さて、準備できたのでアブラナ科野菜の2回目、結球するアブラナ科野菜をお送りします。結球野菜というくくりにしてレタスも入れようかと思ったんですが、科が違うし、非結球レタスもあるので次の機会にします。
2014-12-16 22:25:27まずはキャベツから。
キャベツはブロッコリーやカリフラワーと同じく、イギリスから地中海にかけて自生するヤセイカンランおよびそこから育成されたケールが起源である。石灰質の多い地中海沿岸に多く自生していることから石灰を好む性質であることがわかる。
2014-12-16 22:26:12古代ローマやギリシャで古くから利用されていたことはブロッコリー等と同じだが、ヨーロッパで園芸種として栽培されるようになったのは9世紀ごろといわれている。そこから16世紀にはカナダに導入され、その後アメリカに導入された。17世紀からアメリカで栽培されいていた記録が残っている。
2014-12-16 22:27:49日本には明治初期に導入され、明治30年ごろには自然交雑等により分化した品種群からの選抜が行われている。大正に入って栽培面積も増加し、さらに昭和初期にかけて国内での育種も本格的に行われるようになった。
2014-12-16 22:28:30その後第2次大戦などで育種も栽培も停滞していたが、戦後、消費の拡大とともに需要が増加し、作型分散によって周年出荷が行われるようになった。育種技術も発達し、自家不和合性を利用した一代雑種(F1)も作出され、現在ではF1が品種の主流になっている。
2014-12-16 22:28:53野生種は1年生で低温感応なしに花芽分化するが、栽培種はほぼ2年生で低温に遭うことで花芽分化して抽苔(花芽が伸びること)する。キャベツはある程度栄養生長(花芽を作らない生長)してから結球し始めるため、定植が遅れて小さいうちに低温にあってしまうと結球せずに抽苔してしまう。
2014-12-16 22:29:51日本への導入、普及が古かったため様々な地域・作型に適応した品種が多数作られた。ちなみに普通に緑色のキャベツはすべて同一種であるが、ムラサキキャベツ、サボイ(縮緬甘藍)は変種である。
2014-12-16 22:30:22ちょっと脱線。札幌大球甘藍について。
札幌大球甘藍は札幌近郊で作られる大玉品種で通常の5~10倍になり、10㎏を超えるものも収穫される。主に加工用だが、札幌では普通の家庭でも購入され、ニシン漬などに利用されると聞いている。しかし本当にそんな大きなキャベツを一般人が買うのだろうか?持って帰るだけでも大変だと思うが。
2014-12-16 22:30:55Fig1. 北海道の一般家庭において購入された札幌大球(キャベツ)と2歳児とのサイズ比較 instagram.com/p/wq3X-ZMo6Q/
2014-12-16 22:45:55Fig.2 消費目的で購入された札幌大球(キャベツ)と一歳児(当時)とのサイズ比較 instagram.com/p/hXIEn2so_X/
2014-12-16 22:52:01さらにハボタン。
その形態が結球しないキャベツに酷似しているハボタンはキャベツの変種というよりケールから育成されたと思われる。江戸時代の貝原益軒の著書「大和本草」にはおそらくケールと思われるオランダナという野菜が紹介されており、それが観賞用のハボタンのもとになった。
2014-12-16 22:31:20で、ハクサイへ。
ハクサイは北・東ヨーロッパやトルコ高原に自生するブラシカ・ラパがその起源であり、もともとは不結球性であった。これがアフガニスタンやチベット、またコーカサスやモンゴルを経て栽培作物として中国へ導入されたと思われる。
2014-12-16 22:32:08わが国には明治初期に中国(清)から種子が持ち込まれ、栽培がはじめられたが初めのうちはなかなか結球せず、普及しなかった。同時期に清国が東京の博覧会に出品したハクサイの株を愛知県が譲り受けて研究し、10年ほどかかって結球に成功した。その後愛知県下で栽培が始まった。
2014-12-16 22:32:38そのほかにも19~20世紀初頭にかけて別ルートで茨城、宮城、長崎などにいずれも清国から導入され栽培されていたが、やはり結球しないなどの理由で栽培が中断していた。その後、愛知や宮城などで安定して採取できるようになり、栽培が広がるようになった。
2014-12-16 22:33:10ハクサイが急激に普及し始めたのは、日清、日露戦争などの後、経済的な発展があったことも要因であるが、それらの戦争で中国などを訪れた兵士たちがハクサイの存在をそこで認識し、国内に紹介したことも要因だといわれている。
2014-12-16 22:33:38同じ結球するアブラナ科野菜でもヨーロッパで普及し、品種が分化したキャベツと違い、ハクサイは中国を中心としたアジアで発達したという違いが面白い。ハクサイは中華料理のほか、韓国のキムチ、日本の漬物、鍋物などアジア料理には欠かせない存在になっている。
2014-12-16 22:34:22ハクサイの仲間には結球しないものもあり、丸葉山東、切葉山東(ベカナ)などがそうであり、大阪シロナやマナ、広島菜などもハクサイの血を引くが、これらはいずれ結球しないアブラナ科葉菜類として取り上げたい。
2014-12-16 22:34:46番外編。ハクラン。
最後に、キャベツとハクサイの雑種であるハクランについても取り上げておきたい。通常、キャベツとハクサイは染色体数が違うため、交雑しないかしても一代限りである。そこで、薬剤処理等によって染色体数を倍加させて交雑し、生殖能を保持させる方法でまず作出された。
2014-12-16 22:35:12その後、1998年に石川県の農業総合研究センターで細胞融合による体細胞雑種でもハクランが作出、育成された。こちらをバイオハクランと呼んで区別する場合もある。
2014-12-16 22:35:34ハクランはその名のとおりキャベツのようにもハクサイのようにも料理に使える。用途も広く、食味もよいとされるが(私は食べたことがない)、なぜか普及していない。もし、見かた方がおられたら、ぜひ試食してその結果をご報告願いたい。
2014-12-16 22:36:23