「フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ」 #2

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ」その2
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(前回のあらすじ)夜のトミモト・ストリート、ギャングから浮浪者を助けた男は自らを「ヨージンボー」と名乗った。彼は行くあてのない浮浪者を、ストリートの地下へと案内する。
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目に刺さるようなアンモニア臭をたちのぼらせる水路を左手に、まっすぐ進む事、数分。二人は錆びた鉄の扉の前に立った。扉には奥ゆかしい字体で「お先です」と書かれている。どこか他所から持ってきたのだろ
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「ここだ、お客さん。みんな気のいいやつだよ。しばらく居るといい」男は軋む扉を押し開き、浮浪者をうながした。オレンジ色の光が目に飛び込んでくる。「ここは『キャンプ』だ。で、俺がここの、ヨージンボーというわけさ」
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倉庫かなにかを利用した場所であろうか、天井は高く、どこから引いてきたものか、あちこちに据えられた電気ボンボリが充分な光源となっている。思い思いに張られた、つぎはぎだらけのテント、ダンボールハウス。「村長に紹介してやる。ついて来な、お客さん」
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二人はいちばん奥にある水牛革製のテントのノレンをくぐった。そこにはサイバネティック義手をした、太った老人が座っていた。男は老人にオジギした。「ドーモ、タジモ=サン。一人、上で困っていたのを連れてきたんだ」老人は座ったまま手を合わせた。「ドーモ、ワタナベ=サン。今日は奇遇な日だよ」
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「奇遇な日?」「うむ」タジモ老人はうなずいた。「まあそれは後で話そう。あんた、名前は」「ドーモ、わたしはノリタ・イガキです。タッコウ・ストリートからここまで来ました」浮浪者がおそるおそるアイサツした。「それは長旅だったね。外の『R4』のテントが空いている。よかったら使いなさい」
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「い、いいのですか」浮浪者は泣き出した。老人はにっこり笑った。「イチゴイチエの教えだよ。ずっとここで暮らしたいなら、仕事をしてもらうがね。ここでは、皆ができる事をするのさ。助け合いで成り立つコミューンなのだ。ワタナベ=サンはここのヨージンボーだ。揉め事を解決してくれるのさ」
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「アイエエ......わたし、がんばりますよ......きっとがんばります.....」浮浪者は泣きながら老人の義手を握りしめ、もう一度深くオジギすると、よろめきながらテントを出て行った。ワタナベはそれを見届けたのち、口を開いた。「まあ、面倒見てやってくれよ。...で、奇遇とは?」
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タジモ老人はうなずいた。「あんたが出かけてる間に、もう一人運ばれて来たのだ。今日はこれで二人だ。珍しいだろう」「ほう、それは!」ワタナベは驚いてみせた。「どんな奴ですか?」老人はテント出入口を義手で指差した。「噂をすれば、だ」
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ワタナベは振り向いた。出入口に、背の高い男が立っていた。上半身は裸で、血の染みでまだらになった包帯をサラシのように巻いていた。肩口と胸の辺りに大きな染みがある。その箇所の出血がひどかったようだ。ワタナベはこの男の眼差しから、油断のならない凄み、絶望のような影を感じ取った。
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「ドーモ、はじめまして。サカキ・ワタナベです」ワタナベがまずアイサツした。男もオジギした。「ドーモ、ワタナベ=サン。イチロー・モリタです」偽名だな。ワタナベは感じ取った。まあいい。「ひどい怪我だな」「タジモ=サンのおかげで、大事には至りませんでした」イチローはタジモにオジギした。
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「モリタ=サンはすぐそこの下水のところで倒れていたのだ。今朝の事だよ。意識を失い極めて危険な状態だったが、ロン先生の処置で息を吹き返した。驚くべき生命力だとセンセイも驚いていたよ」ロン先生は元闇クリニック医師で、ワタナベと共にこのキャンプの生命線といえる存在だった。「ふうむ」
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「ロン先生は言うておる、それでも満足に動けるようになるまで一週間はかかると。わしらはしばらくとどまるようにモリタ=サンに伝えておるのだが......」「そうはいかないのです」イチロー・モリタが口を挟んだ。「時間がないのだ。本当に恩にきます、しかしこれ以上お世話になるわけには」
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言葉を畳み掛けようとして、モリタは苦痛に呻いた。「それ見たことか。ワタナベ=サン、あんたからも頼むよ」タジモ老人が困り果てた表情でワタナベを見た。ただごとではないな、とワタナベは心中で呟いた。「事情がどうあれ、セイてはコトをシそんじる、という言葉もあるぞ。モリタ=サン」
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「.......」「焦りの理由を話してくれれば、なにか力になれるかも知れんぞ」ワタナベは言った。モリタは険しい顔でワタナベを見返した。そして、折れた。「人を探している。行方知れずなのだ」「家族か」家族、と耳にした時、なんらかの感情がモリタの顔をさざ波のように行き過ぎて行った。
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「......そうだ」モリタは言葉を吐き出すように言った。ワタナベは呟いた。「家族か。......家族はいい」それから、我にかえると、モリタに言った。「モリタ=サン。とりあえず寝場所が居るな。俺のテントを使え。まずはメシでも食おうじゃないか、『お客さん』」
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(「フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ」その3につづく)

コメント

オスツ🍣 @alohakun 2010年12月5日
「フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ」 #1http://togetter.com/li/75654 「フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ」 #3 http://togetter.com/li/75667
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