「ブライト・イエロー・オブ・ザ・ウィンド・トゥ・ザ・ノース」

深夜執務中、咆哮系提督はある人物から連絡を受ける・・・ (聖良紅牙さん着任祝い)
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「ブライト・イエロー・オブ・ザ・ウィンド・トゥ・ザ・ノース」

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

◆与太話◇ ◆軽度◇ ◆身内向け◇

2014-12-16 02:03:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ブライト・イエロー・オブ・ザ・ウィンド・トゥ・ザ・ノース」

2014-12-16 02:06:28
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

夜、草木も眠らんとする真夜中。鹿屋基地司令部には未だに多くの明かりが灯っていた。国を、ひいては世界を深海棲艦の魔の手から守らんとする提督と艦娘に朝も夜もない。夜間作戦のために今も馬車馬の如く働いている提督は大勢いた。 1

2014-12-16 02:09:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドもまた、自身に与えられた執務室で書類の確認をしていた。南方海域の先たる最前線中部海域に送り込む艦隊の編成、練度、そしてどのように作戦を展開するか。彼はデスクワークは好かない。だが、イクサに勝つにはまず準備こそ肝要であることは理解していた。 2

2014-12-16 02:14:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

暫く沈黙思考を続けたリカルドはふと、己の胸ポケットから振動が伝わってくることに気が付いた。胸ポケットから振動物を取り出す。それはおよそ掌ほどの大きさの黒い小型通信端末であった。振動と共に画面が光り、通信が入っていることを持ち主に伝える。通信相手の名は『仮面アーチャー』 3

2014-12-16 02:20:04
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「…は?」リカルドは訝しんだ。それは“この世界”にはいるはずのない人物。そもそも彼は、仮面アーチャーはここに来る理由がない。ふとリカルドは辺りの気配を探る。周辺には誰もいない。秘書艦である大淀も任務統括のために席を外している。僅かな逡巡の後、通信をオンにした。「…もしもし」 4

2014-12-16 02:25:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『ああ、良かった!繋がった!』端末の向こうから聞こえる年若い少年の声。リカルドには聞き覚えがある。やはり彼であった。『良かった知り合いがいて!もう、急に変なところに飛ばされ』「おい」『て焦ったけど…何?』「取りあえず落ち着け。そして俺の質問に答えろ」 5

2014-12-16 02:30:42
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『えっと』「別に咎めているわけじゃない」リカルドはため息をついた。仮面アーチャーはどうも口下手だ。しかも本人にその自覚は無い。故に会話の主導権は最初に握っておかねば聞ける話も聞けなかった。「まず、一つだ。何でこの世界にいる。オラクルに居たはずだろ」 6

2014-12-16 02:35:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

オラクル、遠い宇宙の果てに存在するアークスという組織の母艦。短い時間だが、嘗てリカルドもそこにいた。リカルド自身も原理は知らないが、仮面アーチャーは世界を渡る力を持つ。彼をはじめとする“仮面の戦士”と名乗る者達は大なり小なり不可思議極まりない力を有していた。 7

2014-12-16 02:40:09
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『えーっと。俺にもよくわからないんだけど』仮面アーチャーは思い出しながら答える。『オラクルからバルバレへ“飛ぼう”とした時、“楔”の気配を感じたんだ。で、それを追おうとしたら、何かトラぶっちゃって…』「何かってなんだよ」『よく分からない』「オイオイ…」 8

2014-12-16 02:42:37
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「お前さんに分らんものが俺にわかるわけないだろ」右手で頭を搔きながら、リカルドはぼやいた。実際リカルドは“仮面の戦士”の語る話の半分も理解できていない。彼らの語る内容は極めて突飛で、そして超常的だった。ハンターである以外常人に過ぎないリカルドには根本的に理解ができなかった。 9

2014-12-16 02:46:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「まぁ、理由はそっちで勝手に探してくれ」『う、うん』「で、もう一つだ。お前さん、今どこにいる」ともあれ、見知らぬ世界に身一つで放り出された仮面アーチャーの保護が最優先、と目的を定め、リカルドは聞き出そうとした。『ええと、寒くて雪が降ってるから北の方だと』『まどろっこしい!』 10

2014-12-16 02:50:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

突如、端末の向こうから少女の声が聞こえた。『さっきからナヨナヨと!いいから代わりなさい!』『何で』『私から説明した方が早いからよ!』口論、端末の奪い合いからのノイズ、そして少女の声が聞こえた。『もしもし、私は幌延基地所属艦娘、叢雲です』端末の向こうの少女は艦娘だった。 11

2014-12-16 02:53:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「あー…」どうやら自体はリカルドが思っているよりもややこしいらしい。「どうも、鹿屋基地所属のリカルドです」『鹿屋?鹿児島じゃない!ちょっとアンタ!知り合い遠過ぎよ!』『そ、そんな』「なぁ」『何よ!』「取りあえず、何で俺に連絡してきたか聞きたいんだけど」 12

2014-12-16 02:56:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『何でって、貴方、コイツの友達なんでしょ?』「まぁ、狩友に違いねぇが」『着任したてで色々不安だから話が聞きたいって』「…おいちょっと待て」聞き捨てならぬ単語を耳が捉え、リカルドは話を遮る。「着任?誰が?」『鈍いの?』「いや、受け入れがたいだけだ」 13

2014-12-16 03:01:52
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「着任ってこたぁつまり」『そう、コイツは私の提督』「マジかよ」『マジよ』思わずリカルドは天を仰いだ。近い将来酷いトラブルに巻き込まれることを半ば確信したからだ。“仮面の戦士”の行動理念は各々の欲望。その先にトラブルが無いはずが無い。 14

2014-12-16 03:05:59
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは短く息を吐き、決心したように言った。「取りあえず今執務中だ。あとでこちらから掛け直すと伝えてくれ」『了解したわ。御免なさいね、こんな夜更けに』「まぁ、構わんさ」リカルドは僅かに自嘲する。何だかんだと彼に手を貸すお人好しな自分に。「狩友だからな」 15

2014-12-16 03:10:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ブライト・イエロー・オブ・ザ・ウィンド・トゥ・ザ・ノース」終

2014-12-16 03:11:18
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

◇この度着任した聖良紅牙=サンに捧げる◇

2014-12-16 03:12:00
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

◇寝なさい◆ ◇お目汚し失礼◆

2014-12-16 03:12:23