ストレイトロード:ルート140(9周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。1日1話ペースで継続中。 今回は401~450をお届けします。 以前のまとめは作者おすすめ欄か下記URLからどうぞ。 元の短編の掲載場所: http://www.gekkado.jp/
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、425。糊。 強度に不安あり。

2014-11-19 18:55:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

収穫を終えた畑には枯れ草だけがそのまま残されていた。翌朝に再び見に行くと、畑は元の状態が分からない程に荒らされていた。「聞いた通りね」藍が細い葉を拾う。一枚引き抜くと、土に埋まった他の葉まで一緒に釣り上げられた。「こんな雑な埋め方、人間の仕業じゃないわ。耕してるつもりなのかしら」

2014-11-20 18:54:40
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、426。畑。 違う意味があったりして。

2014-11-20 18:54:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

エンジンが停止した車内に藍の寝息だけが聞こえる。今日の出来事を手帳に書き留めていると、数日前の記述がおかしいことに気づいた。書いた覚えのない訂正箇所を読み返すこと三回。懸命に似せようとした筆跡の意図に思い当たり、私は吹き出してしまった。これは親に告げ口するなという雇い主の圧力だ。

2014-11-21 20:23:01
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、427。筆跡。

2014-11-21 20:23:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

風が吹き荒れる。制空権を失った怪物が村から逃げていく。「魔女だ!本物だ!」子供が窓から身を乗り出して叫んでいた。母親らしき大人に叱られても、外を差す指が引っ込まない。「本当だって!」ついには口を塞がれた。抵抗と窓が閉ざされた後、私は車を発進させた。そろそろ魔女を迎えに行く時間だ。

2014-11-22 20:24:55
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、428。塞ぐ。 本人の前で言っていいか分からないなら、言わない方がいい。

2014-11-22 20:25:01
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

進入禁止を無視して警戒区域内を走行した件について、翌日警察に喚ばれた。当然の結果なので私は素直に謝ったが、藍は違う方針を決めていた。子供の弁明に大人が簡単には耳を貸さないことも、内容を理解されないことも承知の上なのか。経緯を堂々と語る後ろ姿は人々を恐れさせる魔女そのものに見えた。

2014-11-23 22:27:06
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、429。弁明。 話せば分かる。相手のレベルが。

2014-11-23 22:27:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

街頭で誰かが叫んでいた。世界が終わると訴える悲痛な声を浴びながら、私は停止信号を見上げた。「魔女だなんて呼ばれていると、世界の敵のように言われませんか」「よくあるけど、わたし別に世界全部とか壊せないし」藍の反応は慣れっこと言わんばかりだ。「何かが滅びても、他の何かは続くんだから」

2014-11-24 20:09:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、430。滅びる。

2014-11-24 20:09:37
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍が「宿題終わった」と答案を持ってきた。学校のレポートをデータで提出する時代にわざわざ紙で送るとは。旅の序盤は藍の不満に私も同感だったが、解答の正否を記す内に違う問題が見えてきた。思った以上に丸がつかない。手書きの文字は端末の表示ほど簡単には消えない「どうだったの」「ダメですね」

2014-11-25 19:05:11
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、431。丸。 自力で正解できるようになって初めて、次への力に変えられる。

2014-11-25 19:07:06
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

長い道路を直進する車の中。藍は暇潰しと前置きして、自分が他の子と違うと気づいた頃の話を語った。幾つかの不思議な体験。初めて自発的に操った風は騒ぎを引き起こし、しかも先生や友達はトリックを見抜けなかった。「その時は大好きだったの。密室」藍が開けた窓から砂煙が入ってくる。「今は嫌い」

2014-11-26 19:13:11
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、432。密室。 それは何かの証明の手がかり。

2014-11-26 19:13:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

用を済ませて車に戻ると、藍が村の老人と和やかに話していた。昔話を聴いていたという。買ってきた物を後部座席に積みながら続きを聞いた。怪物が現れるまでこの世界は平和だったか。否。災害に端を発し長年この村を二分した闘争の記憶を学んだ藍は、争いの種が常にすぐ側にあることを痛感したようだ。

2014-11-27 19:03:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、433。昔話。 どんなに古い話でも、知って損する歴史なんてない。知らなくていいかどうかなんて知らないと分からない。 感想さえ他人には分からないんです。

2014-11-27 19:03:52
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「さあ、何が入ってるでしょう?」村の名物料理は警戒心を煽る匂いを放っていた。肉の塊の中に詰めた食材を当てたら宿代をまける、と女将から聞いた藍は迷わずナイフを入れたが、破片を舌に載せた途端に表情を曇らせた。「ゼファールも試し…なんで目を逸らすの!?」答えを知る者に解答権はないのだ。

2014-11-28 19:45:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、434。名物。 驚きも含めたおもてなし。

2014-11-28 19:45:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

怪しい影を追って入った山は天然の迷路だった。目標を早々に見失い、私達はどこに続くとも知れない道をただ進んだ。「戻りますか?」一歩先を行く藍が振り返るたびに私は尋ね、常に否定された。しかし太陽が頭上に昇る頃、彼女は突然回れ右をした。「戻るわよ」自分が最初に言い出したような顔だった。

2014-11-29 20:16:30
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、435。戻る。

2014-11-29 20:16:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

劇は山場を迎えていた。主役の独白が始まると同時に照明が瞬き、建物を揺らすような音が空気を震わせる。私は息を呑んだ。だが直後に客席の一部がざわめき、すぐに劇場全体へ波及した。「あーあ、わたしの出番来ちゃった」藍が席を立った。「噂通り天井裏に何か出たのよ。この話にあんな演出ないもん」

2014-11-30 22:53:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、436。山場。

2014-11-30 22:53:06
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

わたしは憂鬱なの、何もかも面白くないわ。藍が全身で表そうとしているのは恐らくそういうサイン。私の使命は次の街で彼女の意に沿う贈り物を、より少ない試行回数で見つけて差し出すことだ。前回しくじって減給された私はもう失敗できないだろう。車窓を眺める後ろ姿が次のヒントをくれる気配はない。

2014-12-01 19:33:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、437。憂鬱。 主従関係で遊ぶ一場面。

2014-12-01 19:33:34