《「聞き書き」の鉄則》

学生時代に民俗調査を行い、 民話調査にも何度か参加した者として、 震災や原発事故に関する「聞き書き」や「聞き取り」があまりうまくいっていないように関しています。 とりあえず、『新版 民俗調査ハンドブック』(吉川弘文舘 1987年)あたりも参考にして下さい。
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宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 1 聞き書き対象者よりも多いくらいの知識を得てから聞き書きすること。 事前調査の段階で、文献やネットのまとめで得られる事実関係については、調べることが可能な限り調べて、知識を得ていくこと。知識がないと、対象者が発した言葉を文字に置換できない。

2014-12-07 22:42:23
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 1(続き) 知識がない聞き書き担当者は、対象者から熱意を疑われる。また、場合によっては、対象者が意図的に口にした虚偽に振り回される。何も知らない担当者を前にした対象者は、これまで口にしなかった本意や詳細を明らかにすることはない。

2014-12-07 22:45:28
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 2 既に行われた関連聞き書きの情報は確認しておくこと。 同じ話を何度も繰り返して聞き書きされると、対象者は「私(達)は尊重されていない。聞きに来るだけで、何も理解してもらえていない」と感じる。 学問の方法としても、過去の業績を無にする行為になってしまう。

2014-12-07 22:48:51
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 2(続き) 対象者と環境や状況が似ている人から聞き書きされた情報は、対象者に確認の為に聞く必要があれば、もう一度聞く。文献の存在などの事実によって裏付けられた過去の聞き書き情報は、その背景や理由などを次の聞き書き対象者から聞いていくことで、深化させる。

2014-12-07 22:56:04
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 3 理由や心情、責任については、予断を示さないこと。 新聞テレビ、過去の聞き書き情報などから、聞き書き対象者に対して予断を示すと、対象者が持つ複雑な生活環境などを無視して、聞き書き行為者が押し付けた判断で話を聞く事になる。内容は広がりも深みも持たなくなる。

2014-12-07 23:01:48
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 4 聞き書き対象者に知識や教養をひけらかさないこと。 多くの場合、聞き書き対象者の方が年齢が高いのに、聞き書き行為者の方が知識や教養をひけらかすと、対象者は不快に感じることが多い。対象者になじみがないような学術用語や外国語などは使ってはいけない。

2014-12-07 23:05:36
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 5 聞いた話でわからない部分は放置しないこと。 聞き書き行為者の側に情報が足りなかった為に理解できなかったことは、できるだけその場所で、一旦聞き書きが終わったあとに確認しなおすこと。もしその時間が確保できない場合には、可能な限り近い後日に、聞き直しをする。

2014-12-07 23:08:51
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 6 聞いた話は文字化して、対象者に渡すこと。 聞きっぱなしにすれば、対象者は大きな不満を感じる。渡した対象者から異論や反論があれば、それは内容の更なる深化に直結する。事実誤認があれば、すぐに訂正することができて、信頼関係が深まる。

2014-12-07 23:12:12
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 7 何でどのように記録するのか、対象者に明示する。 可能ならば、録音も残すことが望ましい。録音する場合には、ありあわせの道具で録音するのではなく、聞き書き用に準備した道具を対象者にわかるように使うことが絶対条件。記録道具の確認は聞き書き出発前に必ず行う。

2014-12-07 23:15:00
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 7(続き) 内容がデリケートである場合や、対象者が録音を断るような場合には、記録担当を必ず1人加えて聞き書きを行い、一回の聞き書きが終わるごとに対象者にその場で記録した内容を確認してもらう。確認できなかった内容は、聞けなかった不確実な情報として扱う。

2014-12-07 23:17:45
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 8 聞き書きした内容を利用する際には、対象者の了解を得る。 何かの研究会や発表、論文等に聞き書きの内容を使う場合には、聞き書き対象者に必ず確認し、了解を得る。場合によっては、対象者が裁判等で係争中の可能性もあるので、無断で内容を利用すると、大きな問題になる。

2014-12-07 23:20:34
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則 9 聞き書きを実行した人間は、個人的なお礼の言葉を対象者に届ける。 対象者に対する礼儀として、お礼の言葉は必ず届ける。手間がかかるが、手書きの手紙が最も望ましい。面会して口頭でお礼を済ませるのは、非礼に当たる。聞き書きが必要な学問を守る為にも、お礼は必須だ。

2014-12-07 23:23:48
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則のおまけ これは鉄則ではなく、望ましいこととして考えて欲しい。 時間が多少(半年から数年)経過していても、聞き書き実行者は、対象者に会いに行ってほしい。「学問に利用されただけ」という認識を対象者に持たれるのは、今後聞き書きを行うに当たって、双方に良くない。

2014-12-07 23:27:34
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則のまとめ 以上のように、「とりあえず分からない事があるから話を聞いてくる」というような安易な考えでは、聞き書きを行ってはいけない、と私は考えている。聞き書き実行者は全員、それなりの自覚と準備と、時間を費やす余裕をもって、聞き書きに望んでほしい。

2014-12-07 23:30:09
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則の余談 私は現在、原発事故の避難者の1人として生活している。 事故発生から間も無く4年が経過しようとしている時点で、知人が聞き書き(聞き取り)の対象者になるなどの事例を聞いて、聞き書き(聞き取り)が行われる事やその前後の事で、不要な齟齬が発生しているのを知った。

2014-12-07 23:33:49
宍戸俊則(shunsoku2002) @karitoshi2011

「聞き書き」の鉄則の余談 (続き) 聞き書きや聞き取りは、社会科学的なアプローチとして行われたり、被害者のケアとして行われたりしているのだが、余りにも初歩的な手法やマナーの欠如で、うまく行っていないと感じている。 かつて民俗調査や民話調査で得た経験から、「鉄則」を書いてみた。

2014-12-07 23:37:09