影浦峡「責任の所在〜「科学的」発言の政治・社会的側面」(岩波「科学」2014年 2月) 本稿では、東京電力が 起こした 東電福島第一原発事故を めぐる 科学者 あるいは 自然科学・工学・医学系の 発言を いくつか 取り上げつつ、
2014-12-27 21:18:31特に 2013年末の 時点で 政治的・社会的に 重要度を 増している 3つの 点から 考えてみます。(最初は 中川恵一氏の 発言から)
2014-12-27 21:22:21[A]「100mSv を 超えると 直線的に がん死亡リスクは 上昇しますが、100mSv 以下で、がんが 増えるかどうかは 過去の データからは なんとも 言えません。それでも、安全のため、100mSv 以下でも、直線的に がんが 増えると 仮定しているのが 今の 考え方です」
2014-12-27 21:25:09「仮に、現在の 福島市のように、毎時 1μSv の 場所に ずっと いたとしても、身体に 影響が 出始める 100mSv に 達するには 11年以上の 月日が 必要です」
2014-12-27 21:28:50中川恵一「放射線の『正しい』怖がり方とニュースの読み方」(2011年 8月 22日) kknews.co.jp/kenko/2011/082…
2014-12-28 23:23:48この 発言は、科学的知見と 社会的前提の 双方に 問題があります。 科学的知見としての 問題については、 a) 影響が 観察されるか どうかと、観察されたことが どのくらい 確実なものであるかとの 混同、
2014-12-27 21:36:30b) 確実でないことと、存在しないこととの 混同、 という 二段階の 混乱が あります。 この 混乱により 科学の 無能が 科学の 勝利であるかのように 描き出されています。 (注) 関連する 議論として、津田俊秀「医学情報の科学的条件」(「科学」2013年 11月)
2014-12-27 21:41:00津田敏秀「医学情報の科学的条件〜 100mSv をめぐる言説の誤解を解く」(岩波「科学」2013年 11月) 「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」の 報告書 (2011年 12月 22日) では「子ども・妊婦の 被ばくによる 発がんリスクについても、
2014-12-27 21:48:34成人の 場合と 同様、100ミリシーベルト以下の 低線量被ばくでは、他の 要因による 発がんの 影響によって 隠れてしまうほど 小さく、発がんの 明らかな 増加を 証明することは 難しい」と 結論した。
2014-12-27 21:55:43この 100mSv 問題には、放射線・物理の 側と、医学の 側の、両方の「専門家」が 関与している。 そして 根拠となる 学術文献や データが 具体的に 挙げられていない。
2014-12-27 22:31:00次に 東京大学 医学部附属病院の 中川恵一准教授の『放射線医が語る被ばくと発がんの真実』(2012) の 中身を 紹介しながら、100mSv 問題や 統計的有意差 (p値) のみで 判断することの 問題点を 指摘したい。
2014-12-27 22:34:00たとえば、中川准教授は 「科学的には 100ミリシーベルトより 低い 被ばくで 発がんの 増加は 確認されていません。 つまり、100ミリシーベルト以上については、科学的データがある。 それ以下では、データが 足りないのです。
2014-12-27 22:36:04これは、たとえ リスクが あったとしても、データとして 検出できないくらい わずかなものだと いうことです」(29〜30ページや 81ページ)。 これは、おそらく 100mSv 以下では 統計的有意差が ないことを 指すと 思われる。
2014-12-27 22:38:53ただ リスクの 低いことや「データとして 検出できない」ことと、統計的有意差の 有無とは 異なることなので、これは 混同されて 誤った 言い方である。
2014-12-27 22:41:44ちなみに「データとして 検出できない」と 表現されているが、データは 現に あるのだから、影響とか 上昇が 検出できないと 表現すべきだろう。
2014-12-27 22:43:10したがって、中川准教授の 文章は「科学的に 確認」(もしくは「科学的証明」や「医学的証明」) あるいは 時に「データとして 検出」と 表現されているところを「統計的有意差がある」というふうに 読み替えれば 理解できる。
2014-12-27 22:45:47読み替えれば 済むものの、さらに「有意差がある」ことと「科学的である」こと、そして「リスクがある」こと「可能性がある」ことなどが 混在し、その 文章は、数値で 表現すると 10mSv と 100mSv の 間を 揺れ動いている。
2014-12-27 22:48:04(注)「これが、私が『100ミリシーベルト以下の 被ばくでは、発がんの 可能性は きわめて 低い』と 申し上げる 理由です」(33ページ) と 述べたかと 思うと「『100ミリシーベルト』と『10ミリシーベルト』という 2つの 基準が あるようで、
2014-12-27 22:51:34混乱する 方も いるかもしれません。100ミリシーベルト以下で がんが 増えたという データが ないなかで『10』という 数値については『がんは 増えない』と 明確にいえる 数値だと いうことです」
2014-12-27 22:55:01(150ページ : これは 誰が 読んでも 10ミリシーベルトが 閾値として 読み取れる) と 言い出し、その 2行後に「100ミリシーベルト以下では 発がんの リスクは きわめて 低いのです。それゆえに、私は 福島では がんは 増えないと 申し上げます」と また ひっくり返る。
2014-12-27 22:58:03そして 第7章「非常時における被ばく対策」では「国際放射線防護委員会 (ICRP) も 10ミリシーベルト以下では がんが 増えないと 明言しています。私は、この 10ミリシーベルト以下であれば、住んでも 大丈夫だと 考えています」(171ページ) と 述べる 一方、
2014-12-27 23:02:14第8章「『被ばくと発がん』の疑問・不安に答える」では「科学的には、がんの 確率が 上がるのは 100ミリシーベルト以上の 被ばくに なってからです」「広島・長崎の 調査や、原発従業者、医師や 放射線技師に 関する 被ばくデータからも、
2014-12-27 23:05:41