ストレイトロード:ルート140(9周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。1日1話ペースで継続中。 今回は401~450をお届けします。 以前のまとめは作者おすすめ欄か下記URLからどうぞ。 元の短編の掲載場所: http://www.gekkado.jp/
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

皆の為に。故郷の為に。「言うのは簡単よ」藍は崖の端に立った。髪が熱風になびく。雲は黒煙を呑み込み、地上の惨禍を映して赤く揺らめく。「逃げてって言ったのに。助けられたはずなのに。こんな時まで余所者の手助けお断りって何なのあの村」そうしなければ守れないものが彼らにはあったのだろうか。

2014-12-02 19:55:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、438。余所者。

2014-12-02 19:55:50
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「牛乳?普通。嫌いではないわ」牧場の長い柵に沿って進みながら、藍の雑談に付き合った。酪農をよく知らないのは年齢を思えば仕方ない話だ。人々の生活を支える牛と牛飼いの苦労を子供向けの表現で説明すると、藍は唸った。「安いからみんな粗末にするのよ。貴重なんだからもっとお金取ればいいのに」

2014-12-03 19:51:54
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、439。酪農。 牛飼いも利益向上も簡単にはいかない。

2014-12-03 19:52:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

悲惨な出来事の現場に来た。探し物の手がかりはすぐそこにあるというが、警察も軍隊も藍の行く手を阻んだ。言い分を聞いた私は彼らに同意し、藍に足を踏まれた。「安全確保の作業は大人の仕事です。若い貴女が今行くのは危ない」「どうせ偉い人たちの理屈でしょ。証拠隠滅されたらどうしてくれるの?」

2014-12-04 18:59:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、440。理屈。 大人でないと考えないようなこともある。 大人だからこそ考えるべきこともある。

2014-12-04 19:00:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

給油のため立ち寄った街で出会った男は親切に道を教えてくれたが、助手席を見るや私の襟首を掴み車から引きずり出した。藍の伯父だという。彼は藍の話を聞かずその親に電話をかけ、何とか私が悪人でないと理解してくれた。しかし別れ際には姪の人生に累を及ぼすことのないようにと何度も念を押された。

2014-12-05 21:23:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、441。累。 影響されているのは誰だ?

2014-12-05 21:24:18
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

毎日のように無茶を要求する藍だが、何気ない仕草に育ちの良さを感じることがある。助手席に座る姿勢。アポも取らず訪ねた市長への挨拶。嫌いなトマトを私の皿に移す時のフォークの使い方。幼い頃から令嬢に相応しい作法の教育は徹底されてきたのだろう。最近は私の食べ方に指導を入れるようになった。

2014-12-06 21:26:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、442。令嬢。 きっと口に出すと足を踏まれる。

2014-12-06 21:26:53
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

時に軍隊も魔女と手を組む。「あの硬い装甲を破壊すればきっと柔らかい中身が」「それを壊せないから苦労してるってさっき報告してなかった?」担当者の力説に、藍は今にも砕け散りそうな笑顔で応じた。私は隣で会議を見守る上官の心情を思った。部下の無能が露呈する現場など本当は見たくないだろう。

2014-12-07 22:15:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、443。露呈。 時には共通の敵より味方の方が怖い。

2014-12-07 22:15:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「寒い?」藍は毛布3枚でシートごと私をくるみ、以前買った帽子を被せた。これでは運転席から動けない。「まだ寒そうね」さらに綿が詰まったクッションを首の後ろへ。「じっとして。体を暖めるの。状況わかってる?」玩具にされているのは分かる。それより自身を風邪から守るために側を離れてほしい。

2014-12-08 19:42:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、444。綿。 いつかのサメ帽子のぬくもり。

2014-12-08 19:42:29
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

交差点で右折すべくハンドルを切ると、藍が隣から私の腕を掴んだ。「何してるの、左よ左!あの看板見て!」だが途中で方向を変えるわけにもいかない。私は右折を終えてから路肩に停車し、地図を広げて藍に渡した。「今ここで…あら?」困り顔を見た。看板の字句が現実と違う位置に記されていたらしい。

2014-12-09 19:50:55
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、445。交差点。 反対側は意外に行きづらい。

2014-12-09 19:51:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

助手席に座る藍はどう見ても普通の少女だ。運転する私でさえそう思うのだから、魔女の噂を多少知るだけの人々は誰も実物に気づかなかった。呪文を唱えず、杖を掲げず、光の粉も振り撒かない。彼らがおとぎ話によるイメージと現実とのギャップを認識した頃、その魔法のような突風は砦を半壊させていた。

2014-12-10 19:21:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、446。ギャップ。 それらしく振る舞う意味とは。 今回はラ(@raaaaaaaaaaaa14)さんから頂きました。

2014-12-10 19:21:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

軍の施設で知り合った技官が、藍には内緒だと言って論文の草稿を見せてくれた。魔女が風を呼ぶ原理は未解明。自然現象と個人の意識が結びつく瞬間を捉えようと躍起になる研究者達の姿が文章の奥に透けて見えた。「わざと指示に逆らうからデータ取るのも一苦労さ」彼らが泡を食う様子もすぐ目に浮かぶ。

2014-12-11 19:43:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、447。研究者。 彼らは歩みを止めないだろう。興味深く思う限り。 みど(@middlechronica)さんから頂きました。

2014-12-11 19:43:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「今夜こそ道間違えないでね」全開の窓から入る空気が冷たい。ここ数日、私達の車は月明かりを追うように走っていた。藍は冬の夜空から降り注ぐ何を探しているのか教えようとしない。「今日はもういい。夕方になる前に起こして」夜明け前の駐車場へ入った車に寝息が響く。すっかり昼夜が逆転していた。

2014-12-12 22:00:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、448。逆転。 どうか生活習慣は大切に。 テーマは消夢(@syoumu80)さんからでした。

2014-12-12 22:00:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

扉の向こうは洞窟そのものだった。懐中電灯を奥に向けると、壁面に据えられた水晶の原石が空間を神秘的な輝きに染めた。「これ本当に隣と同じ部屋なの?」藍は空間の主に何度も確かめている。確かに住宅の一室とは思えない。もし先に本来の間取りを見ていなければ彼女はどんな反応をしていただろうか。

2014-12-13 23:50:08
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、449。水晶。 希月スズ(@suzupuyo)さんから頂きました。

2014-12-13 23:50:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

広場を見渡せる屋上に立った。行き交う人々が大河の流れのようだ。その中を泳ぐように進む藍を指示通りに双眼鏡で追う内、彼女の背後に迫る黒い手に気づいた。「魔女を捕らえろ!」騒然となった群衆が大河から氷の海に変わった。黒服の集団が一歩も先へ進めずもがく間に、藍は人の波に潜ってしまった。

2014-12-14 20:01:39
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