-01-02 01:12:19![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
さて『牧師館の殺人』だ。 ……これを考えたとき、登場場面が少なく安楽椅子探偵気味な推理を行っているわけだが……、『書斎の死体』以降の前期ミス・マープルとは乖離があるように感じるのだ。 これが「クソババア(笑)」と「クソババア」だ。 キュートな部分のない、ただただ嫌なだけのお婆さん
2015-01-02 01:13:29![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
『牧師館の殺人』のミス・マープルはホント嫌味ったらしい。以後のミス・マープル作品で見られる人生経験に裏打ちされた人間観察や経験則からの推理などというモノも使わない。牧師館への人の出入りのタイムテーブルとトリックへの疑問からかなり早い段階で犯人を特定させるのに、それも押し黙っている
2015-01-02 01:14:20![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
先に申し上げたとおり、ミス・マープルを楽しむ上で『牧師館の殺人』に関しては別段読まなくてもいい作品だと思う。 正直、オレの中ではミス・マープルの一作目というより、クリスティー10作目の長編という認識が強い。同時に彼女の転換期となった小説じゃないのかな? ということも
2015-01-02 01:15:46![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
話は飛ぶ。 クリスティーの作品の中でのベストな一発ネタワントリックミステリというと、『アクロイド殺し』や『オリエント急行の殺人』『そして誰もいなくなった』といった作品より、ノンシリーズの『シタフォードの秘密』がまず思い浮かぶ。あの小道具の使い方も上手いけど「えっ、そんなのアリ?」
2015-01-02 01:17:09![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
坂口安吾もオススメな『シタフォードの秘密』は『牧師館の殺人』の翌年に発表されている♫ 『シタフォードの秘密』で見せているワントリックの可能性の追求、ちょっとした言葉尻から明らかになる事件の動機、軽妙な話の運び方。かなりミステリとしても、娯楽小説としても、力の配分が上手くなっている
2015-01-02 01:17:39![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
で、アガサ・クリスティーがとびきり上手な娯楽小説の書き手だということは、皆様ご存知だと思うんですが……、 案外初期の作品はミステリ度数がモリモリで、解答を知ってもイマイチ納得のできない、分かりにくい作品も多かったわけなんよね。青列車とか、ゴルフ場とか。もちろん『牧師館の殺人』もだ
2015-01-02 01:18:06![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
で、次作の『シタフォードの秘密』、『邪悪の家』『エッジウェア卿の死』あたりから、情報の見せ方とズらし方で謎を作り上げ、細かい小ネタでいじわるな部分(マニア的な喜び)を残しておきながらも、最終的にはかなり明確でスッと呑み込める解答が用意される。そんな上手さが見えるようになってくる
2015-01-02 01:18:53![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
そう、僕らがよく知っている「いかにもアガサ・クリスティーっぽい」上手さが、『シタフォードの秘密』『エッジウェア卿の死』あたりから発生してくるのだ。 その後もクリスティーは様々な試行錯誤を繰り返してくれるわけだが、『牧師館の殺人』まではサービスが過剰すぎてモヤッとしてる感が大アリだ
2015-01-02 01:19:32![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
そして、ここからはかなりのネタバレだが、この『牧師館の殺人』は……、彼女のデビュー作である『スタイルズ荘の怪事件』と、かなりの大部分トリックが似通っているのよね。 もうセルフリメイクといっても過言ではないくらい…… もうトリックの使い回しといっても過言ではないくらい……
2015-01-02 01:20:08![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
さて『スタイルズ荘の怪事件』 この小説はアガサ・クリスティーの一作目であり、エルキュール・ポアロの初登場作品なのであるが……、 ……意外な犯人を作り出すためのトリックが「名探偵を含む捜査員の脳細胞が少しお馬鹿でないと成立しない」という制約が存在している……
2015-01-02 01:20:37![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
『スタイルズ荘の怪事件』 で、ポアロはそれにノっかっちゃうわけで、以後のエルキュール・ポアロの自信や態度と比較すると、意外な犯人を暴き出す快刀乱麻な推理でケアはされている部分はあるけど……、ちょっとおマヌケな印象を覚えちゃうのよね。 いろいろ読んだ後の再読時は特に……
2015-01-02 01:22:06![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
一応「アリバイトリック」が更に付加され、とあるヘンな物証というプラスがあるのだが…… 『スタイルズ荘の怪事件』で使用されたトリック、あの二つの要素が組み合わさったトリックは、全くそのままのカタチで『牧師館の殺人』でも使用されているのだ。
2015-01-02 01:22:59![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
なので、捜査員のアタマを少し弱くしなければ(弱くしすぎるとダメなのもポイント)成立しない構造もスタイルズ同様『牧師館の殺人』は持ってるわけで……、 名探偵をおマヌケにしなければいけないジレンマの解消のため→捜査と途中の推理の役割は脇に振られ、必然推理スタイルは安楽椅子のそれとなる
2015-01-02 01:23:44![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
『牧師館の殺人』でのミス・マープルの造形は『アクロイド殺し』あたりのエルキュール・ポアロを女性化&高齢化させた程度のモノなので、最後の囮捜査の提案くらいしか独自性がなく、そんな人物故に「クソババア」になっちゃっているわけね♫ あなた、そんなこともわからないのですか?
2015-01-02 01:24:30![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
『牧師館の殺人』は別段名探偵役がエルキュール・ポアロでも成立する作品なんだけど、それをやってしまうと、ただの『スタイルズ荘の怪事件ふたたび』となってしまうので……、ミス・マープルの出馬となったのかのぅ? というそんな邪推
2015-01-02 01:25:27![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
トミー&タペンスを用いたら、もっと探偵役がドキドキワクワクさせてくれる活動的な内容になるんじゃないかな? と考えたりもしたが、トミー&タペンスは「スパイ物」というジャンル意識にとらわれたのかな? 謎解き小説のポアロにスパイ物をやらして大火傷した『ビッグ4』の先例もあるし……
2015-01-02 01:26:00