昨日発生していたサイトログインできない不具合は修正されております(詳細はこちら)

宵の血に依る契約城:一日目夜

──そして時は移り。
0
前へ 1 ・・ 10 11 次へ
匿名企画『宵の血に依る契約城』 @Conces_Castle

——黒い群青の空に月が上がる。 ——瞬いた二つの新たな月は、もう一度瞬いて、ぐるりと『城』を見渡して。 ——かちりと嘴の音が一つ。 ——それ以外に音は無い。

2014-12-28 20:03:35
コロル @Conces_color

「ご、誤解しないで欲しいんだけど!」 恥ずかしそうに頬を赤らめたまま、慌てて口を開く。 「僕が一方的に花に語りかけただけであって、別に僕が花と話せる訳じゃないんだ……!」 首を傾ぐ。どことなく申し訳なさそうな。 「……花とは、離せないけど。獣たちとだったら、話せる、よ?」

2014-12-29 09:01:47
コロル @Conces_color

何かの代わりというわけではないのだけど、ただただ、彼女にがっかりされたくないとその一心でそんなことを口にすれば。――静かに、言葉を続けて。 「月下美人はね、咲く回数がとても少ないんだって」 ちゃんと世話をすれば一年に幾度かは花を咲かすらしいけれど、と言い足せば、ふわりと笑い。

2014-12-29 09:04:55
コロル @Conces_color

「――フェヌス。僕は、契約をするなら、君とがいい。  ……ううん、君がいいって、そう考えている」 繰り返す。「君は、どうだろう」と問い掛ける口調は柔らかく、そこに強制の意図は見えない。晴れ空は優しい眼差しを、夕暮れに向けて。 ただ静かに、言葉を待った。

2014-12-29 09:06:23
フェヌス @conces_rs

言葉は聴こえていた——一言一句違う事無く聞き取れていたはずだった。なのに上手く聴こえなかった。花と獣、——月下美人の花が珍しいものだと聴いても、眼はそちらには動かせなかった。 「……——だめだ」 半歩、引く。晴れ空を見たまま。握った手もそのまま、——硬直しているとは、伝わるか。

2014-12-29 16:27:39
フェヌス @conces_rs

「駄目だ、……それは、公平じゃない」 半歩以上は動かない。夕暮れは、見開かれたまま。 ——呼吸の間が空く。伏せられた夕暮れは、そこでようやく晴れ空から逸らされた。 「——コロルは、『人間』に優しい。それは、わかる。広間のことを見てたから」 空いた片手を握り締める。

2014-12-29 16:35:32
フェヌス @conces_rs

俯いて、髪に飾った簪が揺れるのが分かった。——『家族』の証。 「でも……だから、駄目だ」 半歩引いた靴がざりと音を立てる。 「コロルが優しい分を、私は返せない」 ——帰って来い。言う怒鳴り声が反芻するのを、夕暮れはそれも真っ直ぐに聴いてしまう。 「——公平な契約に、私は」

2014-12-29 16:42:24
フェヌス @conces_rs

思考が錯綜している——何が言葉になっているのか、己ですら。 「きっと、——耐えられない」

2014-12-29 16:43:55
コロル @Conces_color

それは不思議そうに晴れ空を瞬かせた。首を傾けたまま、手を離すことなく、静かに問い掛ける。 「――それは、返さなくてはいけないこと、なの?」 そうであることが当然だった。故に、それの――仮に善意と称すもの――に対して、何か対価が得られるとは考えていない。

2014-12-29 19:50:57
コロル @Conces_color

「僕が仮に契約に対して何某かの対価を、人間(きみ)に求めるとしたら、」 強張る手をほぐすように。強張ったままの手を引き寄せる。 「――オレの手綱を握っていること、だ」 囁きは極低音。いとも容易く逃げられるであろう力加減。晴れ空は瞬き、燃えるような朝焼けを映す。

2014-12-29 19:53:34
コロル @Conces_color

――けれど、その朝焼けは一瞬。瞬きの内に消え、元の晴れ空が戻る。 「僕はね、別に優しくなんか、ないんだよ」 苦笑いを浮かべる。 「自分勝手なだけだ。僕は、僕だけを見ている人間が欲しい。リベルタースじゃない。僕(コロル)を見てくれる人間が欲しい」 自分勝手でしょ?

2014-12-29 19:55:52
コロル @Conces_color

繰り返して、浮かぶのはやはり苦笑。 「君の言う、公平……っていうのが、ごめん、僕は多分わかってない」 首を振る。それから、真っ直ぐに見つめて。 「――きっと、君を強引に攫ってしまえばいい、なんて。  そういう問題でも、ないのでしょう?」 口調は軽やか、しかし双眸は至って真剣に。

2014-12-29 19:57:21
コロル @Conces_color

耐えられない、との言を聞けば、握った手を離そうとするだろうか。 それは名残惜しそうに、晴れ空に僅かな雲間を見せるだろうか。 問い掛けは重ねられる。言葉は重ねられる。 ――吸血鬼はただ、相手の言葉を、静かに待つ。

2014-12-29 20:00:13
フェヌス @conces_rs

「私は——」 言いかけたそのまま——夕暮れの言葉は途切れる。吸血鬼(晴れ空)の手を払うこともしない。それができるだけの『もの』を、夕暮れは持たない。 ——緩く、首を振る。困惑する思考を振り払うように。 「義務とか、そういうのじゃ無いんだ」

2014-12-30 00:14:20
フェヌス @conces_rs

「コロルは私が何かを言う前に、求める前から、庇って助けてくれたのに——報いることが出来たとしても、私は言葉くらいしか持ってない。恩には同等をもってと教えられてきたのに」 夕暮れは伏せられている。——見上げることが出来ないのは、罪悪感が肩から静かに広がっているからか。

2014-12-30 00:20:26
フェヌス @conces_rs

引かれる手も、逆らいはしない。気遣われているのだとその手からすら伝わって、余計に苦しくなる。 「私は『人間(ひと)』も、——『人間(私)』もわからない。知らないから、コロルが望んでくれるそれに、応えられるかも、わからない」 ——戻って来い——そう怒鳴る声が聞こえる。

2014-12-30 00:25:22
フェヌス @conces_rs

「意地とか、信条とか、そういうのでもない。——わからないんだ。私は、公平な——どちらかが傷を負ったり、そういう不平が無いことが一番だと、思う。でも私は」 手を握る。吸血鬼(彼)の手は——自分勝手だとそう言った彼の手でも、温かいことは変わらない。優しいと感じることは変わらない。

2014-12-30 00:30:07
フェヌス @conces_rs

だから——離したくないと感じてしまうこれはきっと。 「……——私は、ずっと、『餌』になる為に、育てられてきたよ」 抑え込んで、殺してしまわなければ。 「育て親たちに、ずっと育てられて、今まで屋敷から出た事も、他の吸血鬼に狙われるようなことも無かった」 ——『戻って来い、絶対だ!』

2014-12-30 00:34:33
フェヌス @conces_rs

「——だから、わからないんだ」 ——失望されるだろうかと、浮かんだ疑念は不安と恐怖を生み出しても、言わない不義理は『不公平』だとどこかが言った。 「私(フェヌス)は、依存しないことがどんなことか、わからない」 ——体は逃げたくて堪らなくても、手だけは離したくなかった。

2014-12-30 00:38:15
フェヌス @conces_rs

「『吸血鬼(親)』に依存することしか知らないから——きっと、公平には、なれない。コロルの望んだことが出来るかもわからない。……でも、公平じゃなきゃ、この契約の意味もない」 招待状の、文言。正常へと導くための。 「でも——私は、何も出来ない私には、耐えられないから」

2014-12-30 00:42:19
フェヌス @conces_rs

——手だけは、離したくなかった。強張っていても。振り払われる恐怖よりも、離れることが怖かった。——だから、晴れ空(彼)にはきちんと伝えておきたかった。 ——夕暮れは闇へと誘う色だ。沈んで行く先は、夕暮れ自身にも分かりはしない。 ——苦笑が浮かぶ。 「……いっそ、攫ってくれたらな」

2014-12-30 00:46:17
フェヌス @conces_rs

その方が分かりやすくて——考える暇がなくて、良い。 ——零すように言って、息をゆっくりと吐き出した。手から力を抜く。握り合わせたそれを振り払う事はしない。——ただ彼が、手放したい思った時に、それを邪魔することだけは、避けようと。 ——夕暮れは始終俯いたままだった。

2014-12-30 00:48:55
コロル @Conces_color

――晴れ空は、夕暮れの手を強く握った。 「何も出来ない、なんてことは無いんだ」 晴れ空が瞬く。鮮烈な緋。強い朝焼け。 「少なくとも、オレはアンタの言葉に救われた。――アンタの言葉に、安心した」 引き寄せる。有無を言わさず、その腕の中に閉じ込めるように。 「なあ、フェヌス」

2014-12-30 00:58:28
コロル @Conces_color

. 「――なら、オレはアンタを攫っていくよ」 .

2014-12-30 01:00:02
コロル @Conces_color

「アンタの言葉には、力がある。  少なくとも、オレはそう感じた。だから、オレはアンタを誘った。アンタと契約したいと望んだ。  オレが行動した分を、アンタは言葉で返してくれた」

2014-12-30 01:04:10
前へ 1 ・・ 10 11 次へ