FF6二次創作【鎮魂のアリア】その8

その8となりました。ピクシブにあげた段階でいえば後編に突入した所できってます。第一回目:http://togetter.com/li/707429 前:http://togetter.com/li/748503 次:http://togetter.com/li/763539
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みなみ @minarudhia

ああ、憂鬱だ。 グラスの中のワインがその面をゆらゆらと揺れているのを、パック・スコットは見つめながら椅子に背をもたれていた。 頭髪の薄い頭に腹の肉が出た緩い身体は彼を歳以上に見せてしまう風体だ。

2014-12-18 22:55:34
みなみ @minarudhia

…あの忌々しいフーパーもマクシムも始末した。 しかし、それ以上のものは彼の元には舞い込んでこなかった。 ガネットも彼の元に戻ってくることを拒んだがゆえに死を選んだ。 何もかも、気に入らなかった。

2014-12-18 22:59:05
みなみ @minarudhia

視線を手元に移せば十を軽く数える程の書類が目に映る。 …溜息が出た。 グラスの中身を一気に干すと、いつもより早く寝ようと書類をまとめ始める。 その時だった。 ズゥン!! 「!?」

2014-12-18 23:03:27
みなみ @minarudhia

家そのものを襲う重い振動。 まるで大きな何かが上から家に乗っかっているような衝撃に、パックは慌てて椅子から腰をあげる。 まもなく、外から何者かが窓を蹴破り、中へ入り込んでくるのを見た。 「な、何者だお前達!?」

2014-12-18 23:05:41
みなみ @minarudhia

何の予兆もなく飛び込んできた数人の人物にパックは叫ぶ。 真っ先に入ってきた身長の高い黒髪銀目の女は手を伸ばし制した。 「お静かに」 窓の外で白く長いものがちらちらと見える。 侵入者達はそれを伝って窓から入ってきたのだとパックは悟る。

2014-12-18 23:08:14
みなみ @minarudhia

「俺達はあんたのおかげでとんだ面倒に首を突っ込んじまった者だ」 「何…!?」 バンダナの男の言葉にパックは目を剥いた。 「パック・スコットさん。この人達と一緒にお逃げ下さい。あなたは命を狙われています」 「ね、狙われているだと?」

2014-12-18 23:10:41
みなみ @minarudhia

黒髪銀目の女・フィストの言葉にパックは疑わしい表情を浮かべた。 「私が命を狙われている、だと?」 「そうです。あなたが人を雇って殺した相手をまだ覚えていらっしゃるのならば、心当たりはありましょう?」 「……私を狙っている者…?」 「心当たりがお有りではないですか?」

2014-12-18 23:12:42
みなみ @minarudhia

そう問うた後、彼女は何かを小さく呟いた。 「…ないな。ともかく何者か知らんが、お前達こそ早く出て行くことだな。でなければ――」 「無駄です」 「何?」 「あなたの命を狙う者もじきに……ここへ来ます」

2014-12-18 23:14:54
みなみ @minarudhia

一歩フィストが近づき、パックが一歩下がる。 今度は両脇からロックとマッシュが近づく。 さらに一二歩下がった所でパックが叫んだ。 「そういう貴様は一体誰だ!こんな所まで押し入ってきて、ただで済むと思うのか」 「それをあなたが知る余地はありません」 「なんだと!?」

2014-12-18 23:17:24
みなみ @minarudhia

後ろに下がりながら遂にドアの前まで来たパックが振り返りざまドアノブに手をかける。 乱暴にノブを2,3回回した後に開かれたドア。 その先を出ようとしたパックの身体が大きく後ろに弾かれた。

2014-12-18 23:19:16
みなみ @minarudhia

「うぶあっ!」 「なんだ!?」 慌てて足元のパックを抑えるマッシュの後ろからティナとセリスの声があがった。 パックの方は後ろ向けに倒れた弾みで頭を打ったか、ぴくりとも動かない。 「な、何あれ…!?」 「え?」 「どうなってるんだ?」

2014-12-18 23:20:54
みなみ @minarudhia

開かれたドアの向こう側にはかすかにプラズマのようなものが走り、気づけばそれは部屋全体に走っていた。 「フィストさん…一体何をしたの?」 ティナが恐る恐るフィストに尋ねる。 腰からロープを出してパックの身体を縛りつつ、フィストは答えた。

2014-12-18 23:23:01
みなみ @minarudhia

「切り離しただけよ、今私達がいる次元からこの部屋だけを」 「どういうことかちゃんと話してくれ」

2014-12-18 23:24:22
みなみ @minarudhia

「普段私達がいる次元と霊やあやかしなどの人ならざる者達の領域である次元。この部屋を私達のいる次元から“切り離し”、人ならざる領域の次元に一時的に移動させたの。大声を出したりしなければこの術は破られないから大丈夫」 「は、はあ?」

2014-12-18 23:25:49
みなみ @minarudhia

ロックやセッツァーの怪訝そうな声色に対し、ストラゴスは頷いていた。 「…破れたらどうなるんだ?」 「私達のいる次元に戻るけど、今のタイミング次第ではジュリアスと鉢合わせすることになるわ。…よし、これでOK」

2014-12-18 23:28:04
みなみ @minarudhia

「俺が担ぐか?この後こいつ連れて外へ出なきゃならんだろう」 「ありがとう。…ここで、今のうちに作戦を話すわ」 マッシュに簀巻きに縛られたパックを支えてもらい、フィストは立ち上がる。

2014-12-18 23:29:42
みなみ @minarudhia

「まず、二手に分かれてほしいの。パックを守って逃げる側と、私と共に行動する側に。外にキランとチョコボがもう待っているからそれに乗ってほしい」 「キラン?まさか、あのライオンのようなやつか」

2014-12-18 23:32:07
みなみ @minarudhia

「そうよ。私はこのテラに乗って必要なものを取りに行く。ただ、私だけでは時間がかかりそうだから、手伝ってほしいの。なるべくなら二人くらいは」 「それなら、わしと…マゴでいいじゃろ。わしらにはもう魔導の力が残っておらん、足手まといになるのがオチじゃゾイ。しかしティナさんは…」

2014-12-18 23:35:53
みなみ @minarudhia

ストラゴスがティナの方を向く。 ティナはその意図を察し、首を横に振った。 「私なら大丈夫、ストラゴス。私は魔法を失ったけど剣ならある」

2014-12-18 23:38:45
みなみ @minarudhia

フィストはしばしドアを見つめ、時間をおいてぽそりと言った。 「今、ジュリアスが入ってきたわ。静かに」 「本当か?俺達には何も見えないぞ」 「見えるのは術者だけだから仕方ないわ、今パックを探して部屋の中をうろつきまわっている」

2014-12-18 23:43:07
みなみ @minarudhia

鎮魂のアリア・9へ続く

2014-12-18 23:44:12