『また会おう』

SS 木端は雪の体を手に入れ、山を下りる
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天晶 @tensyou99

ある日、神社の木端が意志を持ちました。 『神様、どうか僕に体を下さい。外の世界を見たいのです』 神様は木端のの望みを叶えて、子供の体をあげました。 しかし、神様は雪の神様だったのでその体は雪で出来ていました。 『期限は春までだよ。冬が終わればそこまでだ』

2014-10-25 23:52:05
天晶 @tensyou99

山を下りた木端は子供たちに出会いました。 「一緒に遊んで」 ですが子供たちは見知らぬ顔には近寄ろうとしません。 多くの子供が逃げていく中、一人の男の子は去ろうとしません。 「君は逃げないの?」 「逃げないよ。遊ぼう」 冬の間、男の子と木端は仲良く遊び続けました。

2014-10-25 23:54:53
天晶 @tensyou99

ある日、木端は男の子に聞きました 「なんで遊んでくれるの?」 「遊びたい奴と遊ぶのに理由がいるのか?」 春に近づき始めた頃、木端の体は溶け始めていました 走るその足取りは、おぼつきません 木端が体勢を崩した時、男の子は咄嗟にその腕を掴みました その腕は吃驚するほど冷たい腕でした

2014-10-25 23:57:14
天晶 @tensyou99

慌てて木端は手を振りほどきます。 「驚かないの?」 「随分と冷たい腕だった」 「……」 「だが、それがどうした」 「え…」 「友達の腕の温度なんで、気にすることじゃないだろ?」 「…そうだね」 木端は笑い、再び男の子と遊び始めます

2014-10-25 23:59:55
天晶 @tensyou99

しばらく経って、いよいよ木端は歩くのも辛くなってきました。 男の子は木端にあわせ、動かなくていい遊びを考え、2人はそれで遊びます。 日が傾き、男の子が帰る時間になった時、木端は男の子に話します。 「遠い、場所に行くことになったんだ」 「…そうか」

2014-10-26 00:01:54
天晶 @tensyou99

木端は男の子に手を差し出します。 「遊んでくれてありがとう」 その手を男の子が握り返します。 「友達と遊ぶのは当然のことだ」 笑いながら木端は手をはなします。 「じゃあ、また会おう」 「うん、また会おう」 (2度と会えないと、わかっていたとしても)

2014-10-26 00:04:26