ニンジャスレイヤー二次創作「ザ・ムーン・イズ・オン・ジ・ウェイン」#5
(前回のお話)ニンジャスレイヤー二次創作「ザ・ムーン・イズ・オン・ジ・ウェイン」#4 - Togetterまとめ togetter.com/li/756501
2014-12-14 12:23:36(これから連続して投稿するツイートは、ニンジャスレイヤーの二次創作となります。とうぜん公式との食い違いインシデント他もろもろなんかありますが、もともと公式と関係ないのでごあんしんください)
2014-12-14 12:25:37(また、かなりの量のツイートをポストするので、TLが私のツイートで埋まる可能性は実際高いです。煩わしく感じられたならリムーブ、ミュート等をお願いいたします。もし気に入られましたら #nora_nj タグに実況、感想ほかいただけたなら幸いです)
2014-12-14 12:28:32煌々と輝く鉄と錆の城。シナル社のカーボン基盤生産施設は夜の雨にうたれながら、無機質な姿を少年の前に晒す。耐重金属レインコートに身を包んだ少年もまた、勢いを増す夜の雨にうたれながら双眼鏡を構える。(((やっぱり、おかしい)))キゲンは確信した。1
2014-12-14 12:35:15かつて昼夜を問わず頻繁に出入りしていたトラックも、今はまばら。騒音や照明が途絶えたエリアも未だ多く残っている。普段ならば作業員を大量投入し、一週間を待たずに復旧するはずである。そもそも、なぜ敷地内に人がいないのか。こんな事は五年間のあいだ、一度もなかった。2
2014-12-14 12:38:19キゲンは懐から何枚かのカードを取り出す。生産施設の偽造セキュリティカードだ。この五年間、慎重に不法侵入を繰り返して作ったカード。これがあれば施設の最奥部までたどり着けるだろう。キゲンはカードを懐に納め、顔を上げた。耐重金属レインコートのフードの下で、気の強い目が光った。3
2014-12-14 12:43:37やれるだろうか……今なら。両親が自殺するきっかけとなったシナル社の不正を暴き、復讐を遂げる。これは少年にとって悲願であった。その日を夢見て、頻繁にここに通い、監視し、不法侵入を繰り返してきた。だが、果たしてそんな事に意味があるだろうか。少年には判断がつかなかった。4
2014-12-14 12:47:24「……受け入れるんだよ。いまを」不意に言葉が出た。老警備員の言葉だ。あれから一週間、何もかもが変わった。仕事の数は飛躍的に増え、充分な収入を得る見込みが立った。姉は副業を辞めた。このまま生きていけるだろう。三人でならば、きっと。だが少年の心には隙間があった。5
2014-12-14 12:50:34それは決して埋まることのない隙間だ。覗き込めば父の顔が、母の顔が、活気に溢れていた頃の工場が見える。……もうそれは二度と戻ってこない。何があったとしても。全ては眼前の鉄と錆の城がもたらしたのだ。このまま受け入れて良いのだろうか。いや。「……受け入れるなんて、できやしない」6
2014-12-14 12:53:44ならば、行こう。今がその時だ。少年は耐重金属レインコートのフードを被り直した。フェンスをめくって敷地内へ。ここのフェンスが壊れている事は前々から確認済みだ。敷地内に入った後は迷う事なく走る。監視カメラの位置も、警備員の巡回のルートも全て把握済み。見つかるなんてありえない。7
2014-12-14 12:56:04建屋の影を縫いながら少年は走る。目指すはこの先、第一工場。ブウン。フォークリフトが真横を駆ける。しかしキゲンは立ち止まることなく駆けた。フォークリフトは何事もなく通過した。機銃掃射めいた豪雨に紛れ走る、小柄な少年に気づくものはいない。10
2014-12-14 13:04:24いくつもそびえ立つ工場建築物の先に、錆色に染まった建屋が見えた。あれだ。あの第一工場の最奥に取引情報用のメインフレームがある。そこまで侵入し、メインフレームが吐き出す過去の談合や不正取引を記録したパンチドテープを回収せねばならない。11
2014-12-14 13:08:18キゲンは第一工場を囲う茂みに隠れると、そのまま裏口へ回った。ガゴンプシュー。一定間隔を置いてシャッターが開き、フォークリフトが出入りする。これも何時もと比べ、四分の一の頻度でしか稼働していない。フォークリフトに乗る作業員の暇を持て余した顔が見える。12
2014-12-14 13:12:12作業員が欠伸をしたその時。ガタン!シャッター脇の鉄骨にフォークリフトが激突した。「アアーッ!?マズイ!」作業員がフォークリフトから飛び降り、損傷箇所を確認する。いまだ。キゲンは茂みを飛び出し走る。作業員の死角を突き、工場内へ侵入する。13
2014-12-14 13:16:35キゲンは全力で走る。目的地は白いシンプルなドア、カチグミ社員用の通用扉。ひたすら走る、走る、走る。扉にたどり着くと、すぐさま偽造セキュリティカードをかざす。カチリ。ロックが解除された。キゲンは通用扉に滑るように潜りこみ、扉を締める。そしてそのまま座り込み、息を整えた。14
2014-12-14 13:20:09酸欠だった頭が徐々にクリアになる。キゲンは座ったまま、先の道を確認する。白く明るい通路が奥まで続いている。五年間の中で、ここまで侵入できたのは初めてだ。この先は未調査、何が起こるのかわからない。慎重に進まなくてはならない。15
2014-12-14 13:24:15キゲンは立ち上がり、慎重に進む。しかしいくら進めど、奇妙なほどに人の気配がない。入念に換気された嗅ぎ慣れない空気の中、通路を靴底が擦る音だけが微かに鳴る。三つ曲がり角を抜け、エレベーターを見つける。五分ほど階数表示を眺めていたが、動く気配はない。さらに五分待つが変化はない。16
2014-12-14 13:28:31意を決してボタンを押す。エレベーターが到着し、ドアが開いた。中に監視カメラはなさそうだ。キゲンは素早くエレベーターに潜り込み、九階のボタンを押す。九階。何も考えずに押した訳ではない。その階だけ窓がない事は、日々の監視で知っていた。そこに何かがあると、少年は確信していた。17
2014-12-14 13:33:38エレベーターの浮遊感が少年の体を包む。階数を示すLEDがカウントするにつれ、段々と不安と緊張が募る。少年は頬を張り、気合を入れる。そして扉の脇に隠れ、扉が開く瞬間を待った。「九階ドスエ」電子マイコ音声がアナウンスし、LEDの表示が「9」に切り替わる。18
2014-12-14 13:36:58扉が開く。気配は……ない。キゲンはするりとエレベーターを出る。窓のないエレベーターホールには、扉が二つだけ。右手には『電算室』左手には『書庫』の表札。どちらにも『関係者以外立入禁止重点』と大きく書かれている。聴き耳を立てると、右手からUNIX動作音とタイピング音が聴こえる。19
2014-12-14 13:45:11