- thrianta_satin
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🐿 綺 羅 🦭
@thrianta_satin
「ごめん、寒かったろ」 いいえ、と頭を横に振るけれど、 その手をとってみればとても冷たくなっていて、 俺はやたらとでかい両手で彼女の小さな手を包み、息を吐きかけて、ガムを噛んでいたことを思い出す。
2014-12-09 17:36:02
🐿 綺 羅 🦭
@thrianta_satin
包み紙にくるんだガムをポケットに突っ込んで、彼女にそのまま洗濯されたこともある。 以来、俺はできるだけすぐにゴミ箱に捨てるようにしているのだが、生憎ここは駐車場。
2014-12-09 17:36:27
🐿 綺 羅 🦭
@thrianta_satin
俺は彼女を車の助手席に乗せ、車内用のゴミ箱にガムを捨てた。 エンジンが温まるまでの数分を、彼女のキスで埋めてさせてもらう。 甘く優しく、しっとり長く、いやらしくならないキスで、彼女の心をいっぱいにしていく。 手をのばして胸元を肌蹴させたい願望も、今はぐっと我慢。
2014-12-09 17:37:14
🐿 綺 羅 🦭
@thrianta_satin
予約してある店で、生演奏と綺麗な夜景と美味しい食事。 事前に頼んでおいた花束を持って来てもらったり、 二人で食べきれるサイズのバースデーケーキを作ってもらったり、 食事までは毎年同じようなパターンで、この後が本領発揮だ。
2014-12-09 17:37:34
🐿 綺 羅 🦭
@thrianta_satin
でも俺は欲張りで、彼女の喜ぶ顔を何度も見たいから、誕生日と、プロポーズの日は別にしたい。 今日はそれを伝えようと決めてきた。
2014-12-09 17:38:01
🐿 綺 羅 🦭
@thrianta_satin
夜景を見下ろす窓際の席で、 少し照明を落とした中に品のある雰囲気の店で、 仕事終わりのお互いにちょっと染料のついた手で、 俺は彼女の左手を取る。
2014-12-09 17:38:15
🐿 綺 羅 🦭
@thrianta_satin
「今日はおまえが生まれてきてくれたことを祝う日だ。 俺と、おまえが、二人で生きていくことを約束する、ここに指輪を嵌める日は、改めて、もうひとつの特別な日にしようぜ」
2014-12-09 17:38:49
🐿 綺 羅 🦭
@thrianta_satin
すっかり温かくなった左手の薬指にくちづけて、彼女の顔を見上げると、 我慢できなかった大粒の涙をぽろぽろ零して、しきりに頷いていた。
2014-12-09 17:39:03