【ヒエキヤマ】7話 時雨の朝

時雨は憶測ばかりで不安になっていた自分の気持ちを整理するため、山城と話そうと決める...。 こちらのまとめを修正した最終決定版がpixivに上がっています こちらからどうぞ→http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4642612 続きを読む
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桔山 海 @as_keito

もう辺りが明るくなってきた。何だか眠れなかった。そう、眠れない理由は、はっきりしている。山城の左手に白く光るユビワがあったから。僕はあのユビワの持つ意味を提督から聞いて知っていた。山城がどういう思いであのユビワをしているのか、それが気になっていた。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:05:27
桔山 海 @as_keito

僕には二つの予想があった、一つはあくまで信頼の証として受け取ったということ。もう一つは可能性は薄いけど、愛の証として受け取ったということ。はっきり言ってこれは無いと思う。でも、まだ直接山城に聞けていない。これが僕の想像力を変に掻き立ててしまっていた。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:10:38
桔山 海 @as_keito

ユビワの性質上、山城なら提督の思いには応えなくても受け取ることがあるかもしれないと思う。理由として山城は時折、提督に対する感謝を語ることがあったから。でも、それは愚痴の形を取っていて直接的ではないけど、言葉の裏には感謝を感じられる、そんな言い方だった。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:15:50
桔山 海 @as_keito

山城はそうやって、一見悪く言ってるような言動の中に優しさが隠れていて、長く一緒にいるとたくさんの魅力に気づいて好きになってしまう、そんな人。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:21:01
桔山 海 @as_keito

提督も山城が来てからよく秘書にしていたからそれで好きになってしまったのかな。提督はユビワさえ貰ってくれればいい、そう言っていたね。  僕はどういう結果になったらいいのか、いまいち曖昧な気がする。曖昧なうちは山城に思いを伝えてはいけないような気がする。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:25:13
桔山 海 @as_keito

「よし」 今日、山城と話そう。今、気になっていることはっきりさせて僕も心を決めようと思う。 「...うーん」 ああ隣の布団で寝ていた夕立を起こしてしまったみたいだ。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:30:27
桔山 海 @as_keito

「ごめんね、おこしちゃったかい?」 「なんかお腹減って起きたっぽい」 「ふふ、じゃあ食べに行こうか」 この鎮守府はほとんどが二人部屋。僕は夕立と一緒の部屋。提督に言えば空いている一人部屋を使わせてくれるみたいだけど、あんまり使う人はいないかな。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:35:37
桔山 海 @as_keito

そういえば最近来た早霜は一人部屋みたいだけど、さみしくないのかな。 僕と夕立は布団をたたみ着替え始める。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:40:46
桔山 海 @as_keito

夕立は僕が着替えていると気付かれないようにチラチラ見てくることがある。そのくせ僕が夕立を見ると恥ずかしいから見ないでって言う。今日は特に見られている感じはしなかったけど。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:46:01
桔山 海 @as_keito

僕たちはいつも鎮守府の敷地内にある間宮食堂で食事をするんだ。僕はいつも和食定食を頼むんだけど、夕立は気分で和食だったり、洋食だったり、日替わりのものだったりいろいろ。 僕と夕立は四人席に向かい合って座わり、箸を取る。 「いたただきます」 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:50:10
桔山 海 @as_keito

今日の夕立は和食っていう気分みたい。でも夕立はお腹が減って起きたという割には食が進んでいないような感じだった。そのせいか今日は珍しく僕の方が早く食べ終わっていた。いつもだったら、夕立の方がガツガツ食べてすぐにたいらげてしまうんだけど...。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 21:55:23
桔山 海 @as_keito

「僕の方が早いなんて珍しいね」 「うーん、少し考え事してたの」 「そう...良かったら話聞くよ」 夕立は首を横に振ると残っていた和食定食を一気にたいらげ、ニカッと笑った。なんだか無理してそうだね...。あとで、ちゃんと聞いてあげよう。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:00:36
桔山 海 @as_keito

「おはよう二人とも」 扶桑の声がして僕が振り返ると山城と一緒に朝食を持って立っていた。 「おはよう扶桑、山城もおはよう」 「扶桑さん、山城さんおはようございます」 「隣いいかしら」 「うん」 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:05:04
桔山 海 @as_keito

扶桑は奥の夕立の隣に座ろうとする素振りを一瞬見せたけど山城の方が早く夕立の隣に座ってしまったので僕の隣に座った。扶桑も山城に気を遣おうとするんだけど、やっぱり山城が扶桑に対して先に気を遣って行動してしまう。この二人の側にいると割とよく見る光景。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:10:14
桔山 海 @as_keito

この光景を見るたびに扶桑を応援したくなる。僕が扶桑の肩に手を置きうんうん頷くと、扶桑は苦笑い。僕は前にこのことについて扶桑と話したことがあった。扶桑としては姉らしいことをしてあげたいと思っているみたい。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:15:25
桔山 海 @as_keito

でも僕はね、扶桑は十分姉としての役割を全うできていると思うよ。 扶桑は出撃で疲れて帰ってきた山城に自分の姿を見せる、ただそれだけで癒してしまう。これはすごいことだと思うよ。山城が君との関係に満足しているからこそできることじゃないのかな。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:20:36
桔山 海 @as_keito

山城は扶桑のために頑張れる人で、扶桑はそれを支える人、二人はそういう関係なんじゃないかなって僕は思ってる。 それを聞いた扶桑はしばらく考えている様子だったね。扶桑は山城からたくさんの優しさをもらうから、何かでお返しをしたくなるっていう気持ちは僕にもよくわかるよ #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:25:47
桔山 海 @as_keito

「ちょっと時雨、何姉さまと二人だけでニヤニヤしてるのよ私たちも混ぜなさいよ、ねえ夕立」 「仲間はずれは良くないっぽい」 「ふふ...二人には内緒よ」 そう言って口の前で人差し指を立てる扶桑。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:30:59
桔山 海 @as_keito

この仕草は人差し指が扶桑の艶やかな唇に視線を集め、扶桑の持つ妖艶な雰囲気を飛躍的に高める。僕でも少しドキドキしてしまう。山城は...うん...見るまでもなかったね。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:35:13
桔山 海 @as_keito

「あ、そっそうだ山城今日時間あるかい?」  「ふっ、うまく話題を変えてきたわね、まあ今日は一日空いているけど?」 「じゃあこの後でも大丈夫かい?」 「ええ」 ああ...ごめん夕立、そんな不機嫌そうな表情にさせる気は無かったんだ。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:40:21
桔山 海 @as_keito

「結局、仲間はずれにされたっぽい...」 「なら夕立は私と散歩でもする?」 すかさず扶桑が助け舟を出す。もしかしたら扶桑だったら夕立の抱えている何かのいい相談相手になってくれるかもしれないとも思った。うん...少し夕立の表情が少し明るくなったね。ありがとう扶桑。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:45:35
桔山 海 @as_keito

「うん、ちょうど夕立も扶桑さんとお話したいなって思ってたところ」 そっか、夕立の悩みっていうのは僕には言えなくても扶桑には話せそうなことなのかな。 「ごめんね夕立、帰って来たらいっぱい話そう」 「...待ってるっぽい」 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:50:42
桔山 海 @as_keito

食べ始めたばかりだった扶桑と山城が食べ終わるまで、僕と夕立は何てことはない会話をしながら待つことになるかと思ったけど、そうはならなかった。夕立は僕に話しかけずに何かを考えているようだった。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 22:55:55
桔山 海 @as_keito

かといって不機嫌そうなわけではなく、机の上の食べ終わった食器、食事を注文する娘、あと僕とか、いろんな所をキョロキョロと見ていた。一番見た頻度が多く感じたのが山城、その次が扶桑だった。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 23:01:04
桔山 海 @as_keito

二人が食べ終わりおぼんを持ち、立ち上がるとと僕と夕立も続いて立ち上がった。 「夕立、またあとでね」 食器を返却して僕は山城と、夕立は扶桑と歩き出した。別れ際に手を振る夕立の表情は自然な笑顔の様に感じられた。もしかしたら誰かに話したかったのかもしれない。 #7話_時雨の朝

2014-12-07 23:05:21