ニンジャスレイヤー二次創作「ザ・ムーン・イズ・オン・ジ・ウェイン」#5

Twitterで連載中の「ニンジャスレイヤー」の二次創作作品となります。 ◆日本語翻訳版ニンジャスレイヤー公式アカウント◆ https://twitter.com/NJSLYR 続きを読む
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ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

キゲンは書庫に向かった。ここまで来て、人に会うリスクは避けなければならない。偽造セキュリティカードの中から『役員級重点』と手書きされたカードを取り出す。ここのセキュリティは先に比べ、はるかに厳重であろう。このカードが、果たして役に立つのだろうか。20

2014-12-14 13:50:14
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

慎重にカードをかざす。カードリーダーがカードを認識し、緑色のLEDが明滅を繰り返す。それは1秒も満たない程に短い時間であったが、キゲンにとっては何分もの出来事のように感じた。ピー。認識音が鳴り、明滅が止まった。そして一瞬の間を置いて、扉が解錠した。21

2014-12-14 13:53:42
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

キゲンはゆっくりと扉を開けた。照明は点いていない。とうぜん人の姿はない。キゲンは扉そばの照明スイッチを探し、点灯させた。蛍光灯が部屋いちめんを埋め尽くす文書ファイルを照らす。あたりだ。キゲンは息を呑み、手近なファイルの日付を見た。22

2014-12-14 14:00:15
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

日付は一年前。日付を遡って書庫の奥へ。二年前、三年前、四年前、そして五年前。キゲンは書庫の一番奥に辿り着いた。目の前にあるのは、一番古い日付のファイルだ。あの日、全てが変わった。全てを失うきっかけとなった。あの日の記録がそこにあった。少年は手を伸ばす。あの日の、記録に。23

2014-12-14 14:02:13
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

しかし、その手がファイルに届く事はなかった。屈強な手が少年の手をがっちりと掴んでいたからだ。「オイ」重たい男の声が聴こえる。キゲンは声を聴いた瞬間失禁した。見つかった、というだけでは説明のつかない、まるで肉食動物に覆いかぶさられたような、本能的な恐怖が少年を襲ったのだ。24

2014-12-14 14:10:53
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「こっちを向け、ガキ」男の指示。あまりの恐怖に顔を上げる事などできぬ。しかし男の声の力は強かった。キゲンはぶるぶる震えながら顔を上げる。声の主は黄緑色の装束を纏っていた。更に顔を上げると、視線の先には鼻から下を覆うメンポを着けた男の顔が。まるで……ニンジャだ!25

2014-12-14 14:14:34
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「アイエエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!?」少年は叫び声を上げる!そう、そこにいるのはカトゥーンにしか存在はずの神話的存在!黄緑色のニンジャ装束を纏ったニンジャ、サンダークラウドである!「テメエ、どうやってここに来た?」26

2014-12-14 14:17:42
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

サンダークラウドの眼力がキゲンを貫く。コワイ!「ア……ア……」しかしキゲンは急性ニンジャリアリティショック症状により、言葉を話すこともままならぬ。「早く言え!」サンダークラウドはキゲンを片手で持ち上げると、壁に放り投げる!27

2014-12-14 14:20:28
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「アバーッ!」壁に叩きつけられたキゲンが悲鳴を上げる。ニンジャ?ニンジャなんて存在するわけがない。だけどあのニンジャ装束、そして片手で放り投げる膂力はニンジャ以外にありえない。でも、ニンジャナンデ!?少年のニューロンが急性NRS症状により過負荷となる。28

2014-12-14 14:24:37
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

一方サンダークラウドは携帯IRCを取っていた。「ああ、ネズミが一匹……ああ。わかった」いくつかの会話を終えて携帯IRCを切ると、サンダークラウドつまらなさそうに少年を眺めた。そして床に転がる少年の襟首を掴むと、ぐいと己の顔に引き寄せた。29

2014-12-14 14:27:56
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「ラッキーだな」メンポの奥で笑みがこぼれる。見たこともないほど、残忍で凶悪な笑みが。「もう少しだけ生きていられるぜ。せいぜいブッダにでも祈っているんだな」歪んだ瞳が少年をあざ笑う。キゲンは全てが終わった事を悟った。何もかも、終わった。少年の瞳に絶望が宿った。30

2014-12-14 14:33:07
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

――――――――――――――――31

2014-12-14 14:35:03
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「いつまで待てばいいんだよアニキ!」第一工場の十三階。重役専用階の一室でウンギョウが吠える。開放感あふれる吹き抜けに豪奢な調度をしつらえた室内で、同じいでたちの異常巨体ニンジャが口論を続けていた。いや、弟のウンギョウが一方的にまくし立てていた。32

2014-12-14 14:36:15
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「急ぐな。急いだヒキャクがカロウシしたとミヤモト・マサシも言っている」兄のアギョウが弟を諌める。しかし当のアギョウも苛立ちを隠せない。眉間に深い皺を寄せ、執務机を叩く指を止めようとしない。「IRC監視重点。ザイバツの動きに目を離すな」33

2014-12-14 14:40:37
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

アギョウは想定外の状況に焦っていた。ザイバツの状況を監視して、ベストのタイミングで重要拠点を制圧する。外部のハッカーも利用して進めた作戦は、実に上手く事が運んだ。そしてラオモト・チバと通信上で面会し、契約の言質を取った。しかし今はどうであろうか。34

2014-12-14 14:45:37
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

アマクダリとの契約を完了し後ろ盾を得るはずが、未だ契約書の返送はなし。何度催促しても、組織内処理の手続重点の一点張りである。さらにはハッカーから一方的に契約解除され、ザイバツを監視する為の目を失った。ザイバツは必ず奪還に動く。しかし、それは何時か、掴む術がない。35

2014-12-14 14:48:29
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「ずいぶんとイラついているじゃねえか、アギョウ=サン、ウンギョウ=サン」サンダークラウドが戻ってきた。室内に入るや否や、彼は片腕に抱えた荷物を放り投げた。荷物……いやそれは少年、すなわちキゲンである。「オモチャを持ってきた。退屈しのぎにはなるだろう?」36

2014-12-14 14:52:37
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

ウンギョウは鼻で笑い、キゲンを摘みあげた。「フン、こんなんじゃすぐ終わっちまうって!」「アイエエエ!」異常巨体のニンジャが睨み上げると、キゲンは叫び再失禁した。ニンジャが三人、いや奥にもう一人。ソファでくつろぐニンジャがいる。ニンジャが四人もいてはどうしようもない。37

2014-12-14 14:56:40
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「待て」突如、ソファでくつろぐニンジャが立ち上がった。ニンジャはふらふらとウンギョウに近づく。右手が絶えず肉厚カッターナイフの刃を出し入れする。チキチキという音が徐々にキゲンに近づく。そしてウンギョウが摘まむキゲンの顔に、カッターナイフの刃を当てる。38

2014-12-14 15:00:42
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「アー……代理人だ。コイツ」「代理人?」意外な答えにアギョウが唸る。「誰の代理人だ?」「アイツだ。一方的に契約破棄して逃げた、ふざけたハッカー。あいつの代理人だよ。このレインコートにパーカー、間違いない」「なに、ハッカーだと?」アギョウが立ち上がり、キゲンの手を掴む。39

2014-12-14 15:07:47
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「ハッカーはどこだ、言え」「アイエエ!」「言わんか!」アギョウがキゲンの小さな手を握りしめる。強力なニンジャ握力が万力めいて、キゲンの手をゴリゴリと潰す!「アイエエ!アイエエ!アイエエ!」キゲンはもう泣き叫ぶことしかできない!40

2014-12-14 15:12:56
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「無駄だよ。もうそいつはダメだ」サンダークラウドが言い切る。「ヌゥーッ!所詮は代理人か」アギョウが手を離すと、ウンギョウがつまらなさそうにキゲンを放り投げた。少年の身体が軽々と舞い、床に叩きつけられる。「あんなのはどうでもいい。使うのは、こいつだ」41

2014-12-14 15:17:09
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

サンダークラウドが手にしたもの、それはキゲンの携帯UNIXだ。サンダークラウドがボタンを押すと、小型液晶にロック画面が表示された。正しい手順で操作しなければロックを解除する事は不可能だ。それを知るのは床に転がる少年、キゲンのみである。42

2014-12-14 15:20:30
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「ハッ、こんなもの」そう言うと、サンダークラウドの掌から灰色の雲が生じた。雲は瞬く間に携帯UNIXを包み、青白い光を放つ。するとどうだ。パワリオワー!瞬く間に携帯UNIXのロックは解除されたではないか!これがサンダークラウドのデン・ジツ!スゴイ!43

2014-12-14 15:24:11
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

サンダークラウドはロック解除された携帯UNIXを操作する。「どうだ、アジトはわかったのか?」待ちきれない体でウンギョウが尋ねる。「住所情報は未入力。だが……こうすれば」サンダークラウドはエンターキーを押す。携帯UNIXが幾度か明滅した。44

2014-12-14 15:28:18
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